353 王城の一際でかい扉の先
「わあ、おっきい。おっき〜、おっきだ」
「はやく来るんだよ。変なところで立ち止まってたら田舎者だと思われるよ?」
「なにおぅ、都会っ子なめんな!」
蕎麦先生の引率の元、連れてこられたのは王国の王城。
王城ってのはアレだよね。王様とかがいるとこ。はぁ〜、でっけーーー。すげ。
歩いていくといつの間にか建物の中に入ってた。渡り廊下みたいな場所だ。外から光が差し込んでる。キレイだなぁ。おっと軍人さんだ、挨拶しとこ。変な目で見られた。一般人が入ってもいい場所じゃなさそうだもんな。そりゃそうか。あ、まだコッチ見てる。
「ってか、軍人さんも王様の城に住んでるんだ」
「王城と軍の施設が併設されているみたいな場所さ。それでもある程度、認められた奴じゃないと入れる場所が限られてるんだけどね」
「へあ〜」
「ちなみにさっきのは中佐かな」
「えらいひと?」
「あんたよりはえらいよ」
「ふあ〜」
中佐。ちゅうさ。中鎖脂肪酸……。そんな位があるのか。へぇ。知らねぇや。
(でも、そんな入場制限があるような場所に私達がいる。のに、何も言われない)
ここに入る前に憲兵さんと蕎麦先生が何やら色々話をしていた。すると、すんなりと通してくれた。
何を話してたかは分からない。手品だ、たぶん。
手品といえば、この国に入る時の憲兵さんも驚いてた。
私達を襲った軍人さん達はこの国に入る時に入る外壁を警備している人たちだったらしい。状況的に「倒しにいった人たちよりも先に、倒されるはずの人たちが帰ってきた」って感じかな。驚きもするか。
ちょっと部屋に移動されたけど、先生が何かを出すとすぐに開放してくれた。手品をしたに違いない。
「ついた」
「? おっきい扉だけど」
扉の両隣には警備をしている兵隊さん。
それらを無視して、先生は不躾にノックをした。
「ちょっと! ここにいる人が誰だか分かって」
「分かってるから、さっさと開けな。やりたいことが多い老人を待たすんじゃないよ」
カリカリしてる蕎麦先生だから、カリカリ蕎麦だ。水分少なめで外に放置した蕎麦みたいになった。
「カリカリでスパスパ切れる手品師ソバドア」
「あんたは独り言が大きいんだよ」
「ビックな女ですから」
「…………」
こんな場所に住む人ってどんな人なんだろう。扉大きいし、大事そうな感じで守られてる。
「許可が取れたので……」と兵さんが言ってきた。
許可がおりたと知ったら扉を開けて、中にズカズカと入っていく。その後ろをペコペコ頭下げながら入った。
「きれー……な場所だ」
コスプレ大好きな友達がスタジオがどうのこうのって言ってたけど、こういう貴族というか、気品あふれる所で撮りたいって言ってたなぁ。
天蓋ベッドっていうんだっけ、ああいうのって。
「久しぶりです、先生」
「挨拶なんか要らないよ。あんたらンとこの奴に教育の邪魔をされたんだ。躾はどうなってんだい、娘」
「お元気そうですね。よかったよかった」
「けっ」
なにやら話し始めていたので部屋の観察はそこまでにしておく。
で、先生は誰と会話をしてらっしゃるのでー……?
「? 先生、そちらの方は?」
「わたしの教え子。クソ生意気。たぶん、あんたのことなんかも知らない」
「そう! よろしくね、教え子さん」
さっきまで椅子に座って本を読んでいた人はかなりお年を召しているように見える。蕎麦先生とどっこいどっこいくらい。
異世界の人なんだろうけど、和服が似合いそうな優しそうなかおをしている。女将って表現が当てはまってるのかな。
蕎麦先生がバイクを乗り回してそうで、スカートとか短くしてるタイプの子がおばあちゃんになった感じで、この人はクラスで頭がいい人がそのままキレイに歳を取ったって感じに見える。
「よろしく、おねがいします」
「なんだい、かしこまって。いつもみたいな態度でいいんだよ」
「そうよぉ。若い子のパワーを貰ったらあと30年は生きれる気がするもの」
「そら生きすぎだわな」
昔からの知り合いなのだろうか。ヤンキーと優等生が楽しそうに話してるのが、なんだかほんわかする。
「あの、失礼じゃなければなんですけど……」
「なぁに?」
「おばさんは……何者なんです?」
「あら。ほんとうに……そうねぇ。なんていえばいいのかしら」
「ちょっとビビらせる感じで言ってみたらどうだ?」
そうねぇ、と蕎麦先生の意見を組み入れたおばあさんは
「わたしはね。この国で一番偉い人」
と豊齢線を寄せて笑った。




