344 下位ダンジョンの確認わんつー
ぱから、ぱから、と。
お馬さんが足音を立てて「まだ動けるよ!」と言っている。
まぁ、移動距離にしては十数キロ。馬からしても走り足りないというものだろう。
「まぁ、モルの大森林ならティナ先生とも訓練してたし」
デュアラル王国の東の門から2時間ほどで到着したのはモルの大森林の中継地点。
えーと、人が開拓した場所っていえばわかりやすいか。森の中でも比較的な安息地で、小さな村みたいになっている。
ぼくとアンが冬の間、訓練していた『フォリスの大森林』でいうところの西の連絡網。人の手が入っているからこそ、モンスターがあまり寄り付かないようになっている。これを知っているか知らないかでは生存率が違う。駆け出しの冒険者は積極的に活用をしてもらいたい。
まぁ、ぼくがウッグ達と訓練総仕上げで戦った【イニシアの森】にはそういうのは作られてないらしいけど。
作れよ。一番近い森じゃないか。ったく……。
「ということで、事前説明が終了! 聞いてたかな?」
「はぁーい」
「じゃあ、なんて言ったか言ってみて!」
今は、この中継地点でペルシェトさんでダンジョンに入る前の最終確認中。
「下位ダンジョンは10階層で、ダンジョン上の広場でこの通信魔導具に連絡を入れてからダンジョンに入る」
「続きは? じゃあ、アンちゃん」
「5階層ごとにある危険指定階層のモンスターを倒すと通信魔導具で連絡を入れる」
「……これなんですけど、5階層を2回クリアして連絡することも可能ですよね」
ずるというか、抜け穴というか。
結局、ダンジョンに同行する訳ではないし、ダンジョン上広場にいる訳でもない。
せめてダンジョン上広場にいたら、あの【ジヒル草】みたいな「ダンジョン攻略後にしか現れない現象」っていうのが観測できる。……あ、ペルシェトさんに聞いたんだよこの右手の魔障を治す【ジヒル草】の咲く条件。ダンジョンの攻略後に咲くんだってね。ふざけんな。なんだソレ。
まぁ、それは置いておこう。ぼくが言いたいのは「やりようによっては偽装し放題じゃないですか?」という話。
その疑問に対して、ペルシェトさんはむふふと笑った。
「してみたらいいよ。すぐにバレるけどね」
「バレるったって……」
「いいから! 5階層をクリアしたら連絡頂戴ね! あ、あと潜る前にも! じゃあ、君等二人が越えるべき目標タイムは?」
「4日と13時間」
「そう。それが、あの多種族パーティーのクリア時間だ」
つまりは、二人でその時間を超えたら事実上の「最速記録」ということになる。
「ぼくとアンが中層をクリアしたのが5日……くらいだっけ」
「だったと思います」
「と思うと、あのスケアとかっていう狼人はなんだかんだ強いのか」
最速記録保持者。ぼくがこの世界に転生してきた時に新聞で報道されていたのが懐かしい。
そこに並んで書いてあったのは、アンの記録だったのも感慨深い。見出しの大きさは彼らの方が大きかったもんなぁ。まぁ、歴代最速ってのはかっこいい響きだ。
「なぁにぃ〜? 二人でこそこそ話しちゃってさ」
「いや、なんでもっ!」
ムロさん達の依頼を横流ししてもらって、ダンジョンに潜ったことは内緒にしている。
もちろん、この前のティナ先生の時に話した時も、そこらへんは色々とぼかしていた。結果だけね、過程は話さなくてもいいだろうし、うん。へへ。
「ふぅ〜ん? 食事、水は? ダンジョンのモンスターは、お肉になったり、水になったりはしないよ?」
「持ってきてます! アンとアルマが作ってくれました」
あと、簡単な食材をここまでの道中で購入しておいた。エヴァーチェのみなさんのおかげで、料理器具をポーチに入れておく重要性に気付いたので、簡単な調理はできるはず。
そのおかげで、ポーチがパンパンだ。
そろそろ、新しいポーチを買わないとかも。
その後に、色々な連絡を受けて、ぼくらはダンジョン上広場に向かうことになった。
中継地点からは歩いて十数分の距離。全然近くてびっくり。
もう、ダンジョン上広場に感動もしなくなった。
というか、下位ダンジョンの広場なんてなぁ……前までいたのは上位ダンジョンの広場だったし。
(そういえば、みんな何してるかなぁ)
耳に手を当てて、魔素を注いだ。時々、連絡が入ってきてたけど、中々返せれなかったんだよなぁ。
ダンジョンに潜る前だというのに、目の前に魔法陣を展開して、上を向いた。
「あ、もしもし〜? みんな〜?」
『『『『『うわっ!』』』』』
「ぐふっ……」
一斉に応答がかかるの忘れてた……。
耳がキィーンとなった。えーと、あー……魔法陣から離れても戻るわけないか。
ちょっと、ダンジョン前に皆の声を聞いて元気をもらおうと思っただけなのに……。




