314 今後に備えての買い物
みなさん、こんにちわ。
クラディス・ヘイ・アルジェントです。
冬山での訓練を終えたので訓練らしい訓練もなくなり、今はダンジョンに向けての準備期間に突入しました。
ナグモ先生やティナ先生が熱心に指導をしようとしていたところ、お上さんからお達しがあったようでひどいことにはなりませんでした。
万全な状態で挑めれるように、という配慮をしてくださいまして、ありがとうございます。
で、今、何をしているのかというと……女性用の服を探しているところです。
「こちらもお似合いだと思いますよ!」
「あぁ、そう……ですね」
「? なにかお困りですか?」
「いえ……」
こういうのは相談をしても良いものなのか? いや、してみるか。
「あの……どんな服をきたら喜ばれると思いますか?」
「まっ! 勝負服ってことねっ……! ちょっと待ってて! 今、良いのをー……」
なんて言いながら奥に消えていった。
勝負服だと勘違いされたみたいだけど……まぁ、勝負服みたいなもんか。
今、ぼくが女性モノの服を選んでいる理由は少し前に遡る。
あれは訓練を終えてヘトヘトで帰宅をしているときの話だ。
ほのかに光る通信魔導具が目に入ったので、応答をしてみると……なんとまぁ、アサルトリアの皆さんからだった。
『クラディス! 忘れてねぇだろうな!』
なんて言い出したから何事かと思って聞き返した。
「忘れてるかも知れません!」なんて。今思うと、そんな聞き返し方があるかって話だけど。
そしたらなんて言われたかって。
『下位ダンジョンの件、3日過ぎたから女装すんだぞ!! 分かってんのか!!』
わざわざそれを言いに通信してきたと。
いやいや、ムロさん。依頼で疲れた八つ当たりでしょこれ。
といっても僕自身、すっかり忘れていたのはそうだ。あれ以降いろいろあったからなぁ……アサルトリアの人達はすぐに上位ダンジョンに向かったし、ぼくはぼくで冬山に飛ばされたり、王国のなんちゃら部隊に入れられたり。
そんなこんなで、買い物をしているわけだ。
ぼくが童顔で助かった。もっと雄々しい見た目だったらと思うと……どんな見た目になっていたか、絵面が恐ろしい。
「お買い上げありがとうございました〜!!」
「あはは……ありがとうございました」
色々と買った。絶対にこんなに要らなかったのになんかいっぱい買わされた。服屋の店員さんって恐ろしい。
いや、でも色々と着せられるよりもこっちで準備をしていった方が傷は浅くて済むだろう。うん、必要な出費だ。……本当か?
(次は……そうだな、アレを買いに行かないと)
次に向かった先は、昔にケトスとイブと寄った出店。買うものは決めている。
「仮面仮面……と」
姿を隠すようの仮面探し。
冬山の訓練で頬に剣がぶっ刺さったおかげで、仮面の口元が壊れたのだ。
エヴァーチェのみなさま〜、後で代金を請求しておきますからねぇ? 本当に請求してやろう。
「……前と同じのがないなぁ」
部族みたいな仮面から、真っ白な仮面。こういうのってどこに需要があるんだ? ぼくみたいなやつがいるんでしょうか。
……鑑定、してみちゃうか? なにか特別なアレとかあるかもしれないし。
【仮面:ふつうの仮面】
「でしょうね。そらそうか……悩んでるのも変だな。すみませーん、コレ1つください〜」
「あいよ〜」
前まで付けていた仮面はケトスの趣味だったから──元々はケトスが付ける予定だったらしいし──あれだったけど、こういうのって自分が選ぶと、クラディスくんってそういうのがいいのねって言われそうで恐ろしい。
だから無難なやつでいいんだよ、こういうのは。
前回のが怪しさ満点の仮面だったから、今回はちょびっとばかし清らかというか、神秘的なものをチョイスしたつもり。うん、いいんじゃないか?
「お買い上げありがと〜」
「こちらこそ、お世話になってます」
「? そうかい?」
えぇ、お世話になっておりますとも。
転生者として姿を隠すために必要なヤツなんですから。予備にもう一つくらい買っておきたいくらいだ。
「……まぁ、いいか。今日は早く帰らないとだ。お昼頃にお客さんが来るんだから」
お客さんというには少し語弊があるが、いつもお世話になっているからこそ丁重なおもてなしを。
今日は、経過報告を聞く日。
ソバドア先生と三者面談があるのだ。




