260 紫蘭之団の結成
デュアラル王国の東西南北の正門、準正門、それらの市街地は壊滅状態である。
そこで、デュアラル王国で防衛機能の見直しがされるのだと言う。
その一環で、王国は今回の騒動の一部を片付けた王国兵以外の人物、組織に王国から報奨と共に今後の活躍を応援するという名目で、王国軍と連携して新たに部門を用意したところへ加入を勧められた。
【義勇兵】という立ち位置ではあるが、王国からの様々な特典を得られるということでそれらを【紫蘭之団】と名付けて、紫蘭が刻まれた首飾りを与えられることに。
この取組はかねてから考えられていたモノであり、協会の一部有力な冒険者と国が個人提携することはあったが、それは本当の有事でなければ発動できない契約の元で結ばれる。
しかし今回のような強襲や比較的小規模な襲撃時は、王国に在籍している冒険者や傭兵の力を借りるのはどうか? という提案がなされていた。
そして、それが今回決まったということだ。
――これが、今、ぼく……あ、わたしが聞いた話の全て。
「今後、王国が危機にたった時、【紫蘭之団】に助力を求めるかもしれない。今後とも精進し、祖国のために力を振るってほしい」
わたし、アイリスはすごく困っておりました。
あれ……えっ、あれ……? なんで……こうなった?
◇◇◇
話は少し前に遡る。
その日、僕とアンとアルマさんは街をウロウロと見て周りながらもゆっくりとくつろいでいた。
倒壊した建物の修復をする矮人族と人族さんに差し入れを持っていき、あと何日かかるのかというのを聞くと「特に西門は他の正門と比べて被害が酷いから復旧には時間がかかる」と言っていた。
そんなこんなしていたら日が暮れて来たから宿舎に戻ることにしたら、見覚えのある後ろ姿が宿舎の前にいた。
「お。いたいた。外にいたのか」
「リリーさん……? どうしたんですか?」
「ん、コレ」
「? なんですか、コレ」
「明日、城に来いってさ。向こうの姿で」
貰った手紙を開いてみると、中から王城への招待状が入っていた。
「えっ、これって……」
「この前の魔族討伐のことを褒めてくれるんだってさ。んで、今後使える特別な恩賞をプレゼント〜って感じ」
「うげぇ……」
「私も貰った。一応行くつもりだから、少年が行くならウチの血盟に寄ってってくれ」
「分かりました……けど」
ちらとリリーさんを見てみる。
「あ、ケトスから色々と話は受けてるから心配すんな。目立ちたくないんだろ? アイツもそうだったよ。まぁ、少年の場合はギルドで生活してんだから、迷惑があっちにかかるもんな」
どうやら、上手くケトスが説明をしてくれていたらしい。
「ありがとうございます。……行く時になったら寄らせてもらいます」
それだけ伝えるとリリーさんは帰っていった。
もちろんいい話だし、行かない理由はないんだけど……あの姿は目立つ存在としてでっち上げる架空の人物だから、名前も属する場所も何もかも変えないといけなかった。
それからその架空の人物の設定を考えていき……エリル、アン、姉さんの意見を取り入れて出来たのがこれだ。
名前――アイリス。
性別――女性。
所属団体――傭兵。
名前はアンやアルマ、エリル、アルジェントと僕らは日本語読みの母音のあ行で始まる者しかいないことを指摘されて、その上で女性っぽい名前を出して言ってもらって決めた。
そして、髪色を見にくくするために女性ものの白色のパーカーをチョイスをして、下には黒ズボンを合わせた。
ダボダボなパーカーの方が似合うと言われてそちらを買って、当日リリーさんの所に行くと鼻で笑われたのが思い出される。
そうして、城の中の広間に案内されて色々状況説明をされたという感じだ。
正直言って……やらかしてしまった感が強い。
佐官クラスの人が揃って監視をするように目を光らせている中、僕以外の人達は正装に近いような服装をしているというのにその中でパーカーと黒ズボンっていう……。
目立つ分にはいいけど、なんだか結婚式場の服装自由に騙された気分だ。
ケトスがこの場にいたら一緒に変な恰好をして、白い目で見られてただろうに……! 一人で協会に行きやがって!!
「次にアイリス君」
「……はい」
僕の名前を呼んだのは、将官の中将って所にいる人らしい。さっき自己紹介をしてくれていた。
大きな体、男らしい肉体、服の上からでも筋肉がムキムキなのがよくわかる。金髪を綺麗に揃え、髭も丁寧に整えられている。
見た目は……ガハハハと笑いそうな感じだな、気さくなオジサンな印象を受ける。
浅い階段を18程上がると、そのオジサンが例の首飾りを持って待っているから軽く会釈をした。
「傭兵……一人で魔族の撃退か。素晴らしい働きであった。それで、その仮面は外さないのか?」
来た、絶対来ると思っていた質問。
「以前、魔族と戦った時に怪我を負ってしまい……それを人に見て欲しくないのです」
「おぉ……そうか、それは……いや、誇りある戦士の傷であるなら隠さずとも良いぞ!」
「ありがたいお言葉です。しかし、これは決めたことですので」
「……ふむ、それならこれ以上は言うまい。今回の貴君の働きは――」
よし、乗りきった。
──ふふ。
「?」
心の中で小さくガッツポーズをしていると、その中将の奥から小さな笑い声が聞こえたような気がした。そちらへと目を向けると1つの席があって、若い女性……女児? が一連の流れを見守るように腰をかけていた。
ミルクティ色の髪の毛で頭の上にお団子が作られて、眠たそうな目をしている。あの子が笑ったのか……?
「――よって、この首飾りを授与する」
「ありがとうございます」
「これからも祖国の為に精進をしていってくれたまえ」
首飾りをかけてもらい、賞状を受け取った時のような動作で自分の元の位置にまで戻ると残りの人も同じように授与されていき、その会はお開きとなった。




