195 3ヶ月ぶりの
「おそろいだね」
「はいっ!」
ぼくとアンの胸元に輝くのは銀色のプレート。アンも無事、昇格ができたようだ。
下位二階の冒険者。かなり早めのペースでの昇格ではあるけど、僕たちの実績はすでに金等級レベルだとかなんとかって説明を受けた。
早く上げ過ぎちゃうと上がうるさいんだと。大変だ。
「お祝いといっても……なにがいいかな」
「あるじの作るご飯はどれも美味しいですよ?」
「ならなんでもいっか」
商店街を回って食材を買っていき、収納袋に収めていく。
毎度おなじみの場所だけど、だれも僕とアンのことに気が付いてない。そう、今日も今日とて変装をしているのだ。
アンに関しては首輪が無くなったから「奴隷だ!」って言う者はもういるまい。髪型も違うし。
「やっぱり、外を歩くだけだけど……ちょっと気をすり減らすね」
「面倒くさいのなら、わたしが敵を全滅をさせてきてもいいのですよ?」
「本当にしてきそうだから怖いよお」
冗談を笑いながら言い合い、ようやく家が見えてきそうな所まで帰ってこれた。
今日も色々とあって、建物の隙間からは橙色の日の光がチラつくような時間。
色々とお金を使ったから、また、クエストいかないとだな。
はぁ~……でも、家まで帰ってこれたらとりあえずは安心ができるから――
「あるじ」
「ヴッ」
強引に体を引っ張られ、建物の影に移動させられた。
「な、なに……?」
「宿舎前に人影が」
何事かと思ったら家の前に人の影があったらしい。
そっと物陰から顔を覗かせて視ようとするけど、アンが僕の前に立って胸元を掌で押している状況。
感知を頑張ってくれてるアンの邪魔はしまいと、無駄に背筋だけを張って『魔素感知』に集中をする。
「……向こうはこっちに気づいてない?」
魔素反応は特に問題なし。
敵だろうか……?
「恐らく、気配も門前の三人以外は大きなものはありません」
「もし戦闘になったら倒せそう?」
「……余裕で、と言えたらよいのですが……厳しいかと」
「なら、戦闘は避けた方がいいね」
「……そ、うですね。もう少し近づいてみてもよろしいですか? ここではそこまでハッキリと分からないので」
その言葉に頷き、建物や物陰を使って距離を縮めていく。
僕でも気配が感知できる距離に近づくと2人で物陰からひょこっと顔を覗かせた。
米粒大からは変わり、服装とかが見えるようにはなってきた――って。
「あ」
「……どうしました?」
あれ、あの髪色、あの服装、あの身長。
「ははは、なーんだ。アン、大丈夫、行こう」
「大丈夫って……お知り合いですか?」
「そうだね、僕の大事な知り合いだ」
物陰から飛び出して、赤茶髪の男性と黒髪の長髪の男性と赤髪の女性の元に歩いていく。
歩き、歩き、小走りに、そして走りに変わった。
三か月、経ちましたもんね……!
赤茶髪の男性に飛びつこうとしたら、足音で気づかれたようで襟元をグイッと掴まれて持ち上げられる。
「よぉ、お出かけしてたのか? 猫耳クラディス」
「えへへ、お久しぶりです。みなさん」
「見ない間に種族が変わったか?」
「えっ、あ、ただの帽子か……びっくりしたわぁ」
「色々訳アリで、はは」
宿舎の前にいたのは【フーシェン】の冒険者でも二大貴族の手先でもない。
僕の恩人達だった。
「その人達は……」
少し遅れてアンが駆け寄ってきた。
つけていた装備も収納し、私服のまま。
「紹介するよ。昔、僕を助けてくれたムロさんとレヴィさんとエルシアさん」
「……どうも」
ぺこりと頭を下げたアン。だが、それを不思議そうに見ている三人。
あ、誰か分からない……のか?
「みなさん。この子は僕のパーティーメンバーのアンです」
「あぁ……その肌、そのこえぇ目つき。お前『最強の少女』か。前と全然ちげぇから分かんなかった」
「あなたは……あぁ、私に負けた人」
「うるせえっ! 本気じゃなかったんですぅ〜!」
ムロさんが売られた喧嘩を買うように、持ち上げている僕をゆらゆらと揺らす。
「ということは、この子はあの時の……」
「ムロをボコボコにした子だ! その子がクラちゃんと一緒にいる……って、どういう関係なの?」
エルシアさんが僕とアンを交互に見てる。
三人は僕が闘技場でアンを助けたって言うのを知らないのか……? どうやって説明をしようか。
「――ん? なんだ」
そう思っていると、アンがムロさんに近寄って僕の足をクイクイっと引っ張り、地面に下させた。
僕の手を握って、三人から距離を取るように引っ張られる。
「わたしの、あるじだ」
「「えっ」」
十文字にも満たない説明。
でも、何がどうなってこうなったかを理解させる言葉でもある。
「クラディスが主人……?」
「クラちゃんが……?」
ムロさんは不思議とニヤニヤと笑っているが、レヴィさんとエルシアさんはアンの言葉に戸惑いを隠せない様子。
できれば、もうすこし、ふんわりと伝えてほしかった気もするけど。
「私の方がクラちゃんと仲良くなるの早かったんだからね!」
「そうか」
「最強の少女と話す機会があるとは、ふむ、実物はかなり小さいのだな」
「そうか?」
「可愛らしい髪型じゃねぇか。可愛らしい帽子の主人とお似合いだぞ」
「黙れ」
良い感じに仲良くなれそうだから、まぁいいか。




