↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
さすらいの旅人よ~優しすぎる旅人と願いを叶える黒龍~  作者: 雨花 まる
採掘の町編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/31

25.気のいい炭鉱夫達

 あからさまな男の敵意に俺は、いつでもリボルバーが抜けるよう動きを追う。男が小馬鹿にしたような笑みを浮かべた。

 瞬間、男の手が腰の銃へと伸びる。俺は迷いなく、コートの中のショルダーホルスターからリボルバーを抜いた。

 構えながら撃鉄を起こす。リボルバーの照準をピタリと、男の心臓へと向けた。

 男は銃を抜いたものの中途半端な体勢で止まる。俺の方がホルスタードロウが速かったようだ。場に再び静寂が落ちた。


(俺に撃つ気はない、が……。どうするか)


 男が退かなければ、撃つしかない。狙うなら肩か、それとも銃を持つ手か。

 店内で騒ぎを起こしたくはなかったのだが、仕方ない。真っ直ぐと見据えた男が、ゴクリと喉を鳴らしたのが聞こえた。


「ふっ。や、やるじゃねぇか。きょ、今日のところはこれくらいにしと、しといてやるよ!!」


 男は所々声を裏返しながら銃をホルスターに仕舞う。両手をヒラヒラとさせながら、俺の横を足早に通り過ぎた。

 俺はリボルバーを下ろし、男の背を追って振り向く。ガンッ! とスイングドアに何処かをぶつけ「いってぇ!!」と、喚きながら男は去っていった。


「えぇ……? 何なんだ??」


 取り残された俺は、疑問符を飛ばすしかなく。アルラも「分からん」と、呆れたような溜息を吐いていた。

 不意に誰かが「ぶはっ!!」と吹き出す。それを皮切りに、店内にいた人々に笑いが広がっていった。


「だっはっはっはっ!!」

「気にしなくていいぜ、兄ちゃん!」

「駄目だねぇ、あいつは」


 やれやれと言いたげに、男達は肩を竦める。俺とアルラは顔を見合わせ、小首を傾げた。


「いやぁ、兄ちゃん強いねぇ!!」

「いいもん見たぜ! よし、こっちこい!」


 先ほど俺が冒険者ではないことに落胆していた男が、席を立ち俺達に近寄ってくる。俺とそう歳の変わらなさそうだった。


「俺はチャールズってんだ。この炭鉱を任されてる! よろしくな」


 握手を求められ、俺はそれを受ける。


「俺はヴェルユスです。この子が」

「アルラと言う!!」

「短い滞在になるとは思いますが、よろしくお願いします」

「ゆっくりしてけ! 今日は俺の奢りだ!」


 肩を組まれて、俺はオロッとしてしまう。奢られる心当たりが全くなかった。


「……え? いや――」

「デザート付きか!?」


 アルラが嬉しそうにとび跳ねる。男、チャールズは優しげに目尻を下げた。


「おー! いいぞいいぞ! おい!!」

「はいはーい。アルラちゃんね。こっちおいでー」


 端の席にいた女性達の中の一人が立ち上がる。アルラの手を握ると、その席へと連れて行こうとした。アルラは俺を振り返り、親指を立てる。


(不安しかない……)


 俺は一応「デザートの前にご飯だからな!!」と、釘を刺しておく。アルラではなくその若い女性が「はーい」と返してきた。


「パパは厳しいのねぇ」

「そうでもないぞ!」

「あら、仲良しさん」


 父親ではないのだが、ここで否定するのも違うだろう。俺は何とも言えない心地になって苦笑した。


「あんたは、こっちな!」

「飲めるよな?」

「マスター!! ビール!!」


 俺の返事も聞かずに、炭鉱夫の一人がビールを頼む。普段は飲まないが、断るわけにもいかずに好意を受け取っておくことにした。


「ありがとうございます」


 椅子に座る前に俺は、リボルバーをホルスターに仕舞おうとする。しかし「待て待て!」とチャールズに制止され、俺は疑問符を浮かべながらも手を止めた。


「そのリボルバー、見ていいか?」

「え? あぁ、いいですが」

「マジか!?」


 チャールズは子どものように瞳を輝かせ、俺がテーブルに置いたリボルバーを眺めだす。

 その横顔が、次兄と重なって見えた。

 旅に出て直ぐ、このリボルバーを見つけた時の俺も同じような顔をしていたのだろうか。


「いいねぇ! やっぱリボルバーだよな!」

「あいつ、ガンマン気取ってる癖にオートマだもんなぁ」

「何でだよ! マジで!!」


 国境兵もだったが、この国では銃といえばリボルバーらしい。

 俺は炭鉱夫達の言葉に、先ほどの光景を思い返す。確かに男が持っていたのは、自動式拳銃だった。


「ええと、あの方はいったい?」

「あぁ、あいつなぁ。ギルドの依頼を見てきてくれたんだが……」

「もう一ヶ月だぜ? 全っっ然! 倒してくんねぇの」

「一匹狼だのなんだので、一人討伐する気らしいがね」

「無理だろ」


 チャールズの言葉に、全員が頷く。俺は何と言えば角が立たないかと考えたが、どれも無理そうだったので苦笑いを浮かべて流した。

 ビールが入った樽ジョッキが運ばれてきて、俺は有り難く受け取る。「ようこそ! 採掘の町、ディバイン鉱山へ!!」と、チャールズがジョッキを掲げた。

 炭鉱夫達の「カンパーイ!!」の声に、俺もジョッキを合わせる。


(賑やかで明るい町だな)


 俺はビールを流し込みながら頬を緩めた。

 ちらっとアルラの方を見遣る。楽しげにハンバーグを頬張っていた。女性達が世話を焼いてくれているのを見て、胸を撫で下ろす。


「チャールズさん、依頼ってのはどんな内容なんですか?」

「ん? あぁ、ディバイン鉱山には(ぬし)がいるのさ」

「主、ですか?」

「そうだ。空色のドラゴンでなぁ。いつの間に住み付いちまったのか……」


 チャールズが困ったように溜息を吐き出す。炭鉱夫達も首を左右に振る者、肩を竦める者。様々だったが、困っているのは同じようだ。


「つっても、町に降りてくることはねぇから心配するな!」

「たまに、炭鉱の近くに来やがるのさ」

「追い払ってくれるだけでもいいんだがねぇ。魔法が使えない状態では無理だそうだ」


 チャールズがビールを勢いよく煽る。確かにドラゴン討伐では、魔法使いの力が必要だ。

 身体強化や武器に魔法を纏わせたり。それだけではなく、魔法防壁はかなり助かる。


(俺もドラゴンに会敵したら、よく逃げてたからなぁ)


 アルラと出会う前は、かなり苦戦したものだ。よく生き残っているなと自分でも思う。


(助けになれるならなりたい、が……。アルラに危険が及ぶのは俺も困る)


 あの腕輪がある限り、アルラは魔法が使えないのだから。


「このまま上手く付き合っていくしかねぇのか」

「まぁ、今のところ。被害は出てませんからねぇ」

「若けぇのは、震え上がってるが……」

「だなぁ……。まぁ、いい! 今日は楽しく飲もうぜー!!」


 チャールズが出した陽気な声に、空気は暗くならずに済む。チャールズ達のリボルバー談義を聞きながら、俺も久方ぶりに美味しい酒を飲んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。