34. ガスパール — 港に待つ死
ロッコを尾行して、最初の五分で気づかれずに済んだ者は、これまで一人もいなかった。気配を消して彼を追うのは、ほとんど不可能に近い。
今日はロッコが武器の搬入のために港へ向かう日だった。今回の取引自体はバルディーニ一家のものではないが、使われる港は彼らの縄張りだ。
「ガスパール、車を用意して」ロザリアは鏡の前で、黒いスカーフを頭に結びながら言った。
ロッコは時折、報告のために屋敷へ戻ってくる。今日もその日だった。だが報告している間、シニョーラが黒の装いに身を包んでいることには気づいていなかった。
今日もまた、その黒に、見えない赤が染み込むことになる。
ロッコが出て行ってしばらくしてから、俺たちも車で後を追った。尾行する必要はない。行き先はわかっている。
ロザリアと車に乗ると、いつも決まって静けさがあった。彼女は多くを語らない。だがそれは、気取った無口さではない。一日中、質問を投げかけてくる子どもたち、話しかけてくる小さなバルディーニたち、そしてまだ言葉を持たないのに母の声を求める赤ん坊たち――そのすべてに応えるため、彼女は外に出ると口を閉ざし、力を温存しているのだ。
だが、今日の静けさは違った。バックミラーに映る顔には、慈悲も、怒りも、悲しみもない。何の感情も浮かんでいなかった。だがその目だけは落ち着かず、迷いを帯びていた。瞳は一瞬も定まらず、窓の外をなぞるように、絶えず視線を移している。
その揺らぎの原因は、武器の搬入でも、相手の連中でもない。あいつらの処分は、すでに決まっている。迷いの理由は――ロッコだった。
「誰かに尾けられてる」俺はサイドミラーに目をやり、不安を抑えきれない声で言った。
「尾けてるんじゃないわ。あれは、私たちの側よ」ロザリアは前を見たまま、淡々と答えた。
やがて後方の車の一台が前に出た。助手席にマッテオの姿が見える。ロザリアがいつ、どうやって彼と話をつけたのか、俺にはわからない。それが妙に引っかかっていた。
ロザリアとルカ・バルディーニの密かな電話のやり取りは、ほとんど把握しているし、盗み聞きできる機会も多かった。だが、ロザリアとマッテオの間で何が交わされているのかは、まだ一度も掴めていない。
港へ続く道が見えた途端、マッテオの部下たちは左右に散って姿を消した。いつものように、潜み、必要な時だけ現れるつもりなのだろう。
俺は広い港の通りへ車を乗り入れた。まだそれほど遅い時間ではないのに、空はすでに暗く、あたりは不気味なほど静まり返っている。ロッコが事前に手を回していたに違いない。
色とりどりのコンテナの間を進む。
ヘッドライトに照らされた先で、こちらに銃口を向ける影が見えた。ロザリアの指示を待たず、俺はブレーキを踏んだ。
五人の武装した男たちが、車から降りてくるのを待ち構えている。こいつらが厄介なのは、ただの武器商人だからじゃない。信じているものが金だけだという点だ。金しか基準を持たない人間ほど、危険なものはない。
戦場となっている国々に武器を流す連中だが、それだけでは終わらない。取引にすら筋を通さない。戦場であろうと、より高く払う側に武器を売る――それが連中のやり方だ。
そんな連中を前にしても、ロッコは微塵も姿勢を崩さなかった。恐れを知らない、あの揺るがない自信こそが、ロッコという男の本質だ。
ロザリアにも、ひとつだけ気に食わないところがある。あの、静けさだ。
車を降りるときも、まばたきひとつせず、一定の歩幅で男たちへと向かっていった。
だがその落ち着きに、理由がないわけではない。相手は危険で、銃口はすでにこちらを向いている。いつ引き金を引いてもおかしくない。それでも撃たない――目の前にいるのが女だからだ。
あいつらにとって、女は脅威じゃない。




