三夜城の家 夢の中の人 5話
▶巣作り
音のない老人は、どこからきた?
突然現れた老人は部屋の隅に座った。
広い部屋なので、遠い。
「三夜様、御子をどうか、お待ち申し上げております。」
遠いはずなのに、しっかりと聞こえた。
寝て過ごす事が多くなった、今までもそうだったが。
音のない老人は誰なのか?
自分が誰で、何なのだろう。
赤子は、妹は、どこだろう。あの化け物達は、どうしているのだろう。
気が付くと又、御簾の中に居た。
いつも来ていた面を掛けた者達は、部屋へ入って来なくなった。
面の者に代わり、
毎日若い娘が数人来るようになった。
毎日来て、御簾の前の大きな広間に居た。
面の者達の面会は、なくなった。
来なくなった。
夢の中の自分とも、前程会っていないような気がする。
たまに現れるのは、後ろ姿が多くなった。
後ろ姿の夢の中の自分は、沢山話す。自分も沢山話す。
何を話しているのかはわからない。
音のしない老人は部屋の隅にいつも居る。
御簾は、どんどんと大きく、広くなり、
とうとう、部屋1つ。
奥の間ができていた。
起きると、いつも何かが変わっている。
部屋も屋敷も庭も、どんどん変わって行く。
いったい、どれだけの者が住んでいるのだろう。
屋敷の中からなのか、外からなのか、遠くに、人々の暮らす音がする。
奥の間は、静かだ。時が止まって感じる。
また、うつらうつら、眠る。
人々の音を感じると少し心が温かくなる。
御簾の前の広間では、こそり。こそり。
と、
娘達の声が聞こえる。




