三夜城の家 夢の中の人 3話
▶守りたい声
夢の中で、誰かと話している。
誰なのかわからない。
何を話しているのかもわからない。
夢の中の誰かと話している。
夢にまどろむ。とろとろ。とろ。
口から出る言葉が神託になる。
とろとろ。とろ。とろ。
気色の悪い感覚。
神託を聞いた事は一度もない。
何度も、何度も、朝でも、昼でも、夜でも、夜中でも、雨でも、雪が降っていても、
何度も、何度も、夢にまどろむ。とろとろ。
いつも、夢で誰かと話している。それだけ。
このごろ、
夢の中で話す誰かの顔が、少し見えてくるようになっていた。
神託を装うのは、少しこわかった。
夢の中の誰かに後ろめたい。
あの小さな声が消えてしまうのは嫌だ。
決めていた。妹の為だ。
詩なら自分の思いでも、神託でもないはずだ。ただ、詩を詠むだけだ。
目を閉じて、しっかりと目を閉じて詩を詠むだけ。
化け物達は、いつものように、ぺらん。ぺらん。
笑っている。
腕には、随分と小さくなってしまった妹が、静かに抱かれている。
もう、小さな声は聞きとれない。
「ふーふーすいー。」
息をする音に少し声が混じって聞こえた気がする。消えてしまう。
座ったまま、目を閉じて詩を詠む。
なんと詠んだのか、なんの詩だったのか、
知らない。
ただ、「ソレを置いていけ。」と、大きな屋敷に、大きな声が響き渡った。
その大きな声に自分でも驚いた。
上手く行った。
両親は、ぺらん。ぺらん。
笑っていた。
ずっと笑っている。嫌悪で頭がおかしくなりそうだった。
化け物達は、ぺらん。ぺらん。
笑っている。
何かを言って、赤子を置いて、サッサと出て行った。
心臓の音が、部屋中に響いていた。
この部屋の、この御簾の中で、
私の傍に居る。唯一の人。
小さな、小さな手をそっと掌に乗せて眠った。
ようやく眠った。
夢の中で、誰かと話している。




