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三夜城家 紬 21話
▶保。
男が産まれた。武門がばたばたとうるさい。
母は、何を見ているのだろう?
もうすぐ、ようやく、やっと。
ここを出ていける。
ここでは、一番にはなれない。
葉月が逝ってしまっても、
一番になる事はなかった。
母の腹が大きくなっていく。
また月が満ちる、
泣き叫ぶ父は、どんどん狂っていく。
武門の道具としての役目に今は、希望すら持っている。
私は、三夜城の“恩”になる。
“恩”となって嫁ぐ。
産まれる赤子が男でも、女でも、
ここでは一番にはならない。
母が奥宮に戻って来る。
侍女と出迎えた。
母の腕の中で眠る赤子は、待望の男子。
武門は大いに沸いた。
後継ぎができたと盛り上がる。
もう、
本当に、もう、
この家で一番になる事は、なくなった。
皆に忘れられ、
居た事にも気づかれず、
私は、ただここに在る。
悲しくなって泣いたけれど、誰も気づかない、
母も、父も、三夜城の者も、武門の者も。
ずっと泣いているのに。・・・




