三夜城家 夢の終 20話
▶第3子、男。
やっと、男子が産まれた。
ようやくの男子で、
三夜城家の跡取りになる子だ。
武門は、男子誕生に沸いていた。
三夜城の家は、
代々祭祀の家で、別段男系でない様で、
第三子 保が産まれても
武門のように沸き立ったりはしていない。
三夜は、次女が亡くなって、人が変わった。
急に、泣き。喚き。叫び。
また、泣いて。
・・・壊れていく
ぼんやり、と庭を眺めていたり。
幼い赤子よりも、三夜から目が離せなくなっていた。
私とゆきへの執着もどんどんひどくなる。
私は、三夜が、
壊れていくのを、じっと見ている。
保が産まれて少しは、落ち着いたのかもしれない。
けれど、
壊れていく。
次女は、葉月は、もういない。
私も、
本当は、とっくに壊れているのかもしれない。
葉月には、不思議な思い出がある。
まだ、言葉も、おぼつかない幼子なのに、
突然、しゃべり出し。
いくつかの詩のようなものを聞いた。
・・・。
私が寝ぼけていたのかもしれない。
夢だったのかもしれない。
葉月の言葉は、思い出せる限り、書き留めて置いている。
三夜に見せるのは、もう少し三夜が落ち着いてからにしよう。
三夜は、今日も
朝から酒をあおり、
縁側で庭を眺めて、
うなだれている。泣いている。
私は、三夜が壊れていくのをただ、見ている。
幼い保を抱いて、三夜の隣に席をつくった。
”どうしましたか?"
三夜は、こちらを見ずに答えた。
“雨を待っている。”
庭を見ると、
あじさいが、もったりと花をつけ、
雨に打たれるのを待っていた。
小さな保の指に自分の指を預けて、
申訳ない。と、泣いている。
"この子も、ゆきも、武人に取られる。
武のない私を許してくれ。”
私は、子どもにするように、
三夜の頭を膝に置いて、
〝商の娘なので、よくわかりません。”
と、応えた。
“赤子は、かわいいですね。”
この時を大切に過ごしましょう“
泣きじゃくる三夜の頭を撫でる、
葉月のうたの話をした。
三夜は、驚きもせず、
三夜の妹の話をし始めた。
三夜の神託のはなし。
“さんやじょう”と“さやしろ”のはなし。
三夜のはなし。
はなしには、いつも、
音のない老人、顔のない人、化物になった両親。
が、登場する。
音のない老人・・・?
顔のない人?いったい誰の事だろう?
三夜の見る世で私は、どのように映るのだろう。
話し終えると、三夜は、安心したのか、
膝に頭を置いたまま、寝息をたてた。
私の腕の中、
もうとっくにすやすやと眠る保の温もりが心地よい。
ぽつん、ぽつ。雨が降ってきた。
あたたかい。生ぬるい風が三人を包む。
私は、この時間が愛おしい。
三夜は、まだ、一度も保を抱いた事がない。




