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にゃん鬼行  作者: てふ
三夜の夢
25/34

三夜城家 夢の終宴 18話

▶次女。

空が澄んでいる。

恐ろしい程美しい。


久しぶりに床から這い出た。


まだ少し夜は冷える。

三夜みやは、座って庭を眺めていた。

布団を引っぱり出し包みこむ。

三夜は、静かに泣いている。

冷たい。


いつもなら、香の宮に居る頃、

だけど三夜も、

しばらく、奥から出なくて良いようだ。


年が明けてすぐ、次女の葉月はづきが熱を出し、

そのまま熱が引く事もなく逝った。

~~

次女を産んでしばらく、香の宮へは、上がらなかった。

産後の肥立ちは良いのだけども、

あまりにも頼りなく泣く赤子から、

葉月から離れているのが、怖かった。



長女の ゆきも、葉月の面倒をよく見てくれている。

葉月は、よく熱を出す子で、

つきっきりになる事が多い。

その間、

ゆきは、奥の宮に仕えてくれている侍女と過ごす。

何人かの侍女が”ゆき”へ仕えてくれている。


ゆきは、三夜城の長女として、

三夜城の外から仕えている武家へ嫁ぐ。

三夜城内の武門は、儀式的な要素が強く

実戦へはほとんど出ない。

外の武家が仕えてくれる。

婚姻は必須だ。

もとより、

ゆきは、なるべく母と離して育てる。

と、聞かされてはいた。


三夜が余りにも子を溺愛するので、

奥の宮に三夜が戻る間は、ゆきの侍女も奥へは来ない、

三夜が香の宮へ入ると、

ゆきは侍女たちと、行ってしまう。

私は、葉月と二人。奥に残される。

三夜が奥の宮へ戻るその間だけ

集まる不思議な関係。

それでも三夜は、

きっとこの時間が無くなると、

本当に壊れてしまう。


三夜が香の宮へ入り、

ゆきも侍女達と行ってしまう

いつからか、

・・・ほっとするようになった。

葉月と二人のこの時間が唯一、

不安から解放される時間だった。

寂しさからなのか、

ゆきにも三夜にも、感じた事のない情が

葉月には、ある。


ゆきも いずれいなくなる。

三夜は、香の宮へとられる。


ちくちく痛むこの痛みを、

小さな命が癒してくれていた。


暑さがひいて、過ごしやすくなり、

香の宮へ上がるようになったが

葉月を、ゆきを、言い訳に、

毎度は、上がらずにいた。


葉月の傍を離れていたくない。



三夜は、どんどん変わって行く。

満月が明けて、

奥の宮へ戻って来るたびに、

泣き。

喚きたてるようになった。


寒くなり始めたある夜、

夜中に三夜が、香の宮から泣きながら

奥の宮の私達の元へ戻ってきてしまった。

限界だ。

例の神託ではない。


ゆきと葉月の隣に

泣き崩れる、三夜を寝かせた。


三夜が寝息を立て始め、

私も床へ入る準備をしようと立ち上がった時、

襖を静かに誰かが叩いた。


身支度して襖をあけると、老人が座っていた。

低くい声で訪ねた

「なんの御用でしょう」


老人は、

応えずに廊下の方へ合図を送った。


何人もの見た事のない侍女が部屋へ入ってきて、

三夜を抱えて出て行ってしまった。


老人は、一礼してその後ろを、

香の宮の方へ去っていった。


残った侍女が、

三夜を連れ戻しに来たのだと説明してくれている。


呆然としていた。


三夜を連れて行った事に驚いたのでない、

突然の訪問に驚いたのでない、

知らない侍女が、

あんなにいた事に驚いたのでもない。


あの老人に覚えがある。

三夜が時々話してくれる、

音のない老人とは、アレの事では?


三夜の見ている世の人だと思っていた。

私は、一度も見た事がなかったから・・・


次の朝、寒くて眠くて、

なかなか目が開かず、

床から出るのが遅くなってしまった。

はっとした。

となりに寝ていた我が子達を見る。


・・・ゆきは、

侍女達と起きて遊んでいるようだ。

元気な笑い声が庭から聞こえる。

布団は畳まれ

寝間の着物も、きちんと畳まれていた。


ちくちく痛む。

葉月は、まだ、眠っているようだ。


葉月の寝顔を見て、

また、ほっとした。

葉月にかけた布団へ入りなおし、葉月を抱きしめた。

涙で葉月のかおがにじむ、

布団を頭からかぶって、しばらく泣いていた。


泣き疲れてまた、うとうと。

とした時、

遠くで

”ことば”が鳴る。


“玉はうつりゆく、玉ひとつなり、

血のなかよりかえって来る也。憂うなし”


“玉はうつりゆく、玉ひとつなり、

血のなかよりかえって来る也。憂うなし。”

なんどか、繰り返す。音。

三夜?は、香の宮、

ゆき?は、庭で侍女と遊んでいる。

葉月?

・・・そんなはずはない。


葉月は、よちよち歩きの幼子。

言葉もたどたどしい。

そんなはずはない・・・。


もう少しだけ眠ってしまおう。

きっと、疲れている。


~~

三夜は、もう限界だった。

三日月が、上がりはじめると目がうつろになっていく。

泣いて私から離れない。

葉月も、ゆきも、心配そうにしている。

次の宴に香の宮へ上がった。


戻ってくると、

葉月は熱を出して寝込んでいた。

寒さが祟ったのだろう。

年が明けしばらくしても、

良くならず、そのまま息を引き取った。

享年二歳。


葉月が亡くなってから、

三夜の子どもの様な所が益々ひどくなった。

私の傍から離れない。

ゆきは、そんな父に遠慮してか、

怖がっているのか?

侍女たちと居る事が増えて行った。


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