三夜城家 夢の余韻 11話
▶絹。
御簾から這い出た。
宮を離れたのは、はじめてだった。
庭の川沿いに歩き、
・・・?川ができている。
橋を渡る。
・・・?橋まで・・・できている。
足袋越しに、ひんやりと湿気った土が冷たい。
・・・。
履物がないのだ。
・・・仕方がない。
冷たい。でも・・・気持ちがいい。
薄い衣が地面を擦って、泥が着いて黒ずんでいる。
それでも、ひらひらと揺れる。
ひらひら。
”月は満ち、下弦の次の朝、
陽、天頂過ぎる頃、羽衣の元へ。
羽衣統べる者あり“
“水の中、羽衣の館へ、その娘はある”
”求める答えそこにあり“”
”月満ちて過ぎた下弦の次の日、陽、
天頂過ぎる頃、羽衣の元へ羽衣持つ者あり。”
・・・。
薄い衣の袖をぎゅっと握る。
握っていないと指が震える。
橋の上から東屋がよく見える。
東屋に娘がひとり こちらを見て座っている。
"水の中、羽衣の館へその娘ある。今求める答えそこにあり“
そこにいた。 泣きそうになった。 足がかってに走っていく。
”月満ちて・・・下弦のつぎ・・・羽衣持つ者あり。”
"水の中、羽衣の館へその娘ある。今求める答えそこにあり。"
何度も何度も繰り返した。
"・・・求める答えそこにあり”
求めるこたえ。
ずっと、ずっと。求めたこたえ。
はやく聞きたい。はやく知りたい。
ずっと、求めたこたえ。
待っていた。
驚く娘の横に座り、話し始めた。
・・・
喉の奥が熱い。熱い。
涙がこぼれる。
それでも、やっと。やっと・・・、
自分の言葉で。話始めた。
ようやく話はじめた。
娘は、”きぬ”と言う美しい名の人だ。
”きぬ”美しい人。”人”




