九話 シードル
九話 シードル
「お前は本当に臆病だな。ビン太くん。」
気づけば俺はシードルの胸に抱かれていた。
「シードル!…。ごめん。本当にごめん!」
また、涙が溢れ出してきた。
「いいんだ、いいんだ。俺の方こそ無神経だった。すまん。」
黒焦げになった体でなお、俺に胸を貸してくれる。本当に優しい奴だな。
ポイン
ん?ちょっと待って、シードルの胸、柔らかいな、大きい。って、え!?
「お前、もしかして、女か?!」
「やっと正気に戻ったみたいだな。良かっ…,」
彼女の体がグラッと崩れ落ちたので慌てて支えた。
「おいっ大丈夫か!」
「ふふふ、驚いただろう。実はな…お前には…もうひとつ言わなきゃいけないことが…ある。」
「なんだ、言ってみろ。」
「俺は…ここの牢獄の監視官ではない。」
「まじかよ!」
「だが、さっきの爆音で…もうすぐ管理人が来る。お前は…俺を置いて早く…逃げろ!」
彼女の体は丸焦げになっており重症だ、もう動かすこともままならない。
「そんな、それじゃあシードルはどうなるんだよ!」
「俺は…大丈夫だ。監視官の服だから…な、ははは。」
「いや、バレるだろう!」
「ビン太!
お前は冒険者になれ、世界をみるんだ。恐れてもいい。怯えてもいい。泣いてもいい。それでも俺の憧れた神秘に触れてみろ。君の悩みなどちっぽけだとわかる。今はただ、今を全力で生きろ!そしたらまたどこかで会える。きっと会える。さあっ行け!イケメン!」
「…でも。」
「でもじゃない。大丈夫だ。こんな地下からさっさと抜け出して、たくさん恋愛してこい!今のお前ならきっと出来る!そうだろ?」
彼女は俺の背中を押して、にっと笑って倒れ込んだ。
「シードル!ありがとう!また会えたら。
結婚しよう!」
「…ッ、ハハハ。バカタレ。」
「いたぞっ脱獄者だ!捕まえろ!」
ゲッもう見つかった!
俺はがむしゃらに走り、地上へ抜け出すことに成功した。しかし、
「クッソオオオオオ!」
衛士に追われながらすっごく悔いていた。
「クソオオオオオッ!」
心の底から悔しかった。
俺のせいだ、俺が理性を保っていればあんなことにはならなかった。
そして何より、
「…救えなかった。」
俺はシードルに救われた。
この世界を恐れ、怯えていた俺を、彼女は優しく救い出してくれた。
なのに俺は、救えなかった。何も返せなかった。この時、己の弱さを実感したんだ。
「うわあああ!悔しいいぃ!恥ずかしいい!」
「なんだ!アイツ!さっきより速くないか!全然追いつけねぇ!」
ビン太、恥ずかしさで大興奮
アドレナリン全開でめちゃくちゃ速くなる




