八話 錯乱
「なぁシードル、なんでそんなに俺を気にかけてくれるんだ?」
「暇つぶしかな~。いや、気まぐれ?違うな、お前がイケメンだったからかな。」
「やっぱりイケメンって得だよなぁ。」
「うんうん。それにしても転生って良いなぁ。人生やり直せるって事だろ?しかもイケメンってステータス無償で付与されてんだってんだから儲けもんだよな。」
モヤッ
「だいたい、普通人生一回きりなのにもう一度チャンスくれるとか運命様優しすぎだろ。俺もしてみてぇな一回。ははは。」
モヤモヤッ
「なぁ、今度お前の前世の世界に連れてってくれよ、そしたら俺…。」
「そんないいもんじゃねぇよ。」
「…。」
俺はシードルが喋っているのを遮った。何だこのモヤモヤは。
「そんなにいいもんじゃねぇよ転生って。
俺は前の世界を憎んではいたが、好きな所もあった。だいたい、未知の世界に一人で、そして無防備に放り出されたその不安感をお前は理解できるか?
そもそもさぁ、転生というシステム自体が気に食わないわ。フィクションなんかは異世界に転生してラッキーみたいなノリで物語始まるの多いけど、前世の記憶残して異世界に放り込まれるなんてなかなか残酷な事だと思わないか。俺にだって大切な人達がいたんだ。あまり会話しないけどな。皆とはもう会えないし、それどころか知らない文化が根付いた世界で人間関係一から始めて上手くやれなんて無理にも程があるってんだ。
「…。」
俺の場合、何も悪い事してないのに殺されてんだぞ。ショックすぎるだろ。それどころか、一目惚れした女に開幕二秒でドスッだ。自分の死体想像しただけで吐き気するし、死んだら普通こんな事考えなくて済むんだよ。こんな心の傷おったまま魔法使わずに生きて行けとか鬼畜すぎる。そりゃ早々にゲームオーバーなるわ。自分に俺の切り替えの早さなめるなとは言い聞かせたものの、顔面だけじゃ割に合わなすぎる。これは、
運命を呪う他許せないっ!」
「落ち着けっ!」
「うるせぇっお前には何もわからないっ!俺にとって、死ぬことは最悪なことなんだよ!それをもう既に一回経験してんだっ!もう二度とあんな経験したくねぇって!怖いんだって!剣とか魔法とか魔獣とか、生まれた時から死と隣り合わせで生きてきたお前に俺の価値観が分かるわけがねぇよ!ゆとり舐めんなって!まじでもうさ、…。」
「色々と理不尽なんだってええええっ!」
ゴオォッ
全身から黒い炎が放出した。
「なんだこれっ。ぐああああ!」
「シードル!俺はぁ
死にたくねぇえよおおおおあああ!」
不安感、恐怖感、焦燥感で錯乱。
無意識の中、大粒の涙にも気付かず、俺はシードルに黒炎を浴びせた。
ドゴオオオオォォォ!!!
シードル、お前は良い奴だ、少しの時間しか話をしてないがそれでもわかる。こんなに良い奴、お前が始めてだよ。始めてだったんだよ。対等な関係でここまで楽しく話せたのは。だからこそ、お前が良い奴だからこそ、俺の気持ちをわかって欲しかったんだと思う。ごめん。
「お前は本当に臆病だな。ビン太くん。」
気づけば俺はシードルの胸に抱かれていた。




