十話 幕開け
「うわあああ!悔しいいぃ!恥ずかしいい!」
「なんだアイツ!さっきより速くないか!全然追いつけねぇ!」
色んな魔法を駆使して俺を捕らえようとする衛士達をよそ目に、はたとついさっきの衝撃が蘇ってきた。
「ってか、シードル女の子だったのか!」
未だに信じられないわ。一人称俺って、紛らわしい。
しかし本当に強い人だったなぁ、俺のめんどくさい性格にあんなに合わせてくれる人まじでそうそういないからなぁ。結構酷いこと言いまくってたなぁ俺。本当ごめん。
後になって思うが、アイツはすげえ奴だったんだな。おっと、
ズザァ
躓いて転んじまった。あれ、やばくね?衛士の方々来てもうてるよ、追いついちゃうよやばいって!ちょっとちょっとせっかく外に出られたのにまた捕まっちゃうの?嫌だ!嫌すぎる!せっかくアイツが背中押してくれたのにもう捕まっちゃうの?まだ何もしてないよ俺。ダメだダメすぎる。
「うわあああ!助けてくれえええぇぇ!」
その時、誰かに腕を掴まれた。
「私はユーリィ・クラネル。外交官だ。」
「外交官!?」
白い髪に白い服、なんか全体的に白い奴だ。
「異国人の受け入れのうんぬんかんぬんはうちの仕事だ。頭の硬い衛士達の非礼を詫びる。とりあえず逃げるぞ。」
その男は俺にローブを着せ、ベルトで俺を繋ぎ、そのまま抱き抱え、フワリと離陸。その動作実にスマート。
「うわぁ!」
俺の体ごと宙に舞いあがった。生まれて初めての経験だ。そのまま巨大な岩山を軸に螺旋を描きながら上昇。やや分厚い雲を突き破って空の世界へと投げ出された。
「めまぐるしいあああああぁぁぁぁ!」
その間、俺の絶叫は止まらなかった。
「大丈夫。目を開いて。」
男に言われるがまま、恐怖をグッと堪えて薄目を開けると同時に、目の当たりにしたその光景に驚愕し、たちまちその目はまぶたがちぎれるほど見開かれた。
「すげぇ。」
山頂に聳え立つ大きな城を中心に、統一された色の家が建ち並ぶ。さながら夢にまでみた中世ヨーロッパの世界。時間は夕暮れに差し掛かり、オレンジの風景と趣深い建造物群の調和に感動する。
俺の脳内には壮大なケルト音楽のバックグラウンドミュージックが流れ出した。
「あぁ、美しいな。」
転生一日目、イケメンになった俺は地下の薄暗い部屋で、とある少女と出会った。彼女は、世界に怯えていた俺を、己を犠牲に救い出し、あまつさえ背中を押してくれた。そして再び地上へ戻った時、世界が大きく変わってみえた。広大な空、温かい日光、涼しい風、美しい山川草木、未知の文化、前世にいれば味わえなかっただろう特別な空間を俺は今、生きてる。
あの少女はその事を気づかせてくれた。その事を素直に感動出来るのは彼女のおかげだ。俺は彼女を尊敬しようと思う。
さて、
これから俺はどんな人生を送るのだろう。
まだまだわからないことが多いがとりあえず、今を全力で生きてみよう。
ここから始まるんだ。俺の冒険は。
異色の異世界ハイファンタジーここに開幕だ!
「泣くほど凄いか、この国は。もしそうなら、嬉しい限りだ。」




