五話 裏切り
「きっと何か理由があって羽一丁なんだろ?話してくれれば、放してやるんだが。」
少しモヤッとした。ダジャレにでは無い。デジャブ?脳裏に黒い過去がチラつく。まるで何かをうったえているように。
あぁなるほど。
それが何か気づいた時、俺は眉間に皺を寄せ、プルプルと震えていた。
「…。何故そう言いきれるんですか。理由…無いかもしれないじゃないですか。露出することで興奮を感じるただの変質者かもしれないじゃないですか。
同情は…やめて頂きたい。親しい間柄じゃないのに俺の事をわかってる様な口を、きくな。吐き気が、する。」
「あのなぁ、何も話してくれないのに、わかってる様な口をきくなはこちらからしたらなかなかハードだぞ。シークレットスタイルな奴の心を開く為の、俺なりの寄り添い方だったんだ。あんまり警戒するなよ、ちゃっちゃと話しちゃってこんな狭苦しい牢屋から出ちまおうぜ。」
正直わかっていた。俺が今しなければならないことは事情を話すことだ。無事、疑いが晴れたら牢屋から出してもらうことができる。ただ、出たところで厳しすぎる環境がまちうけている上に、俺に生きる気力がないとなれば、牢屋に引きこもる方が幾分かマシかもしれないと思ってしまうのだ。だから話すのには抵抗がある。
そして理由はもうひとつある。
「警戒しない訳にはいかない。あなたみたいに最初から優しい感じで距離をつめる奴は皆、俺を裏切ったんだ。上げてから落とされるあの苦しみはもう味わいたくない。」
人間関係を裏切られた経験は沢山あった。主にブサイクだからという理由だけで、ただそれだけで数多の信頼を裂かれた。最も、他人に期待して勝手に幻滅している節も否定出来なくはないが、それを理解したところで世の中の理不尽さには太刀打ち出来なかった。
前世で俺が住んでいた国は生死を分ける出来事は珍しく、かなり恵まれた環境で育てられた子供が多かった。夢が定まらない日々を学校で過ごす学生の脳は勉強事と娯楽事、それと人間関係事が大半を占めていただろう。
年頃の奴らの人間関係事の代表格といえば
恋愛!
俺は彼等のその恋愛脳に随分と振り回された。
中二の時だ、ズッ友!と誓いあった幼なじみ達が徐々に離れていくのを感じた。しまいには近寄んなブスとまで言われた。俺の顔が急にブスになったわけでは無いのに、何故だろうかと考えていると
「ブスと絡んでるとモテねーだろ。」
という陰口が聞こえてきた。
高校生活序盤の時だ、俺に新しい友達ができた、しかしそいつは俺を良いように使って捨てた。きっと、ブスにも優しくする俺かっこいい。とか思ってたんだろう。
他にもまだあるが、こういった経験をふまえて俺は
最初から距離が近い奴は特に、きっと俺を利用して捨てるという事。
家族以外はあまり信用できないという事。
切り替えのはやさが大事という事を学んだ。
「警察やら検察やらならともかく、まだよく分からないこの世界の人間に俺の境遇を話したところで真摯に寄り添ってくれるかも怪しい。」
「切り替えることで傷つかないようにしてきた男」なんやな。




