四話 出会い
「もう無理ゃあああああ!」
だが武装した男に同じ装いをした仲間が加わり、そして噂の浮遊魔法を使い、ものすごいスピードで迫りくるので、俺は運動会で一等賞を譲ったことがなかった足にも自信を失い、諦めかけていた。
ゲームオーバーだ、数時間前の決意が恥ずかしい。何が俺の切り替えのはやさ舐めんなよだボケ。あの時は新しい自分に生まれ変わったテンションで痛々しい啖呵切ったがただの強がりだったわ笑える。俺ここで死ぬんだな。どうせ死ぬなら異世界に来た意味無いじゃん馬鹿野郎~!
泣きながら、叫びながら。そして最後だと悟りながら。
男らしく腹切る勇気もなく。ただ情けなく我武者羅に走った。
「うわあああああ!」
そして呆気なく俺は衛士に捕らえられた。
俺を捕えた男はおそらく、何かの魔法で俺を眠りに落とした。
気づいたら暗い牢屋の中だった。
自分がまだ生きていることに嬉しさと怒りが混ざった複雑な感情が湧いた。また運命に弄ばれた様なきがして悔しさも湧いた。
これから何度も死境を彷徨う恐怖を経験するかもしれないと思うと、いっそ死んで楽になりたかったとも思った。
死が目の前に迫ってるなんて考えただけで怖いだろ。だから皆ぽっくり知らぬ間に逝きたがるんだ。死なんて、体験するとしても人生一回でいいんだ。
なんて悟りながら大きなため息を吐いた。
すると、牢屋の前に背中を向けて立っていた男が話しかけてきた。
「起きたか」
「っ!っくりしたー、いたんですね。」
「お前、なんでそんな格好をしているんだ。」
「好き好んでこんな格好してるわけではないですよ。」
「何かあったのか?」
「え?あ、ああえっと。え?」
話していいのか?いやダメだ。誰かも知らない奴に話す内容じゃない。そもそも信じてもらえないだろ。てか誰だこいつ、ただの看守じゃないのか?
「ん?話してみてくれ。」
なんだその安心感のある声と口調は。話してしまいそうじゃないか。君カウンセリングのセンスあるねぇ、じゃねえやめろ。
「な、なんでですか。」
「事情聴取だ。幸いこの地下牢には俺とお前しかいなくてな。安心して話してくれていい。」
「安心…出来ないですよ。保証はあるんですか?」
「…。」
しまった!つい口答えしてしまった。ゆとり世代の悪い癖だ。ヤバイ俺どうなるんだろう。
「まぁ、そうだよな。気が向いたらでいい。」
え?なんだこの緩い拷問は。何故だろう、凄く話を聞いてもらいたくなってきたぞ?
「実を言えば最近、テッドレッド王国の発展がいちじるしくてな、人の出入りが急に活発になってきたから関所であるここの警備もピリピリしてんだ」
なるほど。
「ついこの間までなら、お前みたいな変な奴が通っても牢屋に入れられないどころか注意もされなかったんだがなぁ。衛士の奴ら、仕事が増えたと思ったら無駄に張り切りだして、かなり敏感になってるからなぁ。手荒くし過ぎてテッドレッド王国の印象が悪くならないといいんだが。
本当に注意しなきゃいけないのはお前みたいな主張の激しい露出狂なんかじゃなくて、他国のスパイやら魔物やらなんだがなぁ。そんな事もわすれちまってるのか?衛士の奴ら。なあ?」
「…。」
全くもってその通りだ。知らんけど。
俺は黙ったまま、内心激しく同意していたが、主張の激しい露出狂という発言は腑に落ちん。
「きっと何か理由があって羽一丁なんだろ?話してくれれば、放してやるんだが。」
少しモヤッとした。ダジャレにでは無い。デジャブ?脳裏に黒い過去がチラつく。まるで何かをうったえているように。
あぁなるほど。
それが何かに気づいた時、俺は眉間に皺を寄せ、プルプルと震えていた。




