四十七話 エピローグ
深夜。
俺と勇者パーティはテッドレッドへ着いた。
その足で、デントとティナと外交院へ報告に行く。
重苦しい静寂が満ちる外交院の一室で、ユーリィは腕を組み、深いため息をついた。
「なるほど、そんなことが……」
ユーリィは眉間を揉みながら、冷めきった紅茶に視線を落とす。
「ふんっ、ドリュー族の狙いはアトラシアの復活だったってわけか」
デントが舌打ち混じりに呟いた。
「三人ともよく無事だった。」
言葉を区切り、ユーリィは部屋に立つ三人に順に視線を送った。
「ダモレ、よくやったな」
「デント、よく耐えた」
「ティナ、お前はドリュー族からレガリアは取り返せたのか?」
尋ねられたティナは、一瞬ピクッと肩を跳ね上がらせた。
「ハッ!……てへ?」
あざとく首をかしげ、可愛らしく頭を小突くティナ。
忘れてたなこいつ……
俺とデントの視線が冷ややかに刺さる。ユーリィは諦めたように「ハァ……」と深い溜息をついた。
「まぁいい。ティナじゃなかったら明日の儀式に間に合わなかったところだ」
「明日の儀式に……? どういうことだ?」
俺の問いにユーリィは静かに首を振った。
「本来、ティナにはレガリアが必要ないんだよ」
「勇者パーティなのに!?」
思わず突っ込んだ俺に、ユーリィは謎めいた笑みを浮かべる。
「明日になればわかる」
話が一段落したところで、俺はふと思い出して自分の胸元に手をやった。
「そういえば……俺のレガリア、壊れたんだった」
「なっ……なにぃ!!!!」
ユーリィが今夜一番の素っ頓狂な声を上げた。椅子の脚がガタッと音を立てる。
「それでどうやって神殿アトラシアスに入ったんだ!?」
ユーリィの問い詰めるような視線に、隣にいたティナが事もなげに言った。
「ダモレ。裸だったよ?」
「ばかっ! 言うなよ! お前もレガリアしてなかっただろ!」
「私はいいの!」
「なんでだよ!」
ギャーギャーと言い争う俺とティナ。その横でデントがやれやれと首を振る。
「ん? どうした? ユーリィ?」
ふとユーリィの方を見ると、両手で顔を覆い、ガタガタと震えていた。顔面は蒼白を通り越して土気色になっている。
「は、……裸だと……」
静寂のあと、外交院全体を揺るがすような叫び声が響き渡った。
「なにやってんだああああああああ!」
異世界生活七日目。
仕方なかったとはいえ、ユーリィに初めて怒られた。それが何故か勇者パーティと同等に扱われた感じがして嬉しかった。
俺だけに甘かったら、それはそれで困っていたところだ。
何百年と待ち続けた海底都市アトラシアは復活しなかった。
俺がそれを阻止したんだ。
でも、それはテッドレッドのため。
それがこの世界にとって正解だったのかわからない。
ただ俺は自分で大切なものを選び、勝ち取ったんだ。
俺が強くなるまで、世界は待ってくれない。
だからこそ、今大切なものを泥くさく勝ち取っていく。
それが俺のスタイルなのかもしれない。
夜が更けていった。
答えのない問いを残したまま、ただ夜が更けていった。
地下回廊にて。
悲しげな足音が響き渡る。
レガリアを手に持つその主の声がこぼれた。
「また、夢の続きを語ろうね。ビン太くん。」
アトラシア篇、完結です。




