四十話 海底神殿
扉が開き、歩き出したシードルの後ろをついていく。
「ビン太くん。魔力爆発って知ってるかい?」
その一言でハッとした。
確か、その魔力爆発が原因でテッドレッド山ができたんだっけ。以前ユーリィに聞いた。
シードルが続ける。
「その昔、天地をひっくり返すほどの、歴史的な爆発が起きたんだ。世界のバランスが一時的に崩れるほどの、とんでもない爆発だったらしい。
その爆心地がここ。海底都市アトラシアの神殿―アトラシアスだ」
「アトラ……シアス」
門を抜け、回廊を歩いていく。
やがて、その先に巨大な神殿が現れた。
海底都市の建物よりも低い。
それなのに、そこだけ何かが違った。
神殿の周囲だけ、海がやけに澄んでいる。
水の中に余計なものが何一つないような、静かで清らかな空間だった。
不思議な神秘性だった。
その荘厳さを前に、ユーリィの言葉が蘇る。
『ここは昔、海だったんだよ。そして、その海底には神殿アトラシアスがあった』
『神殿アトラシアスはその昔、凄まじい魔力爆発を起こした。その爆発によって、大地そのものが隆起したんだ』
『それによって出来たのが、巨大な円柱形の山――今のテッドレッド山だ』
『そして、神殿アトラシアスの名残りが、この聖堂だ。海神を祀る場所として、今もこうして残されている』
そうか。
ここが、テッドレッドの聖堂の「本殿」か。
今まで何度も見てきた聖堂。
その遥か昔の姿が、目の前にある。
「ビン太くん。杖は持っているかい?」
「え?あぁ」
「レガリアは持っているかい?」
「え?え?あぁ持ってる。盗るんじゃねーだろうな、シードル」
「ビン太くん。レガリアをつけるんだ」
俺は言われるがまま、レガリアをつける。
「シードル。お前はつけなくていいのか?」
「これのことかな?」
シードルが取り出したものを見て、叫んだ。
「それは、ティナのレガリア! シードル!」
「さぁ、入ろう」
「おい!」
シードルは構わず中へ入っていく。
俺も慌てて追いかけた。
中に入るとそこにあったのは、なんと。
巨大な女性の石像だった。
「おいおい、自由の女神か、大仏か?」
「これが、海神様だ。」
これが…。なんて慈愛を感じる美しさなんだ。
「海神、アマロファスィ。海の記憶を抱く者。何百年も前から、一人でこの神殿を守り続けているんだ。」
「何百年も!」
「ビン太くん、俺の夢はな、この海神を目覚めさせ、
"海底都市アトラシアを復活させること"だ。」
「ここを、復活…。シードル、お前は一体。」
「俺はこの都市の民、アトラシアンの末裔だ。俺たちの一族は、故郷の復活の為に何百年も費やしてきた。俺にもそれを果たす使命がある。」
驚いた。シードルにこんな壮大な夢があったなんて。
「それに、あの人との約束のためにも。」
「あの人…?」
「ビン太、俺から君にお願いがあるんだ。」
なっ…なんだよ。真剣に見つめやがって…
「アトラシアマリンを、こちらに渡してくれないか?」
「なっ!!??やだよ!!」
これは大事なテッドレッドの水の恵みだ。地下世界の人に渡したらなにされるかわからないよ。
すると、シードルが懐から青い宝石を取り出した。
「アトラシアマリン!?なんで!」
「これは地下のアトラシアマリンだ。
祖父がね、地下世界で手に入れた。
ビン太、アトラシアマリンっていうのはね。この世に3つあるんだ。」
「地上に一つ、地下に一つ、そして。
海底に一つだ。」
シードルが女神を指差した。
そこには女神の手の中に光るアトラシアマリンがあった。
「アトラシアマリンが3つ集まる時。女神が復活を遂げる。女神が復活を遂げれば、アトラシアは再興される。俺はアトラシアを過去に戻すんだ。」
「そうなるとテッドレッド王国はどうなるんだよ!」
「もともとテッドレッドは存在しなかった文明だ。本来あるべき姿にもどるだけだよ。」
「シードル!!」
シードルにアトラシアマリンが渡ると、テッドレッド王国が滅びる。そんな境地に俺は今立たされているんだ。やばい!やばいぞビン太!
「さぁ、アトラシアマリンをこちらに渡してくれ。」
【★★★★★】評価やブックマークを押していただけると、執筆の大きな原動力になります!応援よろしくお願いいたします!




