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転生したらイケメンだった面(ツラ)〜前世ブサイクの俺、チート顔面と勘違いで最強勇者の代役をやる羽目になる〜  作者: Umeキミノ莉
五日目 特訓

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三十話 ユーリィ

日が暮れ、デントとの修行を終えて、へとへとになりながら帰路についた。


いつものように屋敷へ戻ろうとした、その時だった。


「ダモレ! デント!」


ティナがこちらへ走ってくる。


「どうした?」


「ユーリィが倒れた!」


「何!?」


俺とデントは顔を見合わせる。


俺たちは屋敷の病室に駆け込んだ。


「……いない」


胸騒ぎがした。


すると、家の方からイザベラさんが駆けてくる。


「ティナさん! ユーリィさんが、外交院に!」


「なんで!?」


「ティナ、行くか」


「うん! イザベラさん、ありがとう!」


俺たちは急いで外交院へ向かった。


外交院に着くと、ユーリィは――


仕事をしていた。


倒れたって聞いたぞ。


なのに、机に向かって書類を整理している。


その姿を見て、俺が中へ入ろうとした瞬間だった。


デントが俺の肩を掴んだ。


「お前は俺たちと知り合ってまだ浅い。ここで待て」


「え?」


そう言って、デントは俺を外に残したまま、ドアを閉めた。


「ちょ、デント!」


返事はない。


仕方なく、俺はその場に立ち尽くす。


すると、閉ざされたドアの向こうから、微かに声が聞こえてきた。


俺は耳を澄ませた。


「ユーリィ! なんで仕事してるの!? さっき倒れたでしょ!?」


ティナの声だ。


「ゲホッ、ゲホッ……大丈夫だ。このくらい。今は大事な時なんだ。構わないでくれ」


ユーリィの声。


明らかに苦しそうだった。


「そんな訳にはいかないよ!」


「デント、ダモレは帰ってるのか?」


「俺がシゴキにシゴキまくって、きっと今頃、部屋でぶっ倒れてるところだ」


「そうか……」


「ダモレが来てから、テッドレッドはだんだん変わってきてるな」


「……」


「巷ではダモレコールが流行り、セレスティアでは一目置かれ……そしてデントは整形を決意した」


「おい」


「冗談だ」


ユーリィの声は、すぐに真剣なものへ戻った。


「あいつはきっと、テッドレッドにとって新しい風なんだ。俺は、このことを大きなチャンスだと捉えてる」


「ダモレの檄でテッドレッドが一つになり、今、この国のあり方の見直しが真剣に議論され始めた。この機を逃す手はない。ゲホッ、ゲホッ……」


咳が続く。


それでもユーリィは話し続けた。


「二人とも聞いてくれ」


「……」


「あいつが信じた方へ、真っ直ぐに突き進んでいくためにフォローしていくのが、俺たちの仕事だと思ってる」


デントの声が返ってくる。


「ふざけるな、ユーリィ。


あいつに、この国を背負わせるんじゃねぇ。俺はただ、あいつを憂さ晴らしに利用するだけだ」


「デント!!」


ティナが怒鳴った。


だがユーリィは静かに答えた。


「あぁ。出身地でもないあいつに、国を背負わせるつもりはない。


ただ、あいつの進む未来が肯定されるために。


この道を選んで良かったと言えるように。


そのためにも、俺たちはこの国を少し前へ進めなければならない。


それが、ダモレを勇者にした俺たちの責任だと思ってる!」


……。


俺はドアの前で動けなくなっていた。


俺を勇者にした。


そのことをこんな風に考えてくれていたのか。


「わかった! わかったから……」


ティナの声が少し震える。


「ゲホッ、ゲホッ」


「今日はもう寝てよ。元々持ってる病なんだから。再発したら一大事だよ」


その時だった。


俺が立っている玄関の方から、物音が聞こえた。


「あら?」


振り返る。


「パルフェさん……」


いや、屋敷の制服を着て給仕してるんですけど。


この人もう普通に働いてるだろこれ。


「ユーリィさんに、お夕食をお届けしろと言われまして、来たのですが」


「パルフェさん、シーッ……」


俺は人差し指を口元に当てる。


「ありがとうございます。俺が届けときますんで、帰っといてください!」


「そんなわけには……」


パルフェさんはにっこり笑った。


「私特製のパフェもご用意致しましたので、私が届けますわ?」


「いいですから! 帰ってください!」


「いやです!」


「大丈夫ですから!」


「大丈夫ではありませんわ!」


「だから俺が――」


「私が――」


配膳トレーの取り合いになる。


「ちょっと!」


「ダメです!」


「俺に任せてください!」


「嫌です!」


「だから!」


「私が!」


「カランッ」


嫌な音がした。


次の瞬間。


「ドシャアッ!」


「――あっつうううううううあああああああ!!!」


熱々のスープが、俺の身体にぶちまけられた。


「ダモレ!?」


「ご、ごめんなさーい!」


俺は床に転がる。


ティナがドアを開けて叫んだ。


「病人がふえた!!!」


「熱っ! 熱い! 熱いってぇぇぇ!!」


――異世界生活五日目。


今日は、ユーリィが俺に対して抱えている気持ちを初めて知った。


俺は温かな気持ちになった。


……熱々な気持ちにもなった。


彼らが俺の後ろ盾となり、俺の成長をサポートしてくれている。


そんな恵まれた環境を、無碍にするわけにはいかない。


俺は感謝して、強くなる。


それが一番の恩返しだと信じて、前に進むんだ。


結局。


デントに運ばれたユーリィと俺は、病室に並んで寝かされることになった。


俺は、パルフェさんに罪悪感を抱かせるため、わざと気絶したふりをしていた。


……まあ、実際かなり熱かったけど。


目を閉じていると、少し離れたところから、デントとティナが小さな声で話しているのが聞こえてきた。


「ダモレと、何かあったのか?」


「……」


「また、いちごでも取られたか?」


「んっ……うん。なんか、取られちゃったかも」


「そうか」


……。


なんのことだ。


ティナ……。


俺はその意味を考えながら、そのまま眠りについた。

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