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転生したらイケメンだった面(ツラ)〜前世ブサイクの俺、チート顔面と勘違いで最強勇者の代役をやる羽目になる〜  作者: Umeキミノ莉
五日目 特訓

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二十九話 特訓


翌朝、異世界生活五日目の朝。


広場の集合場所に到着すると、そこに見慣れた男がやって来た。


「よっ」


「ブハッ!!? デント、お前、顔パンっパンじゃねーか!!」


「マジで整形した」


「ブハハッ!! 腹痛い、笑い止まらねー!!」


「ダモレ、テメェ……パルフェさんに手ぇ出してねぇだろうな!?」


胸倉を掴んで顔を寄せてくるデント。


「出してねぇよ!」


「ああ!? 二日同じ屋根の下なんだぞ! なんかあるんだろ! なぁ!?」


「いててて! 涙目になるな! 泣くんじゃねぇよ、デント!」


その時、威勢の良い声が広場に響き渡った。


「さぁ、みんな! 今日の狩りのリーダーを務めるクルーガーだ! よろしく!」


「あっ、拡声魔法の声の人だ」


勇者ダモレ並びに勇者一行の帰還である!――の人だ。


「クルーガーは弓の名手だ。この国で奴を知らない者はいないぞ」


クルーガーは若手兵士たちに告げた。


「今日は若手教育に、勇者さまが同行してくださる!」


「『勇者さま!』『勇者さまが!』」


沸き立つ兵士たち。


「やばい……俺の実力バレるんじゃ……」


「大丈夫だ……俺とお前は同じ服を着ている。もしバレそうになっても俺がフォローする。それと、他の狩りを邪魔しないように、少し離れた所で俺と特訓だからな」


「えー」


「ハッ、イケメンはいいよな! いきなり勇者とマンツーマンレッスンか! まぁいい、ありがたく受け取れ!」


「あぁ……頼んだぜ、デント!」


⸻


狩場へ着くと、俺とデントは狩りの一行から少し離れたところに陣取った。


「これは俺が実際に戦場で使ってる剣だ」


デントから差し出された剣を、俺は両手で受け取った。


「うおっ……」


ずしりとした重量が腕に伝わる。


「重いけど、なんか振りやすい」


「俺はただの木の枝を使う。お前はそれを使え」


「おう」


デントは地面から一本の木の枝を拾い上げた。


そして、俺に向けて構える。


「さあ、本気で来い」


「はぁぁぁああああ!」


俺は剣を振り上げ、思い切り踏み込んだ。


カッぁぁあああん!!


激しい金属音。


俺の剣は、デントの木の枝に弾き飛ばされていた。


「なっ……」


手から剣が離れ、地面を転がっていく。


デントは枝を肩に担ぎながら、淡々と言った。


「これが、想いの重さだ」


「……重さ?」


「最初に大事なことを教えておく」


デントが俺を見る。


「戦士はな、色んなものを背負ってるんだ」


「……」


「人々の想いを、この剣に込めて、一振りに乗せる」


デントは木の枝を軽く振った。


「それが、剣術の真髄だ」


「はぁ?」


俺は思わず眉をひそめた。


「お前が? そんなことをしてるってのか?」


「そんな美しい話じゃねぇ。

想いの込め方は人それぞれだ。分かりやすい具体例として、俺の場合に限った話をしよう」


デントは剣を見つめた。


「勇者として旅をしていると、色んなことに出くわす」


「死んだ勇者の願いを、俺に託すばあさん」


「敵によって破壊された集落で、泣きついてくる子供」


「王国の誇りだと言って、俺を崇めるじいさん」


「俺の功績を英雄譚として語り継ぐ旅人」


「数多の期待と重責を一身に抱える」


そして――


「その溜まりに溜まったストレスを、戦場でテクニックを加えて放つんだ!」


「ストレス解消のために、剣を?」


「そうだ」


即答かよ。


「俺がただ自分のために行っている戦いに、人々が勝手に土足で踏み込んで意味を持たせてくる」


デントの表情から、いつものふざけた雰囲気が消える。


「それは耐えがたい苦痛だ」


「……」


「だが、俺が剣を振る時、そこには誰にも立ち入ることのできない技術の次元がある。

その剣技の次元こそ、俺だけの聖域だ」


静かな声だった。


「責任から逃げた先で手にした力こそ――俺の想いの重さなんだ」


残酷な話。


人々はデントを必要としているのではなく、勇者を必要としているんだ。


デントの苦しみは、俺にはわかる。


人々は後天的な成功話は好きだが、その人が好きなわけではない。

先天的な才能に恵まれた人間を好きになるんだ。


だからこそ、努力で辿り着いた領域が自分の一番大切な領域になるのは、すごく共感できる。


そして、それを失った時の悲しさもだ。


俺は転がった剣を拾い上げる。


「お前らしいけど、特殊すぎて参考にならねぇよ!」


「参考にする必要はない」


「え?」


「要は、自分の想いの核をどれだけ増大させるかだ」


デントは俺の胸元を指差した。


「それを知るのは、お前だけしかいない」


「……」


「これが、剣の真髄だ」


俺は剣を見つめた。


「剣の真髄はわかったけどさ、デントはそんなんでチームワークってできんの?」


「できん!」


「ずこー!」


即答かよ!


デントは平然と続けた。


「しかしな、俺は勇者パーティのリーダーではない。勇者だが、リーダーは別にいるんだ。俺が自由に動く。そんな俺を、チームがフォローする。それが今の勇者パーティのあり方だ」


「へぇ……」


「そして、その弱点も強みも、俺が全て理解している」


木の枝を肩に乗せる。


「だからこそ、生き残ってるんだ」


そうか。


いくら強くても、足元を掬われればあっさり死ぬことだってある。


自分のあり方の弱点も理解することで、世界から狙われる勇者が、勇者として生き残ること自体が実績になってるんだ。


「……」


俺は剣を握る。


デントの言葉が、頭の中を巡っていた。


想いの核を、どれだけ増大させるか。


精神状態。

覚悟。

集中力。


それらすべてを、剣技へと変換する。


――デント流の哲学。


でも。


俺には、俺の剣がある。

俺には、俺の想いがある。


目を閉じる。


俺は何のために、この剣を振るう?


力を誇示したい。


「……違う」


過去の自分を肯定するため。


「……少し違う」


誰かを守りたい。


「……しっくりこない」


褒められたい。


「……なんかダサい」


俺を救ってくれた人たちに報いたい。


「……いや」


それだけじゃない。


もう、大切な人を救えなかった後悔をしたくない。


「……近い」


もっと。


もっと俺の奥にあるもの。


俺は何を望んでいる?

何を欲している?

何を――信じたい?


「……」


目を閉じたまま、剣を握りしめる。


大切な人と向き合いたい。

もっと理解したい。

対話したい。

分かち合いたい。


そして――


胸を張って、横に並びたい。


「……これだ」


その瞬間。


「ゴォォッ!!」


握りしめた剣から、黒い炎が噴き出した。


「なっ……!」


俺自身が驚いて目を見開く。


黒い炎が剣身を包み、激しく揺らめいている。


デントは、その炎を見つめ――


「……炎の魔法か。いいもん持ってるじゃねーか」


俺は黒い炎に照らされた自分の手を見つめた。


これは――。


「問いを止めるな。炎が弱まってきている。その炎はなぜ出た。どのように使う」


「デント! 他人に問われるとわからなくなる。黙っていてくれ!」


胸を張って、横に並びたい。


俺だけにしかない価値を。

俺だけが感じる想いを。


イメージしろ。


外から内へ。

内から外へ。


重なり合い、ぶつかり合い、マッチした時――。


ゴォォォ!!


この世界に魔法が成立する。


これが……魔法。


なんて繊細な作業なんだ。


そして、想いを剣に乗せる。


その時、茂みから魔獣が現れた。


「ダモレ! そいつを殺れ!」


「うらぁぁあっっ!!」


炎が消えた!


グアアアア!!!


バシュ!


「うわぁっ!」


俺は魔獣に突き飛ばされた。


「何故、炎が消えたかわかるか」


「信じる力より、恐怖が上回っちまった。そんな感じだ」


「もう一度やってみろ」


「うらぁぁぁあっっ!!」


⸻


気づけば夕方になっていた。


はぁ……はぁ……はぁ……


集中力が切れてきたな。


まぁ、一匹やれれば上々だ。


今日は引き上げよう。


バシュ!


クソっ。


俺が手間取ってた魔獣を、木の枝で一発KOしやがった。


やっぱり実力は本物だな。


デントは枝を肩に担いだまま、何事もなかったように歩き出した。

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