二十二話 誘拐
二十二話 誘拐
異世界生活三日目
エルーちゃんの侵入で目が醒める。エルーちゃんとの初対面が昨日の朝なんて嘘みたいだ。それくらい昨日の一日は長かった。
「昨日の夜は大変な目に遭った。」
エルーちゃんと朝食を食べながら、愚痴をこぼす勇者。
「まんざらでも無さそうじゃない?モテモテ勇者さん?」
「そりゃ嬉しかったですよぉ!でもあんなに迫られても断り方なんて知らないし、なんかもう、、疲れた。」
イザベラさんと話ながら思った。求めてない時にモテるってシンプルに大変なんだな。
すると、ユーリィが玄関から歩いてきた。この人いつも朝早いな。
「ダモレ!すぐに外交院に来てくれ!」
外交院に入ると、ユーリィとデントが二人で待っていた。
「ゲッ!」
「いいからこっちに来い。」
ユーリィに諭されてデントの横に並ぶ。
「今日お前たち二人を呼んだのは他でもない。大変なことになったからだ。」
「大変なこと?」
「…。昨晩、ティナがセレスティアに連れて行かれた。」
「「……ハァァァアアアアア!!!!???」」
「ヨハネか!」
「そうだ。しかも厄介なのことに、ティナ自分からついていったと証言がある。」
「「何をやってんだアイツはぁぁああ!!」」
不本意ながらデントとハモリまくっている。
「シー!このことは内密にだ!ことがことだ。バレたら恥ずかしいなんてもんじゃない。国の信用に関わる!」
「ったく。勇者代行と一緒じゃねーか。」
「テメェが言ってんじゃねぇよデント!」
「しかしティナか、有り得なくはない。旅の途中で何度か天空世界の憧れを語ってた。証言したのは誰だ?ユーリィ。」
「ティナの友人だ。今朝起きたらティナがいないと報告が入り、探していたら友人が証言してくれた。」
「こうなったらもう行くしかねぇな。」
「あぁ。ダモレ!デント!今から三人でティナを連れ戻しに行くぞ!」
「「オウ!!」」
「何で行くんだ。」
「浮遊魔法では高度に限界がある。」
「じゃあ」
「ドラゴンだ。」
扉を開けて庭に出ると、ユーリィが指笛を吹いた。
グアアアア!!!
街の彼方から遠吠えが聞こえる。
その方向から大きな影が現れ、その影は強烈な風を巻き起こして庭に降り立った。
「アルバ!!」
「アルバースだ!!」
グアアアア!!!
三人はドラゴンの背中に跨り、しっかりと掴まった。
「目的地は遥か上空だ。振り落とされるなよ!」
アルバースは舞い上がった。
すると、また嫌味なやつが口を開きやがった。
「チィっのりづれぇ。ユーリィ!!なんでこんなド平民も連れて行くんだ!!これは勇者の問題だろ!!」
「んだと!?俺だって勇者ダモレだ!」
確かにヒロイン奪還イベントにしては関係値がまだ足りてない気もするが。
「セレスティアの天大使、ヨハネに顔が割れちまってる。ダモレは昨日、そいつと握手したんだ。勇者が連れ戻しに行かないとカッコつかないだろ。」
ヨハネが俺たちを試す機会をティナが作っちまったって訳か。
「クソっ。足引っ張るんじゃねえぞ!ザコ勇者が!」
「んだとコラ!上等だ!」
「大丈夫だダモレ。お前の保護者として俺も同行するんだ。」
ユーリィ…。トゥンク。
「甘ちゃんが。」
「テメェ!」
「大人しくしろお前ら!雲の中に突入するぞ!!しっかりと掴まれ!!」
「「オウッ!!」」
グアアアア!!!
雲に突入し、アルバースはグングン上昇して行く。テイクオフしてから、この一瞬でもうかなりの距離を進んだぞ。すると、雲の奥から微かに響く音が聞こえた。
ゴォォォォン……
絶望感のある音だ。
ユーリィが呟いた。
「ダモレ。テッドレッド王国が何故こんなにもセレスティアを恐れているのか、この旅できっと明確になる。その目で見て確かめるんだ。」
「あぁ。」
ドラゴンは雲のトンネルを突き破り、晴天の空へ出た。そして雲海を一望したその先に、
天空都市、セレスティアが見えた。




