十八話 凱旋
「これを着てくれ勇者の正装だ。」
駐屯地に戻り、ユーリィが持ってきたのは、白を基調とした勇者の正装だった。
「そして、これが勇者の剣。」
次に渡されたのは、一振りの剣。
「これは勇者のレガリアだ。」
最後に、仮面――レガリア。
なんか勇者のは特別感がある。
俺はそれらの着付けをティナに手伝ってもらい。髪もおでこを出してユーリィに整えてもらう。
「……うん、様になってる。」
ティナが呟いた。
「あぁ、様になってる。」
俺自身も思った。
そして俺は、デントを見る。
さっきまで俺を睨みつけていた男は、今は何も言わない。
「勇者デント!」
俺は震える手を握りしめた。
「ありがたく受け取らせてもらうぜ!」
「チッ」
俺、今から凱旋を歩くんだ!
ユーリィも黒い正装に着替え、駐屯地を後にし、テッドレッド王国に歩みを始める。
山が近づいてくるにつれて、うん、なんか再び不安になってきたぁ。
「怖え、大衆の目に晒されて射殺されたりしない?」
と呟くと副団長のアランが
「俺たちを誰だと思ってる。」
そして、前を歩く勇者一行は歩みを止め、ダモレに向き直った。
「大丈夫だ。俺たちは勇者を死なせない義務がある。いつでも後ろにいるから安心しろ。」
「「任せておけ!!」」
と一斉に胸を叩く。はははっ武装集団も味方につけたら頼もしいもんだぜ。
「そんな奴いたら殺してやんよ!」
「バラバラにしてやるよ!」
「俺はギッタギタだ!」
と飛び交う。少し血の気が多いが…。
さて、勇者一行が山の麓に差し掛かった頃。
ユーリィはイザベラさんのお弁当を食べていた。
「食べるか?」
「緊張で喉通らねーよ。」
日は真上に登っていた。ユーリィこの山どうすんだ?俺空飛べないよ。
「勇者の登場演出としてドラゴンを使う。これならダモレが浮遊魔法を使えないのもバレないだろう」
ユーリィが指笛を鳴らすと、上空からさっきの白いドラゴンが降りてきた。
グアアアアア!!
「頼んだぞホワイド。」
「ちょっと待てユーリィ、ホワイドってもしかしてコイツの名前か?」
「あぁ、ホワイトドラゴンだからホワイドだ!」
「お前のネーミングセンスはよぉ。もうちょっと考えてやれよ!」
「な、なんだと!?そんなに言うんだったらお前がつけてみろよダモレ。」
「…。アルバ、」
「アルバース。」
でどうだ。
グアアアアアアア!!!!
「なっ、ホワイドが喜んでる。」
「違うアルバースだ!!」
ユーリィと俺はアルバースに乗り込み。
「ダモレ、準備はいいか!」
「おう!」
ゆっくり空へと舞い上がった。
「いいかダモレ、凱旋は聖堂へ続く道だ。聖堂へ入る前にレガリアを付けて、入ったら礼拝。そしてそれが終わったら王宮で戴冠式だ。」
「歩くだけじゃなかったのかよ!」
「大丈夫、逐一俺が後ろで指示する。それに従っておけば成功だ。わからないことがあれば聞いていいが、極力勇者の威厳は崩すな。」
ドラゴンは王国を軸に、螺旋を描いて上昇していく。そのスピードはどんどん加速し、やがて王国の真上を横切った。
「うおおおおおおおおお!!!!!」
「ピューイ!!」
街から歓声が上がり、心臓が高鳴りはじめた。
まじか!まじか!あの中を歩くのか!
すると拡声魔法が響き渡った。
「勇者ダモレ並びに、勇者一行の帰還である!!」
「うおおおおおおおおおおおお!!!!」
「おいユーリィ!勇者ダモレで合ってんのかよ!」
「お前の本名でもないだろ?」
「何!?わかってたのかよ!!命名お前だぞ!ダモレって!」
「勇者の改名はよくあることだ。いいから前を見ろ!うっ気持ち悪い。」
「お前も緊張してるだろ!大丈夫かよ!」
ドラゴンが打ち上げられる祝砲の炸裂をヒラリヒラリとかわし、大通りのスタート地点に降り立つ。俺が地に足をつけると勇者一行の面々もその後ろに続いた。
「震えがとまらねぇ」
「大丈夫だ。そのまま先まで前に歩いていけ。」
「わかった。」
俺の凱旋は、遂に始まった。




