十五話 ドラゴン
俺は玄関の扉を開けて、庭に飛び出したその時。
グアアアア!!!
空からドラゴンが現れた。
グアアアア!!!
その鳴き声は本能的な恐怖を駆り立てる!
これはまじで終わった。そう悟りながら、迫り来るドラゴンを唖然と見つめることしかできない。
ドラゴン、ドラゴンだ。カッコ良すぎるフォルムに、そしてやっぱりデカすぎる。
全身を覆う白い鱗は陽の光を美しく反射して鈍く輝き、鋭い爪と巨大な牙が見える。翼を一度羽ばたかせるだけで、周囲の空気が大きく揺れていた。
まぁ、ドラゴンに食われるなら素晴らしい最期か。じゃあな、異世界。こんにちは、二回目の死。
目を開けると、ドラゴンの爪に服が釣られて空へ舞い上がっていた。
うおおおおおおおい!!!!またかよおおおお!!
ハッ、この感じはまさか、
「おーーい!ダモレ!おはよう!」
「やっぱりかユーリィ!!こらぁ!!」
ドラゴンの背中に乗っていたユーリィが、脚のあたりまで降りてきてヒョコっと顔を出した。
「早く助けやがれええ!!」
「まず、その籠を渡して!!中身崩れるよ!!」
「弁当より俺の心配しろこの野郎があ!!」
俺はユーリィに引っ張られ、ドラゴンの背中に乗っかった。
「いやぁ驚かせてすまない!!急いでたんだ!!」
「もっと他に方法あったろ!!死んだかと思ったわ!!何が人を救いたいんだ。だ!ボケ!」
「滅相もない!!」
「褒めてねぇよ!!」
「泣くなダモレ!」
「泣いてねぇよぉ!」
ドラゴンはテッドレッド王国を軸にして円を描くように旋回し始めた。風圧で顔を歪めながらユーリィが話しづらそうに話しかけてくる。
「ダモレ!移動している間に話しておくべきことがある!!見てくれ!!」
日はまだ朝の眩しさが残る。王国の時間は午前9時半頃だろうか。よく見ると王国の周りを取り巻くように無数のドラゴンが飛び回っている。昨日は一匹もいなかったのに!?
「お前はこの世界についてまだあまり知らないと言ったか!?」
「あぁ!全然知らない!!」
「良いかよく聞け!!俺たちが生きる今この時代にはな!!
天空世界!!地下世界!!地上世界の三つの世界が存在している!!そして俺たちが見てるこの世界はな、天空世界と地下世界、二つの世界に挟まれた、地上世界だ!!」
天空世界!地下世界!地上世界か!
風圧で喋りにくそうなユーリィの必死な声を、必死になって受け取る。
「テッドレッド王国が円柱形の山の山頂にあるのには意味がある!!地下世界から距離を取る為だ!!そして王国に人々が集まることによって魔力も集まる。すると地下世界の民族からは、簡単には侵略されなくなる!!つまり、
この地形は、地下世界からの侵略を防ぐための地形なんだ!!」
だからこんなところに王国があるのか!
「しかし、こんなところに王国があると天空世界からの侵略を受けやすくなる!!そこで活躍するのがドラゴンだ!!そう、ドラゴンはこの国の守護者!天空世界の侵略を牽制する者達なんだ!」
グアアアア!!!!
そうか、ドラゴンは敵ではなく、地上世界の住人と共生しているんだ!
「そして今日の夕方頃!天空世界の都市セレスティアがこのテッドレッド王国上空を横切る周期になっている!!」
天空にあるから都市ごと移動しているということか?
「だから今日、ドラゴンが全動員して国を守ってる。そして更に午後、凱旋パレードである人を歩かせることで、セレスティアにテッドレッド王国の士気と威厳を見せつけるんだ!!」
「なんかわからなくなってきた!!ある人って!?」
「勇者だ!!今日、勇者がテッドレッドに帰ってくる!!俺たちは今、その勇者の元へ向かってる途中だ!!」
「なんで!!?なんかわっかんない!!」
グアアアア!!!
ドラゴンが急降下し、テッドレッド王国の見える高台の駐屯地に降り立った。
「ユーリィ!」
「ティナ!元気か!」
「元気だよユーリィ!そんなことよりデントが!」
「あぁ、わかってる。久しぶりだな、デント。…。」
え、何この気まずい空気。
駐屯地には旅人の集団がいた。やけに身なりがしっかりした人もいれば、そうでない人もいる。
「ユーリィ、もしかしてここが?」
「あぁ、勇者一行の駐屯地だ。」
「勇者は?」
「……。」
デント…って、まじか…。
そこには勇者がいた。勇者は明らかに、そうでない人だった。




