4
「あぁそれはね。あれは嘘ではないんだけど特に大した頼みはないの。ただ碧が仕事で疲れているって聞いて、じゃあせっかくだし故郷に帰って疲れを癒してもらおうかと思って。ほら、お盆だしね。」
嘘ではない、嘘ではないが責められるかもしれないと思い桜木は下を向いてしまう。その顔は日傘のおかげで成瀬には見えていなかったが。
「なんだ、そうだったらそうと言ってくれれば良かったのに。俺もお盆は実家でゆっくりしたいと思って来たし、頼みもついでって言ったら悪いけどそう言う気持ちだったから。ないなら良かった」
想像してた言葉と違って安心し、顔を上げた桜木だったがすぐに成瀬を覗き込んでにやけ顔で確かめる。
「ついでってなに?」
「い、いやごめん!ほ、ほらそうやってすぐ人の揚げ足をすぐとる」
成瀬は咄嗟に話の論点を変える。
「碧はそうやっていつも論点変えるじゃん!」
・・・バレていた。
少し風が強くなる。それに乗った花粉につられたのか一匹のミツバチが空中散歩していた。
気づくと二人の横には川が流れていた。一つ先の橋を渡ってまっすぐいけば成瀬の家が見える。
「じゃあさ、このお盆の間だけだったら頼みごとなんでも聞いてあげるよ。それでいいだろ。」
「あー、また論点変えた。まあ、いいや。そっか・・・ふむふむ・・・頼みごと、なんでも聞いてくれるのか。」
成瀬は嫌な予感がした。風の知らせかそれとも虫の知らせなのか。そしてその予感は的中した。
桜木は少し前に出て振り返って言った。
「じゃあ、私とデートしてくれない?このお盆中」
一瞬成瀬は驚いた。
「え?デートって・・・・・・しかもお盆中って供養とかいろいろあるし」
成瀬は遠回しで断ろうとするが、
「だから時間が空いた時でいいよ。それになんでも聞くって言ったよね」
こういうことになると、意地でも聞かなくなる。変わっただけなのは容姿だけかと今更呆れる。
「分かった。用事済ませたらまた連絡する」
もう橋の上に来ていたのでそう言って成瀬は話を切り上げようと考えたが、
「絶対だよ。後、案内して上げたの感謝してよね」
成瀬の考えを察したのか桜木はそう杭を刺した。
「分かってるって。あぁ道もすっかり忘れてたしそれは感謝する。じゃあなまた」
もうこれ以上逃げようとするのは無理だと思い素直に返事することにした。
手を振り桜木に背を向ける。
「うん。じゃあ碧のお母さんにもよろしくね」
そう返事をすると桜木も成瀬に背を向け自分の家に向かう。その時桜木は顔を真っ赤にしていた。自分でも言った時驚いてしまったが、まさかあんなこと言ってしまうとは。体温が熱いのも夏の暑さのせいだけではなかった。




