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「なにしてんの」
背後からそう女性の声が聞こえ伸ばしていた腕を引っ込め立ち上がる。振り向くと面影があるような無いような女性が呆れた顔をこちらに向けている。
「成瀬?だよね。久しぶりの再会がまさかこんな形になるとは思わなかった」
女性は、いや桜木佐奈はそう言って笑みを浮かべた。
「佐奈、久しぶり。ごめんみっともないとこ見せてしまって」成瀬もそう言って笑う。
しばらくの沈黙が流れた。そして桜木が言葉を繋げた。
「いま、最初誰か気づいてなかったでしょ。はは・・・それもそっか。髪もだいぶ伸びたし、肌もだいぶ白くなったしね。でも安心して、病気じゃないよ。ただ日焼けしてないだけ」
「いや顔は分かってた。ただ、そう、雰囲気が前と随分変わってたから・・・・・・。5年前はまだ日焼けとかしてたじゃないか」
成瀬は、はじめ本当に気づいていなかった。桜木は『病気』とまではいかないが本当に肌が白かったのだ。
「5年前はまだ部活とかもしてたし、まあ、多少そうなるのも分かってた。______ねえ、立ち話もなんだし、碧ん家まで行こうよ」
「それ俺のセリフなんだが・・・・・・ん、まあそうだな。でも、その前に100円だけとらせてくれ」
そう言って成瀬はもう一度自販機の下に手を伸ばす。
はっきりいってこの光景は桜木にとっては無様に見えただろう。
「私も何か飲もうかな」
桜木はお金を入れてほうじ茶のボタンを押した。
「取れた!」成瀬は立ち上がって自販機にもう一度入れ直して待ち望んでいたかの様にオレンジの炭酸ジュースのボタンを押した。そして桜木の方に目をやると、
「なんだ佐奈はまだほうじ茶一択なんだな」と呆れた声でそう言った。
「碧だって大人になって炭酸オレンジジュースって、子供じゃないんだから。それに夏はやっぱりほうじ茶でしょ」
駅のホームには、もういなくなっていると思っていたセミの声が静かに鳴り響いていた。そして女性の嬉しそうな声と爽やかな炭酸の音が響いた。
10分後、たわいも無い話を終え、二人は成瀬の家に向かっていた。二人はかなり打ち解けていた。その間は成瀬がこの町を離れてからの町であったことや、誰々が結婚したとかそんな話をした。ほとんどが名前を聞いて、そんなやつもいたか、と思うばかりだったが自分の旧友が結婚していると聞くとまだ自分があのことをひきずっているのを情けなく思う。
桜木が喋るのを終えたところで成瀬が尋ねた。
「なあ、佐奈。頼みって結局なんだったんだ?あの時聞いても来てから言うの一点張りだったし」
そう、成瀬は実のところ頼みの具体的な内容を聞いていなかった。
「あぁそれはね_____」




