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モノクロームの花  作者: 水無月波瑠
プロローグ
2/12

 海辺の防波堤にて強い日差しを受けている白い花の様な日傘の下には、長い黒髮で白い肌の女性が歩いていた。

 今日久しぶりにあいつが帰ってくる。そう思うだけで懐かしく心がくすぐられる感じがして笑みがこぼれた。元気にしているだろうか、いやしてないだろうな。そう思ったからわざわざ嘘までついてここまで来てもらおうとしたのだ。

 昼頃に着くと言っていたからまだ時間はある。駅に行くまで遠回りしていこうと女性は思った。駅にはこの防波堤沿いをまっすぐ歩いていけば10分ほどでつくのだが今日は遠回りしていきたいそんな気分だった。

 「よっと」

 少しジャンプして防波堤を降りた。並んでいる家の間を見る。ここからどの路地裏を通っても行き止まりはなく実は何処へでも抜けることができる。それはこの町でかくれんぼ、あるいはおにごっこをした人ならわからない人は少ない。

 路地裏は日陰が多いから日傘をさす必要もなかった。歩きながら考える。この町の魅力は人口こそ少ないが何といっても地形が面白いことだろう。今歩いているところの様に路地裏は多いし、自然がありふれている。海だってあるし山だってある。そして子供の頃はよくこの町中を走り回ったものだ。穏やかな春の日や暑い夏の日も、少し肌寒くなる秋、そして人恋しくなった冬だって私はこの街と過ごしてきた。だからと言っても過言じゃないが私はこの町で知らない場所なんてないのではないのだろうか。

 少ししたら行き止まりに見えるところが出てきた。だが女性は笑って「ここはこうやっていくこともできるんだなぁ」と言ってごくわずかな隙間にある道を体を半身にして進んでいく。

 ・・・・・・走り回ったといえば、高2のあの夏の日も一日中走り回った。ふとした時に思い出してしまう暑い夏。いまとなっては普通となってしまったのだろうがあの夏のあの日は記録的猛暑を記録した夏だった。その日は私の友人、そしてその友人を好きな人のために無我夢中で走った。懐かしくてどこか寂しくなる。

 あの日からというもの、日差しが苦手になった。熱中症で倒れたのだ。高校生ながら死を目の前にすると、その原因に対して恐怖心を抱いた。大学生まではその恐怖心も一時のものだろうと思っていたが今は日陰を好むようになっていた。もちろん部屋に引きこもっているわけにもいかないので日傘を差して仕事に向かっていたりする。

 仕事も研究者なんて昔の自分からは想像もできない仕事についている。成瀬は一流の会社に勤めているらしいけど。まだ成瀬と会って話を聞いたりする友人から話を聞くといろいろと苦労しているらしい。まあ社会人なんてみんなそんなものだろうけど。

 黒猫が目の前を通り桜木はハッとした。考え事をすると止まらなくなってしまう、そしてネガティブ思考になってしまうのが私の悪い癖だ。と再認識する。

 久しぶりに入った路地裏では、子供のころのようなわくわくした気持ちにはならなかった。路地裏を早く抜けて駅に向かおう、成瀬もちょうど着く頃だろう。というか呼び出しておいて待たせてしまうのも申し訳ない。

 少し小走りで行ったところまだ電車は来ていなかった、5分ほど待つと遠くから電車がゆっくりと近づいて来た。中からやつれた男性が一人でてくる。思わず女性は隠れてしまっていた。もう5年も会っていないのだ、やはり少しは緊張してまう。気持ちを落ち着けようと深呼吸したところで、話しかけようとする。一歩前にでて息を吸い込み、

 「成瀬?久しぶ_____」

 緊張しながらも話しかけた女性の努力もむなしく、そこには自販機の下に手を伸ばして必死に何かを取ろうとしている小学生の様な成瀬がいた。

 女性は緊張も忘れ、呆れた声でただ一言言い放った。

 「なにしてんの」


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