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37話 これから

 大進行を食い止めた翌日。

 因みに昨日はというと、フィムはミリアーナの話に丸1日付き合っていた。娼館ギルドマスターも意外と暇なのだ。タクは宿屋から荷物を引っ張って来て、ダレイスの屋敷に泊まった。



「さて、昨日の連戦で俺たちの問題点がかなり見つかったからな。今日はそれをどうにかしよう」

「……武器とか?」

「正解だ。いくら慣れているからってナイフで戦うのは馬鹿だった。いい感じに報酬も貰ったし、フィムの細剣レイピア2本とあのクソ高い刀を買おうと思う」



 そんなことを話しながらメルテリア通りを歩く2人。

 タクは軽く言っているが、実を言うと現在はかなりヤバイ状態だったりする。何故なら、シトラスと同クラスの刃はどう考えてもナイフでは受けきれないし、オーガの拳によって虎の子の拳銃が1丁破壊されてしまったからだ。

 生かして逃がしたのだから、タクの情報は確実に何処かに漏れているはずで、敵対するならば次はシトラス以上の使い手が襲撃してくる可能性が高い。それがどれだけ存在するのかは分からないが。



「いらっしゃいませー!」



 店に入ると以前と変わらず爽やかな青年が対応してくれた。気になってタクは店内を見回してみるが――客は誰もいない。実は赤字を叩き出しているのか? と、かなり失礼なことを考えつつもフィムの細剣を選んでほしいと頼む。

 それを聞くや否や喜び勇んで店の奥へとフィムを連れて行く青年。それを見てやっぱり赤字か……? とか考えてしまったが、前に買ったフィムのナイフは結構品質が良かったので収入は関係ないかと無理やり納得した。



「…これなぁ……5億円とかどこにそんな価値があるのやら……」



 購入することはすでに決定事項だが、いくら見ても普通の日本刀にしか見えない物に5億も出すのはどうなのかと真剣に悩みだしたタク。ぶっちゃけこの店にある武器なら全部扱えるから、頑丈な大剣とか斧槍でもいいんじゃないかと早くも妥協し始めている。



(まあ無駄にある資産から考えればこの刀1本くらいどうってことないんだけどな)



 朝早くに輪切りにしたG・オーガをダレイスに納品済みだ。ビルと同等サイズの鬼の肉はこの街では消費しきれない量があった。ただでさえハイ・オーガの肉で過飽和気味だったのに、そこへさらに肉である。冒険者ですら愚痴るほどに毎日毎日肉料理が出てくる状態になっている。



「………………まぁ、後々のことを考えたらこれの方がいいか」



 熟考すること約20秒。矛盾している気がするが、タクの思考スピードは音速の弾丸を正確に処理する程度には速いので、傍目から見ても考え込んでいるタクというのは珍しい。つまりそれだけ刀の値段が法外だということでもあるのだが。



「……マスター」

「うん? もう選び終わったのか?」

「……ん。これと、これ」



 フィムが差し出した細剣はどちらも銀色の刃で、結構ありきたりなものだった。柄が金か黒かの違いはあるが、それ以外は全く同じものだ。質実剛健を体現している。

 徐々にだが、好みや性格がタクに近づいている気がする。タクも選ぶとしたら余計な装飾よりも実用性を求めるだろう。



「はぁ……すいません。これください」

「……は? え? その刀ですか?」



 買える訳ないでしょ? 的な視線にタクはイラッとした。



「それ以外に何があるんだよ。早くしろ」

「いや、でも……」



 煮え切らない態度を取る青年に対して、タクは懐から取り出した半白金貨をコイントスの要領で射出。それは見事に青年の眼球に直撃した。



「ほぎゃあ!?」

「ほら、金はあるんだよ。さっさと動け。じゃないとめり込むまで当て続けるぞ」

「ひゃい! すぐに手続きをします!!」



 青年は可哀想なほどに震えながらもカウンターの裏に入って何かゴソゴソと漁っている。



「こ、これにサインをおにぇ、お願いします!」

「はいはい……これでいいのか? あ、それとこれ、丁度5枚だからな?」

「はい! これであのつるぎはお客様の物です! ありがとうございました!!」

「なんで追い出す気満々になってんだよ……」



 よほどイラついた状態のタクが怖かったらしい。青年はタクに刀を手渡すと綺麗な直角の礼をして帰宅を促す。フィムは先にお小遣いで細剣2本を購入していたようなので、釈然としないものを感じながら武器屋を後にした。




~~~~~~~~~~




「……マスター」

「なんだ?」



 帰り道。まあ帰ると言っても向かう先はダレイスの屋敷なわけだが。



「……これからどうするの?」

「とりあえず、この街にはもう用はないから王都にでも向かおうと思ってる。けどなぁ……」

「……?」

「なんか大陸に穴が開いてて、それが広がり続けているとか何とか言ってたが……勇者だけで攻略できるとは思えないんだよなぁ……」



 勇者と一緒に軍隊とか高ランクの冒険者達も参加するのだろうが、それでもタクは何となくだが不可能だと感じていた。



「ま、攻略したらしたで他の問題が出てきそうだけどな」



 例えば戦争の再発とか、と呟く。

 今は世界規模の災害が目の前にあるので多少は・・・纏まっているが、それが無くなれば確実に別の問題が浮上する。人間なんてそんなものだと嫌なほど身に染みているタクは明るい未来なんて想像できなかった。とことんまで捻くれた奴である。



「話を戻すか。これからの行動方針だが、何人か仲間を集めて『世界の大穴』を攻略してしまおうと考えている。どうせいつか巻き込まれるだろうし」

「……ん、分かった」

「そのためにもアイテムボックス的なものは完成させないとな……」



 こんな日常の1コマの普通の会話が、世界を揺るがす大迷宮vs色々と狂ってる暗殺者の対決を決めてしまったのだった。




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