35話 終結の後
激震と爆音で終わった大進行。街の人間がそれの後処理をしている中、タクは娼館ギルドまで戻ってきていた。
「……なんか凄い揺れたりしたんだけど、一体何をしたの?」
「大進行をサクッと終わらせてきたんですよ。それよりフィムは?」
「フィムちゃんなら――」
ガチャ
ミリアーナがそこまで言ったところで、隣の部屋に続くドアが開いた。
「――ますたぁ……?」
「ん? なんだ起きてたのか?」
そこから出てきたのはフィムだった。なんか物凄く眠そうだ。
「……いっしょにねたい」
「おかしいな…既視感か? 前にもこんなことがあったよな? 割と最近に」
「……はやく」
「えっと……すいません、ミリアーナさん」
「気にしなくていいわよ。そっちの部屋にはベッドもあるから少し休むと良いわ」
「ありがとうございます」
それだけ言ってフィムが出てきたドアを開けて中に入る。普通に質素な部屋だった。宿と大した差が無い。しかしベッドは当たり前のように1つしかなかった。来客用の部屋ではないのだから仕方がないが。
「もう寝よう。俺もさすがに疲れた」
「……ん。おやすみ……」
「ああ」
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翌朝。タクはやっぱり違和感に襲われて疲れているのに早朝に目が覚めた。寝たのが3時を過ぎていたので、2~3時間しか寝ていないことになる。
ちょっとゲンナリしながらも、隣に寝ているフィムに目を向けると――
「こりゃまた美人になったな……」
――17~8歳くらいにまで成長したフィムがいた。そのフィムが身じろぎすると、胸元から微かにビィィ……と嫌な音がした。タクもそれを聞いて凄く嫌な予感がしたが、一応原因だけはチェックしておくことにする。
「………………新しい服を買わなきゃな……」
タクはそれだけを呟いて部屋から出て行ってしまった。
それは何故か? 原因は先ほど嫌な音がした胸元だった。
そこには……成長した胸に耐え切れず、僅かに、ほんの少しだけではあるが裂け目が入っていた。どうやら大量の魔物と戦ったので傷んでいたらしい。正確には《レイグニス》の熱で傷んだのだがそれはどうでもいい。
さすがにこれは急いだ方が良さそうだと、タクはそう判断したのだった。
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「……来てくれたか。疲れているだろうに済まないな」
「いえ。俺もそろそろこの世界のことについて色々と聞きたかったので」
「そう言ってくれると有難い」
またまたダレイスの屋敷に呼ばれたタク。ここに来る前にミリアーナへフィム用の服を渡して、下着などを選んであげてほしいと頼んできた。今までは全てタクがやっていたが、今日からはそういう訳にもいかないだろう。
実際は、フィムは忘れがちだが奴隷なので気にする必要は無かったりする。まぁ最終的には本人(主)の気持ち次第だが。
「まずは報酬の件だが、何故か住民や冒険者達から「あの子に渡してくれ」と募金があった。それが大体銀貨9枚といったところだ。これはフィム君への報酬になるな」
「あいつは頑張りましたからね。俺も命を救われましたし」
「……君が死にかけたというのは本当のことだったのか。一体何と戦ったんだ?」
「…カイルの私兵団とギガンテック・オーガです。連戦だったのでオーガに後れを取りました」
シトラスのことは隠すつもりのようだ。言っても新たな問題にしかならないのでその判断は正しい。
「あれと戦ったのか。報告にもそれらしき巨人がいたとあったが……君が仕留めてくれいたんだな。感謝する」
「いえ、あれはフィムでも勝てませんでしたからね。先端が音速を超えた岩塊とか死ぬかと思いましたよ。後で運んで来ようかと思っていますが、どうしますか?」
「そう、だな……よし。では白金貨2枚で買い取ろう」
「現物を見てから決めた方がいいと思いますが。もしかしたら魔物に食い荒らされているかもしれませんし」
「いや、どんなに酷い状態でも買い取る。もし高品質だったらさらに上乗せしてもいい」
その言葉を訝しむタク。ハイ・オーガの時とは正反対の対応なのだからそれも仕方ない。あの時は金貨8枚で売りつけたが、実際は半白金貨2枚でも利益が出るほどに良質なものだったのだ。それを今回は最初から白金貨2枚(20億円相当)で買うと言う。疑わない方がおかしいだろう。
「そもそも個人でそこまでの金額を出せるものなんですか?」
「一時的に借金が膨らむだけだ」
「……まあ、それでいいならいいんですけど……」
どうやら方々に借りるらしい。こうして見るとダレイスはあまり貴族っぽくない性格のようだ。タクもそれが気になったが今は他に聞きたいことがあるのでここは流す。
「あとは防衛への参加と、それの貢献度に対する報酬だな。こちらは半金貨4枚といったところか」
「いや、そんなにいらないですよ。ただの八つ当たりだったので。代わりと言ってはなんですが、あの斬馬刀を貰えませんかね?」
「ザンバトウ?」
「あー……ギガンテック・オーガが持っていた武器のことです」
「あれのことか。ふむ……まあ、問題ないな。正直に言うとメルテリアの人員では運ぶことすら出来ないらしいからな」
大体150人が斬馬刀を動かそうとしたらしいのだが、重い鉱物でも含まれているのか何なのか、とにかく動かなかったらしい。
タクも怒りに任せて全力の身体強化を施していたから持てたが、その重量には驚いたものだ。1人で「なんだこれオスミウムでも含んでんのか……?」とぼやいていた。
余談だが、この斬馬刀は自重だけで地面にめり込むほどに重い。あのギガンテック・オーガやタクでさえも遠心力を利用して振り回すしかなかったのだから、その重さは推して知るべし。
「これでこちらの話は終わりだ」
「そうですか。ではいくつか質問があります」
メルテリアに来てから早10日。やっとのことで世界情勢やら何やらを聞くことが出来るようになったタクだった――
ちなみにオスミウムとは鉄の約3倍の比重を誇る貴金属です。
もちろん斬馬刀にこれは含まれていません。




