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22話 新魔法

 フィムの過去の一片を聞いた翌日。

 今日もタクは日が昇っていない薄暗い時間にフィムを抱えて空を走って森の前まで来ていた。昨日よりも早く到着したが、それは起伏のある地面と何もない空中の差の結果だろう。



「よーし、まずは朝練だな。魔法が便利なのは身に染みたし」



 タクは身体の周囲30㎝という限られた範囲でしか魔法を使うことが出来ないが、それでも空中を足場に変化させることは十分な利便性があった。それ以外にも、速度の操作は凶悪と言っても過言ではない性能だし、試しに使ってみた〔癒〕はまさしくチートだった。


 まあどれもこれも消費魔力がハンパないのでタクにしか扱えないのだが。ギリギリ勇者達が及第点と言えば、どれほどの魔力を必要とするかはお分かりになるだろう。


 そう考えると〔癒〕を持っていて、さらに使えるというフィムがどれだけぶっ飛んでいるのかも分かる。タクは自分と比較してフィムの魔力量は40000ほどだと予想していた。だが現時点でも増え続けているので、近い将来自分を超えるだろうとも思っている。



「さて、そろそろ……とは言っても2日目だが、アイテムボックス的なものを使えるようにした方がいいな。昨日は空間に穴を開けるとこまでは上手くいったんだけどなぁ……吸い込まれそうになって焦ったっけ……」



 遠い目をするタク。実は昨日の朝、空間に穴を開けることに成功したのだが、その穴がただ1つの掃除機ばりの吸引力でもってタクを吸い込もうとしたのだ。その時は魔力を遮断することで穴を閉じられたから良かったものの、あと1秒長く出していたら近くで寝ているフィムが吸い込まれていた。そのこともあって、タクは心の中でこっそりと「こいつには優しくしよう」と思っていたりするのだが、それはまた別の話だ。



「だけどなぁ……なんで吸い込もうとするのかすら分からないしなぁ……分からないことを解決なんて不可能だろ」



 新たな問題に唸るタクであった。




~~~~~~~~~~




「フィム。今日こそは森に入るぞ」

「……ん!」

「というわけで背中に乗れ。落ちるなよ?」

「……ん、しょ」

「じゃあ行きますか!」

「……おー」



 何とも気の抜ける緩い会話だが当人達は至ってマジメである。というか逆にこいつらが堅苦しい会話を繰り広げる光景なんて想像すらできない。タクが故意に場を緩くしているというのもあるが。



「大進行ってことは魔物が溢れているってことだよな」

「……ますた。あっちにいっぱい」

「うん? ……おおぅ……空中から偵察は正解だったな。軽く見ても2万はいるぞ……」

「……ますた。なんかとんでくる」

「あぁ? ……何あれ……ケプテコラン? 変な名前だな」

「……? ますた、しってるの?」

「いや、初めて見た。眼を魔力で強化すると名前が視えるんだよ」



 フィムが指差した先にいる翼竜っぽい何かを見て名前を言い当てるタク。実はこれが森の中でやっていた余計なことの1つだ。

 タクは魔力を扱えるようになってからは、その膨大な魔力量を活かして、四六時中魔力で遊んでいた・・・・・。そうしている最中に、特に何かを考えたわけでもなく、眼に魔力を集めたことがあった。その時に見えた物はタクに少なくない衝撃を与えたのだ。

 それは“注視したものの名称が分かる”というものだった。原理としてはステータスプレートと同じだ。魔力に記録された情報を視ているだけなのである。だから5mのゴリラっぽいやつも猿だと分かっていたのだ。因みにあいつはモンク・モンキーという。



「面倒だな。1匹しかいないが……フィム、撃ち落とせるか?」

「……ん…《レイグニス》」



 一条の閃光が翼竜ケプテコランの頭から尾までを貫いた。もちろん即死したのでそのまま落ちて行くのだが、そうなると森にいる魔物たちが騒がしくなる。だからタクが一瞬で近づいて(フィムが落ちないように気を付けるのは当たり前)空間に穴を開けて回収……というか吸引する。



「おぉ…ダイソ〇を上回る吸引力だな。見た感じ片翼だけで3mはあったんだけど。つかフィムの魔法が強すぎるだろ。これじゃ俺いらなくね?」

「……むぅ…ますた、たいせつ!」

「分かった。分かったから耳を引っ張るな。取れちゃうから」



 フィムが使ったのは〔光〕と〔焔〕の複合魔法《レイグニス》。

 タクが考案したもので、絶対的な速度と貫通力、さらには比類ない射程距離を誇っている戦略級の兵器になりかねない魔法だ。

 おそらく〔光〕だけでもいいのでは? と思う方もいるかもしれないが、それは不可能だった。なんと〔光〕属性だけでは岩にすら傷一つ付けることが出来なかったのだ。

 その結果から「アンデッドに効果大」というのはアンデッドに“のみ”効果大なのではないかとタクは推測している。〔光〕で速度を、〔焔〕で威力を出すしかなかったとも言えるが。



「しかし、どうするか……森を焼いたらクィトスとの戦争になるだろうし……かと言って単純に攻め込んだら森から溢れ出した魔物がメルテリアに侵略しそうだし……」

「……ますた」

「なんだ?」

「……これ、ひかってる」

「は? ステータスプレートが?」



 見れば本当に仄かに光っているではないか。今ここで言う必要があったかどうかはともかく、タクもこれがどういう意味なのか興味が湧いてきてしまった。



「ちょっと見せてみろ」

「……ん」

「お? レベルアップだってよ。一気に7まで上がってるぞ」

「……やった」



 どうやら光っていたのはレベルアップを知らせる機能だったらしい。随分と多機能な板である。



「そっちも考えないといけないんだよな。でもレベルのために殺すのもなぁ……」

「……おいしくたべる」

「まあそれならいいんだけどな……今回のは次元の彼方に消えたけど」



 どんな状況でも食べ物最優先なフィムだった。



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