表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
46/62

よくしゃべる隼人、あまりしゃべらない詩織

「あの後」

 と、隼人が言った。

「詩織に見られてたって分かってすぐに追おうとしたんだけどさ、九条の奴がなかなか離してくれなくてな」

「うん」

「だからあと追うのが遅くなっちまって、一度は詩織を見失っちまったんだ。それでようやく見つけた時、詩織はあのトンネルの方向に歩いててさ……」

 隼人の眉間に深いしわが刻まれる。

「うん」

 私が再度促すが、隼人は中々続きを話そうとはしない。

「隼人?」

「実はな――」

 隼人は私と目を合わそうとはせず、声も心なしか小さくなった。

「俺見てたんだ、詩織が泣いてるの」

 隼人はボソボソと、聞こえるか聞こえないかの声で言った。私は今泣いている訳でもないのに、目元を拭った。

「そう、なんだ」

 私の言葉に隼人はコクリとうなずいた。

「その時な、詩織の顔が笑顔から一瞬で驚きに変わってたの思い出して、あぁ俺のせいなんだ、って思った」

 隼人はそこで一息つくと、壊れものにでも触るかのような優しい手つきで私の髪を撫でた。

「ごめん」

「ううん、気にしないで。だって誤解だったんでしょ?」

「ホントごめん、そうじゃないんだ。本当だったらさ、泣いてる詩織を見たら、俺も悲しくなるはずなんだ。実際、今まではそうだったし。――なのに、さっきは泣いてる詩織を見て、悪いと思ってる気持ちももちろんあるんだけどな……少しだけ、ホントに少しだけだぜ? 詩織が俺の事で泣いてるのが、嬉しかったんだ」

「え?」

「今まで詩織の事を好きだって言えなかったのは、詩織が俺と同じ気持ちじゃなくて、言ったら、幼馴染っていう――なんて言うのかな、最終ラインの様な最低限の、でも絶対的な――絆までも消えちまいそうな気がしてたからなんだ。でも詩織が泣いてるって事はさ、つまりは、詩織も同じ気持ちだったって事だろ? それがさ、すごく嬉しかったっつーか、安心したっつーか……」

 段々と小さくなってい隼人の声。私は嬉しくて、泣きながら笑っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ