両想い
「それって……」
「詩織が好きだって言ってんだよ!」
隼人の語尾が強くなる。長年の経験からそれが照れ隠しであると分かった。
隼人の気持ちを聞くことができ、私はようやく自然に笑えた。
「私も」
そう言いながら、突進とも取れる勢いで抱きつくと、私の予想に反してしっかりと抱きとめられた。
「隼人の事が好きで、好きで、悲しかった」
「は?」
「すずらんちゃんと付き合い始めたのかと思って、悲しかった」
「だからあれは、」
「うん。分かってるよ。でも、さっきまで本当に――」
言いながら先程までの事を思い出す。
すると、とんでもないことに気が付いた。
私は、先程突進して行ったのを巻き戻すかのように勢いよく隼人から離れた。
「詩織?」
何が何だか分からないというようにポカーンとしている隼人を無視して、私はあたりを見回す。
「隼人! さっき怪しい人見なかった?」
私がなんで車道に飛び出したのかと言えば、追いかけられていたからだ。
見回せど、人影らしきものは見当たらない。
「さっきね、後ろから付けてくる人がいて、すんごく怖かったんだ」
「え……?」
「トンネルのところで気が付いたんだけど、私が走り出したら、走って追いかけて来たの」
「――あのさ」
「ん?」
「怒るなよ?」
何故かバツが悪そうな隼人、人をからかうのが趣味の様な彼にしては、珍しいセリフだった。
「それ……俺だよ」
「はぁ?」




