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恋心

 放課後、グラウンドの方に目をやると、いつも通り隼人の姿があった。

 ――いつも通り。

 私は一人で顔を赤くした。

(なんで気が付かなかったんだろう)

 こんなにも毎日目で追っていたというのに。

 考えてみると、隼人を目で追っていたのは部活の時だけじゃない。教室で授業を受けてる時も、昼休みに友達をお弁当を食べてる時も、いつも隼人が何しているのかは気にかけていた。

 それも無意識に。

 生き物が呼吸をするのを意識しないのと同じように、当たり前のように隼人を見ていた。

 ピーッという笛の音が聞こえると、サッカー部員が一斉に走るのを止め1つの方向に向かって歩き出した。きっと休憩の時間だ。

 グラウンドからベンチに向かう人影が多い中、ベンチからグラウンドに向かう人影が一つ。すずらんちゃんだ。

 ここからだとよく見えないけど、飲み物やタオルを部員の一人一人に手渡ししているみたいだ。

 そして最後に隼人の元へと駆け寄っていった。

 もちろん遠すぎて声なんか聞こえない。でもすずらんちゃんがとびっきりの笑顔を向けているのは分かる。

 すずらんちゃんがあんな幸せそうに笑うのが隼人の前だけだってなんで今まで気が付かなかったのか不思議なくらい、特別な笑顔だった。

 お昼休みのことで、すずらんちゃんは隼人が好きなのだと分かった。知ってしまった。そして私が知っている事をすずらんちゃんは認識している。

 もしも、今さら私も隼人の事が好きだと言い出したらどうだろう。幼馴染を取られたくないという幼稚な独占欲だと思われるだろうか? それともすずらんちゃんの恋をあえて邪魔する嫌な奴だと思うだろうか?

 そういうわけじゃないと知っているのは私だけ。なんて言い訳してもすずらんちゃんに信じてもらえるはずがない。

 いや――そもそもすずらんちゃんに信じてもらう必要なんてないのかもしれない。かもしれない、じゃない。絶対に、ない。

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