↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【婚約破棄】「冷酷な悪役令嬢」と蔑まれた私ですが、必死に怒鳴る王子を「あらあら」と見守っていたら溺愛が始まりました  作者: もも子


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
20/29

王子の自滅と、崩れ去る砂の城

カトリーナが学園から完全に身を引いてから、二週間が経過した。


王立学園の生徒会室は、かつてない荒涼とした雰囲気に包まれていた。


「……どういうことだ、レオン! なぜ今期の予算申請が差し戻されている!? これでは今週末の懇親会が開けないではないか!」


書類が乱雑に散らばった豪華なデスクを叩き、リュシアン王子が怒号を響かせる。

しかし、その声には以前のような絶対的な威圧感はなく、どこか追いつめられた者の焦りが混じっていた。


王子の傍らに立つ側近のレオンは、書類の束を抱えたまま、冷ややかと言ってもいいほど平静な顔で深々と一礼した。


「殿下。予算申請書の記述に多数の不備があり、生徒会顧問および会計監査の承認が得られなかったためです。……これまでの予算調整および申請書類の作成は、すべてカトリーナ様が事前の確認と修正を行われた上で提出されておりました」


「なっ……! あんな性悪女の手など借りずとも、マリエラが準備したはずだぞ!」


名指しされたマリエラは、王子の後ろでビクッと肩を揺らし、青ざめた顔で伏し目になった。


「ひ、ひぃ……っ。で、殿下、私はただ、前回の書類を真似て金額を書いただけですの……。アレルギーの有無や、参加される他国の留学生の方々への宗教配慮など……そのような細かい規定があるなんて存じ上げなくて……」


「マリエラ……お前、何も確認していなかったのか!?」


「だって、そんな難しいこと私には分かりませんわ! 殿下が『マリエラはそこにいて微笑んでいるだけでいい』とおっしゃったから……!」


二人の不毛な責め合いを、レオンはただ静かに見つめていた。


(カトリーナ様のおっしゃった通りだ……)


レオンの脳裏に、事務棟でカトリーナが優しく語りかけてくれた言葉が蘇る。


『周りが何でも先回りしてお世話をしてあげることが、本当にその人のためになるのかしら? 自分自身で自分の行動の結果に向き合って、初めて大人への第一歩が踏み出せるのですから』


レオンは余計な手出しをせず、カトリーナの教えに従って「自分の権限と責任の境界線」をきっちりと引いた。

その結果、王子とマリエラがこれまでどれほどカトリーナの細やかな気配りと事務能力に依存していたかが、誰の目にも明らかな形で露呈したのだ。


「レオン! お前が今すぐ書類を作り直せ! 今夜中にだ!」


「申し訳ございません、殿下」


レオンは淡々と、しかし毅然とした態度で首を振った。


「私は筆頭側近として、王家から与えられた公務の補佐で手一杯でございます。学園のサロンおよび生徒会イベントの補佐は、殿下ご自身が『マリエラ嬢と共に二人で行う』とお宣言された領域。私の権限を超えて代行することは、学園の規則上も認められません」


「お前……っ、私に逆らうつもりか!?」


「いいえ。殿下のお立場と規則を正しくお守りしているだけでございます」


完璧な論理と正論。

言い返せなくなったリュシアン王子は、歯ギシリをしながら拳を握りしめることしかできなかった。


その日の放課後、サロンの運営が完全に行き詰まり、予定されていた茶会が中止になったというニュースは、あっという間に学園中に広まった。


「ねえ、聞いた? 今日の茶会、準備不足で急にキャンセルになったんですって」

「マリエラ様が仕切るようになってから、サロンの雰囲気も最悪だし、手際も悪すぎるわ……」

「カトリーナ様がいらっしゃった頃は、いつも完璧で、私たちの好みまで気遣ってくださっていたのに……」


生徒たちの間では、失われて初めて気づいたカトリーナの「圧倒的な有能さと温かさ」への評価が爆発的に高まっていた。


一方その頃、当のカトリーナは、公爵家の穏やかな庭園で、執事長のバートンが淹れてくれたハーブティーを楽しみながら、秋のバラの手入れについて楽しそうに語り合っているのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。