出会い
それからさらに一年。リナは十八歳になっていた。
大陸最強クラスの冒険者として知られるようになったが、相変わらずフローラを探し続けていた。
「諦めないのか?」
仲間の冒険者によく聞かれる。そのたびにリナは答える。
「絶対に会います。」
迷いはなかった。その頃。フローラは辺境の古代遺跡を訪れていた。最近、大陸各地で異変が起きていたからだ。
突然現れる高位魔物。不自然な魔力の暴走。消えた村人たち。どれも無関係には思えなかった。遺跡の最深部。
フローラは封印された巨大な魔法陣を見つける。
「……これは。」
その瞬間。魔法陣が輝いた。轟音。地震。そして遺跡の地下から巨大な黒い竜が姿を現した。
伝説級魔獣。いや、それ以上。数百年前に封印された厄災だった。
同じ頃。近くの街に滞在していたリナも異変を察知する。空を裂くような魔力。ありえないほど巨大な気配。
そして――。
「この魔力……!」
彼女は知っていた。忘れるはずがない。七年前、村を救ったあの力。
「フローラさん!」
リナは全力で駆け出した。黒竜が咆哮する。山々が震える。フローラは静かに杖を構えた。だが黒竜は強かった。
禁呪を一発放った程度では倒れない。長期戦になる。そう判断した瞬間。背後から声が響いた。
「一人で戦わせません!」
剣閃が走る。黒竜の鱗が砕ける。フローラは振り返った。そこには一人の少女。いや、もう少女ではない。
立派な冒険者だった。金色の髪。まっすぐな瞳。どこか見覚えがある。リナは息を切らしながら立つ。
七年。いや八年。探し続けた人が目の前にいる。黒いローブ。黒いフード。間違いない。
「やっと……。」
声が震える。
「やっと見つけました。」
フローラは少し沈黙した。
そして。
「……誰?」
リナは固まった。
「え?」
「……?」
「え?」
数秒の沈黙。そしてリナは叫んだ。
「村! 狼! 七年前! 助けてもらったんです!」
フローラはしばらく考え込む。本当に考え込む。更に考え込む。二十秒ほど。
「ああ。」
思い出した。
「あの子。」
リナは膝から崩れ落ちた。
「覚えられてなかったぁぁぁ……。」
だが次の瞬間。黒竜が再び咆哮する。二人は同時に武器を構えた。
フローラは静かに言う。
「話は後。」
リナは涙目のまま笑う。
「はい!」
その夜。
魔術の使徒と最年少Sランク冒険者は初めて肩を並べて戦った。
そしてそれはフローラの長い一人旅が終わりを迎える夜でもあった。




