表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔術の使徒  作者: 公康秋
謎の少女
5/5

怖い

黒竜との激戦から数時間後。

夜明け前。遺跡の外では焚き火が静かに揺れていた。黒竜は討伐された。二人とも無事。

フローラは岩に座り、本を読んでいる。リナは向かい側でじっと見ていた。

ずっと。本当にずっと。

「……」

「……」

「……」

フローラは本から目を離さない。しかし。視線が痛い。とても痛い。

数分後。リナが口を開いた。

「フローラさん。」

「……なに。」

「一緒に旅しましょう。」

即答だった。

「嫌。」

「ですよね。」

リナは全く動揺しなかった。むしろ予想通りという顔をしている。フローラは本を閉じる。

「私は一人で旅をしている。」

「知ってます。」

「一人の方が楽。」

「知ってます。」

「誰かといる理由がない。」

「あります。」

「ない。」

「あります。」

「ない。」

「あります。」

「……」

「あります。」

フローラは黙った。リナも黙らない。

「私、八年探したんですよ。」

「……」

「八年。」

「……」

「毎日。」

「……」

「Sランクになっても。」

「……」

「竜を倒せるようになっても。」

「……」

「探してました。」

「……」

罪悪感が。少しだけ。本当に少しだけ。フローラの胸を刺した。

「だから。」

リナは笑顔になる。

「一緒に旅しましょう。」

「嫌。」

「なんでですか。」

「一人が好き。」

「慣れます。」

「慣れない。」

「慣れます。」

「慣れない。」

「慣れます。」

会話が成立していなかった。さらに数分後。フローラが立ち上がる。

「私は行く。」

「私も行きます。」

「来なくていい。」

「行きます。」

「危険。」

「大丈夫です。」

「勝手についてくるな。」

「勝手についていきます。」

フローラは歩き出した。リナも歩き出した。フローラが止まる。リナも止まる。フローラが右を向く。

リナも右を向く。フローラが振り返る。リナが満面の笑みで立っている。

「……。」

フローラは人生で初めて理解した。禁呪魔術では解決できない問題があることを。

一時間後。街道。フローラの後ろをリナが歩いている。

距離は三歩。ぴったり三歩。離れない。絶対に離れない。

「帰らないの。」

「帰りません。」

「家族は。」

「自立してます。」

「仕事は。」

「Sランクなので自由です。」

「……」

完璧だった。言い逃れができない。そして夕方。宿へ到着。受付の女性が尋ねる。

「お二人ですか?」

フローラが答える前に、

「はい!」

リナが即答した。

「部屋は一つで?」

「はい!」

「二つ。」

フローラが即座に訂正する。リナはショックを受けた顔になる。なぜか宿の女性まで少し残念そうな顔をした。

フローラは理解できなかった。その夜。別々の部屋のはずなのに。

朝起きると。リナが部屋の前で正座して待っていた。

「おはようございます!」

「……」

「今日も旅しましょう!」

「……」

「明日も。」

「……」

「来年も。」

「……」

「十年後も。」

「……」

フローラは空を見上げた。黒竜との戦いより疲れていた。

だがほんの少しだけ。本当にほんの少しだけ。

一人で歩いていた頃より、旅が賑やかになった気もしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ