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11.外堀

マリアを連れ、庭園を散策していると、後ろから声が掛かった。レオンハルト殿下だ。え、この人もお茶会抜けてきたの?早くない?

「どうだい?母上の庭は。」

「とても素敵です。静かで心が落ち着きますわ。」

「そうだな。一緒しても?」

ここは王宮だ。学園ならまだしも断れるわけがない。

「まぁ、先程お茶会に来たばかりではないですか。あちらはよろしいのですか?」

「あぁ、茶会には君の姿が見えたから来ただけだ。他の者へ用はない。」

と、私の目を真っ直ぐに見て微笑む。一緒に散策するのを断れないことへの意趣返しに嫌味を言っただけなのに、墓穴を掘った。真面目に返されると調子が狂う。

「お上手ですね。ではここの庭園のエスコートをお願いします。」

頬が赤くなるのを隠すように視線を逸らし、エスコートをお願いする。では。と言って殿下は腕を出し、私は手をかける。私の歩幅に合わせてくれるので歩きやすい。


「王妃さまのお庭では、色とりどりの花が植えられてますのね。」

「あぁ、俺もここは気に入っている。1人になりたいときとかよく来るんだ。」

と言って、花の名前を聞いたり言ったりと、他愛もないことを話していると、ガゼボにたどり着く。休憩することとなり、殿下がハンカチを敷いてくれたので、その上に座る。殿下とまともに話したのは初めてだが、学園でのチャラさはなく、普通に楽しい。

「ところで殿下、私に何か御用でしたか?」

「君とゆっくり話してみたかったんだ。学園では話しかけてくれるなと言われたからな。」

と小さく笑って言う。あ、ちゃんと伝わっていたようで何よりだが、今日の殿下を相手にしてると罪悪感が生まれてくる。

「申し訳ございません。殿下は目立ちますもの。私、注目されるのは少し苦手ですの。」

「フォードヒル家の者であれば、そうは言ってもなかなか難しいだろう。ふむ、そうか。だから君はあまり社交に出ていなかったのだな。」

まぁ、ただ忙しくて出れなかったのだけど、社交の場が好きでないのは本当だ。


「だから、偶然とは言え、久しく見た君に目を奪われた。エリオットからはお転婆だと聞いていたから、幾年経っているにも関わらず、小さい姿のままで止まっていた。美しくなったな。」

私より遥かに美しい男に言われると、気恥ずかしい。

「あ、ありがとうございます。お世辞でも嬉しいです。」

「世辞なものか。あの日から君の姿ばかり探している。婚約者がいない理由を聞いたが本当か。」

ズキっ。今は嘘であることに少し心が痛む。

「えぇ。」

と短く答える。下手なことを言うとバレる気がする。

「そうか。君は俺の婚約者候補に上がっていることは知っているか?」

「ハッキリとは言われておりませんが、家柄、年齢を考えますと大体予想はつきます。」

「では、ハッキリ言おう。俺は君に興味がある。思い人がいるようだが、この先はまだわからん。君の心を手に入れるよう努力しよう。覚悟しろ。」

と私の手を取り、甲にキスを落とす。顔が赤くなる。なんだこれは!まさか私がヒロインだったのか?少し遠くに意識を飛ばす。

「おい、何か言え。」

「少し現実逃避してました。お手柔らかにお願いします…。」

「では、夜会のパートナー…」

「それはお断りしました。」

「ふはは!そういう強気なところが可愛いな。」

と高らかに笑う。ストレートなアプローチなどされたことがないから、どうしていいかわからず私は顔を上げられない。殿下がそろそろ戻ろうと合図をしたため、完璧なエスコートで馬車乗り場まで送ってもらった。


大変なことになった!エル兄さまの帰りを今か今かと待つ。帰ってきた!いつも通り頬にキスをし、なんならハグもする。私は今日あった庭園での出来事をエル兄さまに報告する。しばし黙って聞いてくれた。

「オーリーをレオンに渡したくはないが、お前はどう思っているんだ?」

「正直言うと、嫌な気持ちはありませんでした。でも、王族と結婚などと私は無理だし、殿下個人を見るほど、まだ強い気持ちはありません。でも以前よりは見る目が変わったと言うか、悪い印象はなくなったわ。」

「あぁ、学園での振る舞いはわざとだからな。婚約者を決められたくなくて、特定の女性と懇意にしないんだ。色々とあるんだよ。」

なるほど。根は真面目で誠意があると言うことか。でも…

「その割には、お胸が大きい人が多いわよね…。」

「…まぁ、な。」

と目を逸らしてエル兄さまは認めた。


お茶会以来、殿下は宣言通り時間があれば、私の元へとやって来た。以前は周囲の視線を避けるように逃げ回っていたが、それももう疲れたため、視線を受け入れることにした。そうなると悪意を向けてくる人も増えた。主にローズ様だ。彼女が婚約者候補最有力であるため、私の存在が気になるのであろう。ローズ様は名前の通り、見事な真紅のウェーブヘアーで金の瞳を持つ美女で、誰もがその容姿には目を惹かれる。殿下はなぜローズ様ではなく、私に興味を持ったのか考える。ローズ様の胸は、まぁ少し心細い。絶対にそれだ。気性は荒いが裏表がなくて、私は嫌いではないのだが、少々疲れる。

私はさほど気にならないが、彼女の悪意を感じるたびに、ミラもフィルも心配してくれ、なんならフィルは殿下に対しても怒っている。私もなぜか怒られる。殿下の相手をするからとかなんとか。無視できない相手なのだから仕方ないじゃないと、私も反抗するため最近はよく口喧嘩をしている。そのうちにミラはオーリーなら大丈夫と言って、心配すらしてくれなくなった。さすが類友である。

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