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10.パートナー

パートナーが決まってないとは言え当てはある。いつも夜会の時は、婚約者のいないエル兄さまにエスコートをしてもらっているのだ。善は急げ!とエル兄さまを探して、探して、見つけた!!なんだよ、さっき同席しててくれよ!可愛い妹の一大事だぞ!と心の中で悪態をつきながら、エル兄さまに話しかける。


「エリオット兄さま、今少しよろしいかしら?」

と少々声に怒りが含まれたことは仕方ないだろう。エル兄さまは小さくため息をつき

「…レオンのことか?」

「わかっているなら話は早いです!今度の夜会のエス…」

「すまない。既に先手は打たれている。」

「へ?」

「レオンの策略に嵌り、既に俺のパートナーは決まっているんだ。レオンのやつ、あとからオーリーをエスコートするって言い出して!くそ!可愛い妹にレオンの魔の手が迫っているとわかっていたら、俺が絶対にエスコートしたのに!」

と言って悔しそうにする。エル兄さまが策略に嵌るなど、いよいよ物騒な話だ。


「こないだから、オーリーに執着しているんだ。でも俺は絶対に認めないからな!安心しろ!」

いやいや、安心も何も、今んとこ守れていませんよ?兄さま?

「殿下の次のターゲットは私なのですね。エル兄さまが先手を打たれるなど侮れませんね。ひとまずはわかりました。どうにかします…。」

と言って、一旦引いて教室に戻ることにした。あの王子!ただの俺様だと思っていたのに、腹黒じゃん!えー、計算なの?怖いんですけどー!私は物理的な攻撃には強いけど、策略には弱いんです。でも殿下のような目立つ存在との交流など、お断りだ。



午後の授業も終わり、盛大にため息をついていると、ミラとフィルが昼の出来事を心配して、声をかけてくれた。

「殿下に呼び出されるなど何事だ?大丈夫?」

「ため息が深いけど、何かあった?」

「ミラ…フィル…、こないだ殿下と少しあって、気にしなくていいのに、お詫びだと言って、今度の夜会のパートナーの申し出があったの。でも恐れ多いから、パートナーは決まっているって断ったのだけど、本当は決まっていなくて、エル兄さまも先手を打たれたようで既にパートナーが決まっていて、どうしよう…。」

と項垂れる。すると、

「なんだそんなことか。フィル、君がパートナーになってあげなよ。」

「もちろん、オーリーのパートナーだなんて光栄だな。でも、殿下を断って大丈夫なの?」

「えええ?殿下みたいな目立つ方のパートナーなんて、まっぴらごめんよ。そんなことより、フィルが私のパートナーを務めたら、ミラはどうするの?」

そう、夜会があると私はエル兄さま、ミラはフィルにエスコートしてもらうのがお決まりなのだ。ところが、

「実は最近、恋人ができてね。私のパートナーは彼にお願いしている。隣国の公爵家のご令嬢が遊学のために、こちらに滞在しているのだが、兄が留学していた時の縁でな、何度か顔を合わせる機会があって、そのご令嬢の護衛の方でな。彼と手合わせしているうちに、意気投合して、それで晴れて恋人さ。家柄的にもお互い問題がないため、近々婚約が結ばれる予定さ。」

「えええーーーー!!ミラったら初耳よ!でもおめでとう!!素敵だわ!今度紹介してくれる?」

「もちろんだ。是非とも会ってくれ。」

「てなわけで、僕もパートナーがいないんだ。オーリーが良ければ是非ともエスコートさせてくれるかい?」

「そう言うことなら喜んで!いえ、こちらこそよろしくお願いします。」

ミラの爆弾発言はあったものの、思ったより呆気なく人生最大の危機を脱することができた。


構ってくれるなと態度に表したおかげか、それ以降、殿下の視線は感じるも必要以上の接触はなく、安心しきっていたところに、まさかの王妃さまからお茶会の招待状が届いた。家柄上、王妃さまとお会いしたことはあるが、私自身は関わりはあまりないのに、嫌な予感がする。しかし、断れるわけがないので行くしかない。お茶会当日、私はパステルブルーのドレスに身を包み参加する。

「いらっしゃい、オリビア。久しく会わないうちに素敵なレディになったわね。」

と数名ご令嬢がいる中で、真っ先に声が掛かる。周りの視線が痛い。刺さっている。

「ご無沙汰しております。この度はお誘いいただいたうえ、そのような勿体ないお言葉をいただき、光栄にございます。」

と言ってカーテシーをする。

「あなたの噂は聞いているわ。学園でも優秀な成績だそうで、レオンハルトとも仲良くしているそうね。」

はぁ、なるほど、息子にちょっかいかけてる女はどんなもんや?てところね。しかし、殿下も私も婚約者がいないため、あらぬ詮索はよろしくない。ありがたくないことに、恐らく家柄を考えても、婚約者候補に名は連ねているだろうが、候補者の順位が上がるのだけはやめてほしい。私は慎重に返答する。


「レオンハルト殿下とは、兄のエリオットを通してお話をさせていただいただけにございます。殿下はお優しいので、側近の妹として気にかけてくれているようで、恐れ多くもありがたく思っております。」

「兄と言えば、フォードヒル家はアルベルトもエリオットも優秀ね。オリビアが優秀で美しいことにも頷けるわ。でも、そんなあなたになぜ婚約者がいないのかしら。」

「はい、私のワガママにございます。兄のアルベルトが長い恋を実らせ、先日結婚いたしました。幼き頃より、兄夫婦のような結婚をしたいと憧れておりまして、私も心を寄せた方と結婚したいと思っております。幸い当家にはエリオットもおりますゆえ、私には自由な結婚を許してもいいと、両親が考えてくれておりまして、今に至っております。」

「まぁ、では今心寄せる方はいらっしゃらないのかしら?」

「いえ、お恥ずかしながら、お相手にはお伝えしておりませんが、密かに胸に秘めている思いがございます。」

はい!嘘です!いません!でもここは引けない。

「オリビアに思いを告げられれば、皆良い答えを出すでしょうに。それは私の知っている方なのかしら?」

はいー!核心ついてきてます。でも引けない。

「えぇ、貴族の方なので、もしかしたら王妃さまもご存知かもしれません。」

と、言外にレオンハルト殿下ではないことを伝える。貴族、と言うのがポイントだ。王族ではない。これで私の思い人が、レオンハルト殿下ではないことが王妃さまや、周りの方に伝わったはずだ。思い人などいないが。今はね。


嵐になるかと思ったお茶会が凪いで、ようやくお茶の味がわかってきたところに、嵐がやってきた。レオンハルト殿下だ。今日もブラッド様を引き連れて颯爽とやって来る。

「母上。皆様方。本日もご機嫌麗しい。楽しそうなお声が聞こえ、私も混ざりたく参上しました。」

「まぁ、レオンハルト。今日は淑女の会だと言うのに、仕方のないこと。こちらにいらっしゃい。」

と王妃さまが呼ぶ。そして私を見つけ、

「やぁ、オリビア嬢。この間は世話になったな。大いに有益な時間であった。また頼む。」

と意味深に言うものだから、また視線が刺さるじゃない。この親子だったら。

「いえ、とんでもございません。臣下として当然のことをしたまでです。私でお役に立てることでしたら、なんなりとお申し付けください。」

と、どうにか笑顔を貼り付ける。そろそろこの腹の探り合いにも疲れてきたため、タイミングを見て王妃さまに席を辞す許可をもらう。王妃自慢の庭園を見させてもらって帰りましょう。誰もいないことを確認し、深くため息をつく。疲れた。剣を振り回している方がよほど楽だ、帰ったら素振りしようと心に決めた。

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