ページ53 さあ、終焉の鎮魂歌を奏でよう
「おい、女」
ルックは木の陰に隠れていた少女に話しかけた。
「……っ!」
警戒し、身構える人族の少女。
その反応は当然だと苦笑し、そして頭を下げた。
「許せとは言わん。すまなかった」
「……」
少女の言葉はない。
それもわかっていたこと。
彼女らを守るつもりで閉じ込めたが、自分はそれだけのことをしたのだ。
その態度にケチを付けるのはお門違いである。
だが──
『木の根』を一掃した化け物みたいな少年を見て、つい口を開いてしまう。
「奴は一体何者なのだ……」
「……」
尚も返事はない。
諦めて少年に意識をやると。
「私にもわからないわ」
なんと答えが返ってきた。
驚きに振り向くが少女はすでにルックから警戒を解き、少年を見守っていた。
「──でも、どうやら私達の味方みたいよ」
その言葉が少女の口から出たことに驚愕する。
少女はそれ以上何も語らなかった。
今さら『人族を信じよ』か……。
本当に皮肉な言葉だ。
親父、すまない。
戻るには少し時間がかかりそうだ。
どうか生き延びてくれ。
「~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ッッ!!」
エルダートレントが鳴いた。
「マジかよ」
切り落とした『木の根』の断面から根が生えてきやがった。
こんなのゲームにはなかったぞ!
しかも、いつの間にか十本以上になっていた『木の根』に加わえ、上空から『枝』が豪雨のように降り注ぎ、その上──
ズシン。
ついに動き出したのだ。
二足歩行で目の前にあった学校の塀とフェンスを踏み倒し、尻尾のように地中に潜る『木の根』を後方に残して、運動場に侵入してきた。
真昼間の雲一つない青空、さぞ光合成をするには気持ちよかろう。
上空のヘリがとばっちりを受けないよう後退していく。
オレはすべての攻撃を躱し続けた。
「小賢しい」
吐き捨てるように告げた言葉の裏では──
やばい、超楽しい!!
みんながオレを見てる。
ある者は、ヘリの中から。
ある者は、体育館の窓から。
ある者は、運動場の木陰から
目の前で行われている理不尽なまでの力と数の不条理。
その戦いの行く末を誰もが息を潜め、固唾を飲んで見守っている。
恐怖?
そんなもの、とっくに消え失せた。
これから起こる快進撃に武者震いすら覚える。
これは紛れもない、オレの見せ場だ。
ならば観衆の期待に応える外ないだろう。
今こそ人類反撃の時。狼煙を上げようじゃないか。
もう一度すべての『木の根』や『枝』を切り落とす。
またすぐに再生するが関係ない。
「さあ、終焉の鎮魂歌を奏でよう」
攻撃が止んだ一瞬。
その一瞬で駆け出した。
新たに地中から生えてくる『木の根』。
だがそこにもうオレは居ない。
どんどんスピードを上げていく。
次いで『枝』を何十本も巻き付けた巨大な槍が迫りくる。
それすらも難なく躱し、大地に突き刺さったところで飛び乗って全力で駆けた。
狙うは槍の終わり。
エルダートレント本体。
この世界はゲームではない。
現実だ。現実でゲームの力が使える。
だったらゲームでは出来なかったことが出来てもおかしくはないはずだ。
もっと、もっと早く──
もはや『木の根』や『枝』も追い付けないほどの速度に達していた。
「うおおおおおおおおおおおおッッ」
ここからはゲームでは出来なかった新たな試み。
スキルの強化。加速したすべての勢いをスキルに乗せる。
イメージするのは渾身の刺突技。
今でも身体が覚えてる──あのスキルを。
何万、何億回と使った──あのスキルを、今こそ解き放てッ!!
腰の後ろで構えた短剣の刀身に閃光が宿る。
それは流星のように煌めく、一条の光明の槍となり──
「せいやあああぁぁぁ────────ッッ!!!!」
名付けて『死すべく身体・改』
極限まで高められた突貫の一撃が大樹を穿つ。
弾けるような轟音。
全長二十メートルもの巨大な大樹に大きな風穴を空けた。
すべての勢いをぶつけきり、そのまま地面で着地。
枯れるように消え逝く大樹に背を向け、オレは独りごちた。
「眠れ、安らかに──」
世良「きゃー。古賀ちゃんの恋の行方はっ!?」
本城「次回、古賀恋物語」
響恋「ちょ。二人とも! そんなのありませんからっ!!」
世良「この続きが気になる方は『評価』と『ブックマーク』をクリックしてね」




