ページ15 わたしも手伝うよ
「はいはーい、通りまーす」
オレは人垣を掻き分けて渦中の中に飛び込んだ。
野次馬共の険しい視線など、どこ吹く風だ。
貴様らとは同志であっても仲間ではないのだよ。
女の子の感謝の言葉は、悪いが独り占めさせてもらうぜ。
「店長~、オレの分をその子にあげるんで、それで勘弁してやってください」
「おい、友人じゃねえか。お前心配したぞ。この野郎ォ」
店長はオレに気付くなり、頬を緩ませその厳つい腕でバンバン背中を叩いて喜んでくれた。
「す、すみません。こっちもいろいろ……ちょ、痛い痛い!」
オレ、ケガ人だぞ!?
店長は二日ぶりの再会とは思えない喜びようだった。
痛ェ。手加減しろよ。
オレは店長に喜んで欲しいわけじゃないんだぞ。
「お、お前それ、大丈夫なのかよ……」
背中の方が大丈夫じゃねえよ。
「少し縫っただけなので対したことありませんよ。それよりも……」
さっきよりも人数が増した自衛隊に視線を向ける。
彼らも別に悪いことをしているわけではない。
店長はそれだけで察してくれたようで──、
「友人には適わねえな。わかったわかった。嬢ちゃんも特別に注いでやるよ」
と、降参のポーズを取った。
自衛隊が集まってしまったのは、店長が大人げないせいでもあるが、オレの分を渡してしまうと当然オレの分が無くなってしまう。
だが、店長にはそんなことは許容出来ない。
ましてやケガ人、だからこそ敢えて言った。
それで話がまとまると思ったから。
──すみません店長。
「わあ、やったーなのっ!!」
発砲どんぶりを高々と掲げた女の子が飛び跳ねて喜びを顕わにすると、周囲からは拍手と喝采が湧いた。
「よかったな嬢ちゃん」
「兄ちゃんでかしたぞっ」
「ウヘヘ、可愛いなぁ……」
そこへドタバタと別の少女が飛び出してきた。
紺を基調とした中学のセーラー服の上から赤色のエプロン。
シュシュで束ねた髪を右肩から前に流し、少し背伸びした雰囲気の女の子だ。
彼女は野次馬共の前で一礼すると、
「皆さんお騒がせしましたあ!! お好み焼き屋五十嵐! 自慢の一杯です!! まだ召し上がられてない方は是非列にお並びくださいっ!!」
ハキハキとした元気の良い声で自分のお店をしっかり宣伝しつつ、次々に野次馬共を散らして行く。
「頑張れよ~」
「ありがとうございますっ!」
応援の言葉も百点満点の営業スマイルで男達をイチコロだ。
粗方片付いたところで彼女はこっちにやって来てくれた。
「もぉ、お父さん頭固いんだから~」
「楓ちゃん、おいっす!」
「ゆうとさんおいっすですっ。その腕本当に大丈夫なんですか?」
軽快に片腕を持ち上げて答えた少女は、オレの首に吊るされた右腕を食い入るように見て言った。
「うん、ちょっと右腕は封印したんだ」
店長もそうだけど、あまり心配を掛けたくない人達なので、十五センチ切って出血多量で一度死んでしまったことは内緒にした。
今元気に生きているんだからそれが全てだろう。
「なんと! じゃあ私が封印の術式を書いてあげますねっ」
「ごめん。恥ずかしさで消えてしまいたくなるからやっぱ今のナシ」
「え~、私の封印は強力なのになぁ。あっ、ゆうとさん聞いてくださいよ。お父さんのせいで店にスマホを忘れて来ちゃって、連絡出来なかったんです!」
「あ、やっぱり? 履歴なかったからそんな気がしたよ」
あははと笑うとくすくす笑い返してくる。
あの人、娘さんのことになると目の色を変えるからなぁ。
きっと帰ってくるなり有無を言わさずに避難したんだろう。
「影山くん、お知り合い?」
シャツの裾を引っ張られて振り向くと、やや不満顔の佐伯さんが視線で紹介しろと語り掛けてきた。
「あ、ごめん。紹介するよ。オレのバイト先の唯一の先輩にして、店長の一人娘の楓ちゃん。年はオレ達より一つ下だよ」
「『唯一の』は余計ですよ。うちは少数精鋭なんですぅ~」
子供っぽく口を尖らせる精鋭さん。
その精鋭の中に入って二ヶ月のオレを入れないで欲しい。
「はいはい。こっちは学校で同じクラスの佐伯さん」
「佐伯愛生です」
「いつもゆうとさんがお世話になっております」
「こちらこそ影山くんがいつもお世話になってます」
礼儀正しく頭を下げる二人の少女達を見て少し気恥しくなる。
そんな何処でもかしこでも迷惑掛けてないから。
掛けてないよね……?
「おーい、何やってんだ!」
店長がしびれを切らしてついに声を上げてしまった。
商店街の人達も居るようだけど、騒ぎで人が押し寄せてしまったようだ。
まあ並んでくれた人達も、筋肉逞しいおっさんに注がれるよりは、可愛い女の子に注がれたいだろう。
「あっ、はぁーい! ゆうとさん、働かざるもの食うべからずですよ」
そう言うと楓ちゃんは跳ねるように掛けて行った。
どうやらオレも手伝わないとダメらしい。
親子でケガ人の扱いが酷過ぎる件について。
「オレちょっと手伝ってくるから佐伯さんは席を──」
取っといて、とは言わせてもらえなかった。
「わたしも手伝うよ」
顔は笑顔なのに目が笑ってない。
そんなに炊き出しをやってみたいのだろうか。
「いや、でも……」
「手伝うよ!」
「……はい」
新年明けましておめでとうございます。
どうも、ロングブックです。
改めまして今作の紹介をさせて頂きます。
今作は、一昨年の12月25日に投稿を開始した『ログイン』のブラッシュアップ作品になります。
そのため、現在はまだ一章分までしか書き上げていません。
新作を書きたい気持ちもあり、二章目をどうするか迷っている次第です。
そんなわけで、やれるだけのことはやって、
もし人気が出るようなら、二章目以降も書いていきたいと思ってます。
この作品が少しでも『面白い』、『続きが読みたい』と思って頂けたら、
作者が今年もしっぽ振って頑張りますので【評価】【ブックマーク】をお願いします。




