27.リリィ、ショウコに会いに行く
サトルが言った。
「とりあえず、これから念のためリリィを病院に連れて行くよ」
「それがいいわ。私も一緒に行く」
「いや、時間かかるかもしれないし、大丈夫だよ」
「でも・・・」
「その気持ちだけで十分だよ。今日は疲れたでしょ、ゆっくり休んで。駅まで送るよ」
ええっ!?二人とももう帰っちゃうの?・・・あたしのせいだな・・・
それから二人は無言で駅まで歩いた。
「じゃあね、リリィちゃん」
ショウコはあたしの頭を撫でて笑いかけたけど、やっぱり元気がなかった。あたしは元気をだしてほしくて、ショウコの手をペロペロなめた。
するとサトルがびっくりして言った。
「あれ!?リリィが小宮さんに懐いてる!」
ショウコは笑った。
「そうなの。さっきもね、私の手をペロペロなめてくれたの」
「そうだったんだ・・・ハハ、なんか嬉しいな」
サトルも笑った。さっきより二人とも元気になったみたいで、よかった。
ショウコが言った。
「じゃあ・・・さよなら」
「あ、あの小宮さん!来週・・・また会えるかな?」
「え?」
「あの・・・この前の返事もその時に聞かせてもらえたら・・・」
「う、うん。じゃあ・・・また、来週」
そしてショウコは帰っていった。一方あたしは動物病院に連れて行かれた。
「キャン!キャン!」(イヤだ!病院行きたくない!)
あたしは病院の入口でジタバタ暴れて抵抗した。
「ケガしてないか診てもらうだけだから大丈夫だって!」
サトルはあたしをがっちり捕まえて病院へ入っていった。
「あーあ、あんたが脱走しなけりゃ、病院に行かずに済んだのによ」
パグぞうさんが嫌味を言った。
ううう・・・たしかに自分が悪いんだけどさ。
◇ ◇ ◇
結局、病院では先生にあちこち触られるだけで、痛いことはされなかった。先生にもピンピンしてるって言われたしね。
そして、その夜。
サトルがお風呂に入ってる時に、パグぞうさんが現れて言った。
「あーあ。今日はとんだ一日だったよな」
「だから、ごめんってば。しつこいなー。パグぞうさん、モテないよ?」
「オイラ、モテたいわけじゃねーし。ってか、これで詳子が交際断ってきたらどうしてくれる?オイラの数々の苦労が水の泡になっちまうじゃん」
「・・・パグぞうさん、二人がそういう所まで進展してるって知ってたのね?」
「ああ。前回のデートでサトルが告白して、今日のデートで詳子が返事するってね。でもあんたに言うと邪魔しそうだから言わなかった」
「・・・・・」
あたしは何も言えなかった。
あたしだって、あんな形でジャマなんかしたくなかった。
これでもしも詳子が彼女になるのやめますって言ったら、サトルはどんな顔をするだろう?
「・・・それにしてもよ、あんた昔に何があったんだ?さっき言いかけてたろ?」
あっそうか。まだ話してなかったんだ。
あたしは昔にあったことをパグぞうさんに話した。話し終えると、パグぞうさんが言った。
「なるほどね・・・あんたにもそんな過去があったとは。それにしても、とんだクソ野郎だな、その女も男も!
でもそんなのとオイラの詳子を一緒にしてくれるなよ。詳子は絶対にあんたを邪険にしないし、ましてや捨ててこいなんて言わない。オイラが保証する」
「うん。それはあたしもよくわかった。
ショウコはそんなことする人じゃないって今なら信じられるよ。ジャマして悪かったって反省してる。
だからね、パグぞうさんに一つお願いがあるの」
「お願いならいつも聞いてやってるだろうが」
「あの二人が今度デートする時、あたしを人間にしてほしいの」
「ええっ!?また?何で?」
「あたし、ショウコに直接お願いしたいの。サトルの彼女になって下さいって」
「そんなことしたら正体がバレるだろうが!!」
「大丈夫だよ。ショウコも、まさか犬が人間に変身してるなんて思わないでしょ」
「んー・・・まあ、そうだな・・・。でも、もしも“あなた誰?”って聞かれたら、サトルの親戚ですって言うんだぜ?」
「シンセキね、わかった。じゃあ、人間にしてくれるんだね!」
「ああ。思えばあんたが自分から協力したいって言ったの初めてだしな。その代わり、失敗は許されねえぜ?」
「うん、任せて!」
◇ ◇ ◇
そして、次のデートの日が来た。
サトルは、あたしがおもちゃで遊んでいるフリをしている間に出かけていった。
「サトル、行ったか?」
「うん。今出ていった」
「よっしゃ。じゃあ、計画通り慎重にいくぜ。今度は隣のおばさんに見つからないようにしないと。それに、また危ない目にあったら困るから、用事が済んだらすぐ帰るぞ」
「うん!」
そしてあたしは、パグぞうさんの魔法で人間になった。今日の服はパグぞうさん曰く、白い生地にピンクの花柄だよ。あたしは鏡の前でポーズを決めてみた。
「うーん♡今日もあたしカワイイ!」
「パカなこと言ってないで行くぞ!しゃがめ!」
「バカじゃないもん!」
あたしはしゃがんだ瞬間、パァァ・・・!!とまぶしい光に包まれた。
光に包まれたあたしは、マンションの近くの公園の茂みの中にワープしていた。
あたしはあたりをキョロキョロ見回し、誰もいないのを確認してから立ちあがった。
「すごーい。マンションから結構離れてるのにワープできるんだね。・・・あれ?大丈夫?」
パグぞうさんはハァハァと荒い息をしていた。
「大丈夫じゃねえよ。離れた所にワープするのは魔力を使うんだ。ちょっとあんたの肩で休ませてくれ」
そしてあたしは、パグぞうさんを肩に乗せて駅の方向へ歩いていった。
パグぞうさんが言った。
「しかしよ、あの二人ってまるで小学生みたいだよな」
「サトルとショウコが?」
「ああ。お互い好き合ってんだから、さっさと告白してOKしてくっつけばいいのに、世話が焼けるぜ」
「でもよ・・・今までオイラに付き合ってくれて、ありがとな」
「え?何よ改まって。なんか気持ち悪い」
「気持ち悪いなんて言うなよ、失礼な。・・・あ、サトルがいた」
駅の中でサトルは、駅の時計と腕時計を代わる代わる見ていた。
「何でサトル、キョロキョロしてるの?」
「それはオイラがあいつの時計をちょっと早めたからさ」
「?」
「今日はオイラ達がサトルより先に詳子に会いに行くから、ちょっとどこかで時間をつぶしててもらおうと思ってな」
「でもサトル、電車に乗るみたいだよ」
「それでいいのさ。あいつは待ち合わせするA駅の前のコンビニでいつも時間をつぶすから。さ、オイラ達も電車に乗るぞ」
そうしてあたし達は電車に乗って、待ち合わせ場所のA駅へ向かった。




