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25.サトルのデートと、リリィの昔の記憶

一週間後の日曜日。


「リリィ、お散歩行こう」


「ワンッ!ワンッ!」(わーい!行こう行こう♡)


 あたしはうれしくて、ピョンピョン飛び跳ねて喜びをアピールした。そして喜び勇んでサトルとお散歩に出かけた。なのに・・・


「パグぞうさん、なんでついてくるの?」


「んー?まあ、たまには外の空気吸うのもいいかなってさ」


「ふーん?」


 あれ?そういえば、お散歩のコースがいつもと違うし、サトルの荷物がやたら大きい。服装もいつもの散歩の時よりオシャレだし、これはまさか・・・まさか・・・


「あっ!小宮さん!」


 サトルがうれしそうに手を振る、その先に・・・ショウコがいた!あたしまだ、この前の答え出せてないのに・・・


「ってかパグぞうさん、今日がデートだって知ってたのね!?」


 あたしはパグぞうさんを睨んで言った。


「おうよ、でもあんたに言うと嫌がると思ってナイショにしてた」


 パグぞうさんはしれっと言った。


「嫌がるって・・・」


「お?もしかして、嫌じゃなくなった?」


「・・・わかんない」


 嫌じゃないのか、どうか。前回助けられてからわからなくなっていた。でも、もしショウコが彼女になってしまったら・・・あたしはどうなるんだろう?


 ショウコも手を振りながらこっちへやってきた。


「中野君!こんにちは」


「ごめん、待った?」


「ううん、今来たところ。こんにちは、リリィちゃん」


 ショウコがあたしに笑いかけた。


「でも、本当にいいの?リリィも一緒で」


 サトルが聞いた。


「私がリリィちゃんと仲良くなりたいからって頼んだんだもの。こっちこそ無理言ってごめんね」


「ううん、そう言ってくれてうれしいよ。じゃあ、行こうか」


 並んで歩くサトルとショウコを見ながら、パグぞうさんが言った。


「詳子もけなげだねえ。あんたに嫌われてるのに仲良くなりたいってさ。ところで、今日は二人の邪魔しないんだ?」


「いつもジャマするってわけじゃないもん」


「ふーん?」


 あたしはあたしのすぐ横を飛ぶパグぞうさんを無視して歩いた。


「あっ!ここよ中野君。最近できたばかりなんだって」


 ショウコが連れてきたのは、たくさんのお店が入った建物だった。


「すごいな。これ、全部ペットの為の店が集まってるんだ」


 サトルが言った。


「そうよ。どのお店もワンちゃん連れて入れるし、ペットサロンやドッグカフェもあるの。あっ!ねえ、このお店に入ってみない?ワンちゃんのお洋服のお店」


 そうしてあたし達は、お洋服のお店やドッグフードのお店などいろいろ回り、ドッグカフェで休憩したりして過ごした。


 それにしても・・・


「ねえパグぞうさん。あの二人、なんか今日ヘンじゃない?」


「ヘンって?どこが?」


「どこがってわけじゃないんだけど・・・なんか、ヘン」


「そうか?普通じゃね?」

(・・・さすが女のカンだな。実は、前回のデートの後、サトルは詳子に告白してるんだ。詳子は返事を今日することになってて、それで二人ともドギマギしてるって訳さ)



◇ ◇ ◇



 あたし達は、建物を出て、公園へやってきた。サトルが言った。


「よし、ここでお昼食べよう」


 サトルとショウコはベンチに並んで座り、ショウコはカバンからお弁当を取り出した。


「あまり、自信ないんだけど・・・」


 ショウコは恥ずかしそうにお弁当のフタを開けた。


「うわあ!すごい!美味しそう!」


 サトルはうれしそうに言った。


いいなー、いいなー、いい匂いだなー。あたしも食べたい・・・


 すると、サトルが言った。


「リリィ、食べたそうな顔してるけどダメだぞ」


 あたしは無意識に、上目遣いで舌をペロンペロンと出していたみたいだ。(前にサトルが言っていた。食べたい時にあたしはそういう顔をするらしい)


 ショウコが言った。


「リリィちゃんに、後でおやつあげていい?」


「あ、うん、いいよ。リリィ、ちょっと待っててな」


 おやつ!!さっき買ってたやつかな?


 そして二人はお弁当を食べ、その後であたしはショウコからおやつとお水をもらった。

ショウコは、初めてあたしがショウコの手からおやつを食べてくれたと喜んでいた。

おやつは、初めて食べる『ささみスティック』で、すっごく美味しかった。


 あたしがささみスティックにガブリとかぶりついている時にショウコが言った。


「あの、中野君。・・・この前に返事なんだけど」


「えっ!?あ、そうだったね」


「えーと、あの・・・」


「・・・・・」


「・・・・・」


何だ何だ?なんで急に二人とも黙っちゃったんだろう?

 あたしは二人の顔を見上げた。二人ともうつむいている。


「・・・・・」


「・・・・・」


 すると急にサトルが立ちあがって言った。


「な、なんか喉渇いたね!ちょっと自販機で飲み物買ってくる!」


 サトルはそう言って走っていってしまった。


 あたしはサトルを追いかけようとしたけど、ショウコに抱っこされて膝の上に乗せられた。ショウコはため息をついて言った。


「私、ダメだね、リリィちゃん。なんで言葉が出てこないんだろう・・・。ねえ、リリィちゃん。私・・・中野君と・・・お付き合いしてもいいよね?」


 ショウコがそう言った時、あたしはあることを思い出した。頑張って忘れたこと。サトルと出会う前のこと・・・



◇ ◇  ◇



物心ついてからの最初の記憶は、あの女の人があたしを抱っこしてなでなでしてくれた記憶だ。


あの人はとても優しくて、あたしが夜中に寂しくなってクーン、クーンと鳴いていた時もすぐに来てくれて、大丈夫だよ、怖くないよと言って撫でてくれた。


あたしは嬉しくて、あの人と一緒にいられて幸せだった。


それなのに・・・あの男の人が来るようになってから、あたしの幸せな生活は終わった。

あの男の人が来る日、あたしは薄暗い押入れの中に入れられた。あたしはいつになったらここから出してもらえるのか、不安な気持ちで待っていた。


男の人が帰ると、あの人は急いであたしを押入れから出して、ごめんね、ごめんねと謝りながら抱きしめた。


そんな中、ついにあの日がやってきた。


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