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21.リリィ、映画館へ行く

★★リリィ視点に戻ります★★


 それから数日後。


「ほらリリィ。新しいおもちゃ買ってきてやったぞ」


「ワン!ワン!」(えっホント!?やったー!)


 あたしはしっぽをブンブン振って、サトルの膝に飛びついた。


 サトルが手にしているのは、なんかヘンな形のボール。サトルがポイっと投げると、それはボヨンと跳ねてヘンな方向へ飛んでいった。・・・おっもしろーい♪


「ワンッ!ワンッ!」(わーいわーい♪)


 あたしはヘンなボールが跳ねるたび追っかけて、前足で転がして追っかけて遊んだ。


(ふう。リリィが思ったより喜んでくれてよかった。これで今週末のデートに出かけられそうだ。オレが出かけようとしたらすぐに気付いて嫌がるもんな・・・)


 あたしは遊びに夢中で、まさかサトルがそんなことを考えているなんて夢にも思わなかった。



 そのまた数日後。


「リリィ、ボールだよ!」


「ワンッ!ワンッ!」(わーい、ボールだ♪)


 サトルがまた、あのヘンなボールを投げてくれた。あたしはボールに飛びついて・・・ん?クンクン・・・なんかおやつの匂い!チーズが入ってる!


「クィーン?」(え?これ、どうやったら出るんだろ?)


 あたしはボールをコロコロ転がして、夢中でチーズを出そうと奮闘した。そして・・・


 やったー!とれた!もぐもぐもぐもぐ。おいしーい♪


「ワンッ!ワンッ!」(サトル!おやつ取れたよ!えらいでしょ!)


・・・って、サトルがいなーい!!


「ワン!ワン!ワン!」(サトル、どこー!?)


 あたしは家中を駆け回ってサトルを探した。でも、いない。


 まさかサトル、あたしがボールで遊んでるスキに出かけちゃったの!?


「パグぞうさーん!いるんでしょ!返事してよ!」


 ポンッ


「ハイハイ、お呼びで?」


 パグぞうさんがあくびをしながら現れた。


「サトルがいないの!どこに行ったか知ってる?」


「・・・知ってるけど、言わないぜ?」


「何でよ!?」


「何でって・・・また邪魔するからに決まってんだろ!」


「やっぱりショウコに会いに行ったんだ!・・・でも、しないよ?邪魔なんて」


「ウソつけ!」


「ウソじゃないよ!ただ後をつけて、どうしてるか見張りたいだけ」


「ストーカーじゃん」


「とにかくサトルの所に行きたいの!ねえ行きたい行きたい行きたい」


「うるっさいなあ!映画だよ!映画見に行くんだと!」


「エイガって何?」


「大きなテレビみたいなもんだ。残念でした、補助犬じゃないと犬は映画館に入れないぜ」


「じゃあ人間になって行く」


「あんたクッキーの一件で人間になるのは懲りたんじゃなかったの?」


「食べなきゃ大丈夫だもん!ねえお願い、人間にして人間にして人間にしてよー!!」


「うるさいって!もう!・・・仕方ないなあ、本当に邪魔しないでくれよ?オイラの命がかかってるんだから」


「ハーイ」


(・・・本当に大丈夫かなあ?)byパグぞう




◇ ◇ ◇



 パグぞうさんはため息をついて言った。


「じゃあ、目を閉じて」


 パァーッと周りが明るくなるのが目を閉じていてもわかる。そしてあたしは再び人間に変身した。


「やっぱ、あたしカワイイー♡」 


 あたしは鏡の前で一回転した。今日のコーデは、サトルが選んでくれた新しいワンピースだよ!


「しかしあんた、一体何着の洋服持ってんだ?」


「いっぱい持ってるよ!サトルが買ってくれたり、サトルのママがくれるんだ」


「ふーん・・・デニムのノースリーブにチェックのスカートか。人間の服と変わんねーな」


「そんなことより早く行こ!サトル達に追いつかなきゃ」


 あたしは玄関のカギを開け(ヨユーで手が届く!)、外へ飛び出した。


「あっ待て!周りを確認してから出ないと誰か見てるかもしれないだろ!」


「大丈夫大丈夫―。誰もいないよ!」


 あたしはマンションの通路を軽やかに走り抜け、階段を下りてマンションを出た。


「クンクン・・・こっちの方向だね。ねえパグぞうさん、今日は電車に乗るの?」


「いや、駅前の映画館だ。今日は日曜日で人が多いからヘマしないように気をつけろよ」


「駅前か・・・フフッ」


「?何だ?」


「前に駅前で迷子になったのを思い出したの。あの時は犬の姿だったけど。パグぞうさんもいなくなっちゃうし、どうしようって思った」


「あー・・・あったな、そんなこと。もうずいぶん前のことみたいだぜ」


「あっ!駅が見えてきた」


「映画館はこっちだ。十時半の部だったから・・・まだ間に合うな。急ぐぞ!」


 初めて入った映画館は、すごく人が多かった。


「クンクンクン・・・なんか、甘―い匂いがする。何だろう?」


「食い物より列に並べ!」


「並んで何するの?」


「チケットを買うんだよ」


「チケットって何?」


「いいから、オイラの言うとおりに言うんだぞ!」


あたしは言われた所に並んだ。するとガラス窓の向こうに女の人がいて、ニコニコ笑いながら言った。


「いらっしゃいませ」


あたしはパグぞうさんが言ったことを繰り返して言った。


「えーと、『真っ昼間のペット達』を大人一枚でお願いします」


「はい、『真っ昼間のペット達』ですね。本日は混み合っておりますので、後ろの方の席になりますがよろしいですか?」


「はい、大丈夫です」


「では、S席十五番でお取りしますね。チケット代は千八百円です」


 いつの間にか、あたしの手はお札を握りしめていた。あたしはそれを差し出した。


「二千円お預かりいたします。二百円のお返しでございます。こちらチケットでございます。ごゆっくりどうぞ」


 あたしは女の人からチケットを受け取った。


「ふーっ。何かキンチョーした!」


「オイラも緊張した・・・」


「ねえ、サトルとショウコは?人が多くて匂いがわかんない」


「もう中に入っちまったんだろう。ほらあそこ、一番スクリーンだ。手前にいる人にチケットを渡すんだ」


 あたしは言われたとおりに渡し(でもまた返ってきた)、奥の扉の中に入っていった。


『ガオーッ!!!』


「うわっ!!何これ!!」


 めちゃくちゃ大きなテレビの中で化け物が吠えている!怖い!!!


「しーっ!!この中では静かにしろ!」


 パグぞうさんが声をひそめて言った。


 そして知らない男の人の大きな声がめちゃくちゃ広いこの部屋いっぱいに響き渡った。


『近日公開。最恐の生物ガジラ、ここに参上』


 あたしは小声で言った。


「ねえ・・・映画ってこんな怖いものなの?」


「違うよ。これはただのCMだ」


「クンクン・・・サトルの匂いだ。あっちの方だよ」


「違う違う!あんたの席はこっち!S席十五番!」


「えー・・・サトルの近くがいいのに」



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