20.ドッグランデート
サトルとショウコがどうなったのか、パグぞうさんに聞きだしてやる!
「ウー・・・」(パグぞうさん、どっかにいるんでしょ!?)
ポンッ
「ハイハイ、ここにいるよ」
「ねえねえ、外でのサトルの様子はどうだったの?ショウコと会ってたんでしょ!」
「そうだなー、まあまあってとこかな」
「その“まあまあ”が知りたいの!」
「ハイハイ、んーと、二人とも楽しそうに話してたな。そんで、今度ドッグランでデートするってよ。あんたも協力してくれよ?」
「そんなの・・・協力できるわけないじゃんっ!」
その頃サトルは、ジャーキーであたしを釣ろうとしていた。
「リリィ、おやつおやつ。こっちおいで」
プイッ
あたしはサトルを無視して、ちょうどお風呂から出てきたサトルのパパの方へ駆け寄っていった。
「お?どうしたリリィ。抱っこしてほしいのか?」
そうしてあたしは、サトルのパパの腕の中からサトルを見下ろしてやった。
―あたしは絶対、協力なんてしないから!!
◇ ◇ ◇
でも、ついにその日がやってきてしまったらしい。数日後、急にサトルがドッグランに行こうと言いだしたのだ。
「ウーッ、ワンワン!」(イヤだ!あたし行かない!)
あたしは吠えながら部屋中を走り回った。
「リリィ!おとなしくバッグに入りな!もー、すばしっこいんだから」
フン!このあたしについてこれるならついてきな!
サトルはキャリーバッグを片手にのろのろとあたしを追っかけてくる。この調子だとそろそろ諦めてくれるかな?・・・と思ったその時。
「リリィ、大好きなおいもスティックだよ!ほれほれ」
!!おいもスティック!!あたしの大好物!!
「ほら、捕まえた!さっ行くよ!」
くっ・・・!おいもスティックにつられてサトルに近寄ってしまったが為にあたしはがっちりと捕まえられ、バッグに入れられ、ドッグランへと連れ去られてしまった。
「あいつ・・・バカだな」(byパグぞう)
◇ ◇ ◇
あたしは移動中のキャリーバッグの中からパグぞうさんに話しかけた。
「ねえ、パグぞうさん。そこにいるんでしょ?」
するとバッグの外から声が聞こえた。
「おう、いるいる。なあ、もう観念して詳子と仲良くしてくれよ」
「イヤ!今日会ったら噛みついてやるから!」
「もー・・・オイラの命がかかってるんだぜ?」
「それはそれで何とかするもん!」
「なんとかできる問題かっての!おっ、もう着いたみたいだぜ」
確かに着いたみたいだ。いろんな犬の匂いがしてくる。サトルも早足になって、あたしはバッグの中でユサユサ揺られた。
「ごめん、小宮さん!30分も遅刻して!」
「大丈夫大丈夫。それよりリリィちゃんの機嫌は直った?」
「どうだろう・・・?とりあえずリリィを外に出してくるから待ってて。窮屈な思いしてるだろうし」
あたしはバッグから解放されドッグランの広場へと降り立った。
イエーイ!広―い!わーい!!
あたしは広場を駆け回った。こんなに走るの久しぶりー!
「ワン!ワン!」(サトル、遊ぼー!)
―ってサトルいないし!!
キョロキョロとあたりを見回すと、サトルはショウコと広場の端っこにいた。
しまった!二人っきりにさせてしまった。早く邪魔をせねば!
「ワン!ワン!ワン!」(そこの二人、待った―!!)
あたしは全速力で二人のもとに駆け寄り、サトルの膝に飛びついて遊んでくれとアピールした。
「リリィちゃん、遊んでほしいみたい」
「そうだね。じゃあ・・・あ、リリィ、お友達が来たよ」
振り向くと、三角耳で胴長短足の犬がやってきた。コーギーっていう犬種らしい。コーギーは言った。
「ねえねえ、あたしはレミ。一緒に遊ぼうよ!」
「イヤよ。今あたしはサトルに遊んでほしいんだから」
あたしはプイッとそっぽを向いて言った。
「えー、でも・・・向こうに他の犬達もいるよ?きっと楽しいよ?」
「うるっさいなー!あっち行ってよ!あたしはあんたみたいなお尻の大きい犬がキライなの!」
「ウー・・・ガルルルル・・・」
あたしは歯をむき出して、思いっきり威嚇してやった。
「こらっ、リリィ!」
あたしはサトルにヒョイッと抱きかかえられた。コーギーはあたしのことが怖くなったのか、すごすごと他の犬達の元へ去っていった。
「リリィちゃん、怒るとすごいのね」
「そうなんだよ、かわいそうに・・・リリィはコーギーが全部嫌いなのかな?近所にもコーギーがいて、リリィはすごく威嚇するんだ。オレはコーギー大好きなんだけど・・・」
ええ、そうですとも!あの大きくてプリプリしたお尻でサトルを誘惑する犬は大キライ!!
あたしはサトルの腕の中で、コーギーのお尻を睨みつけた。
「やれやれ・・・今日はお友達と遊ぶのはやめた方がいいな。じゃあ、小宮さん、遊んでやってくれる?」
ええっ!?
イヤだよ!あたしはサトルとだけ遊ぶんだから!ショウコは仲間外れにするんだから!
するとショウコは言った。
「でも、大丈夫?今日はリリィちゃん、ご機嫌斜めみたいだけど」
「小宮さんなら大丈夫だと思うよ。犬に慣れてるし」
「そう?じゃあ・・・ちょっと撫でてみてもいい?」
あたしは地面に降ろされた。そして、ショウコの手が近づいてきた。
「ウー・・・」(NO!あたしに触らないで!)
「こら、リリィ!」
「あら、やっぱりダメみたい・・・じゃあ、中野君が遊んであげて。私は近くで見てるから」
「え?でも・・・」
「私のことはいいから、ね?」
そうだよそうだよ!
あたしはサトルのズボンの裾を噛んでぐいぐい引っ張った。
「リリィ!・・・しょうがないなあ。じゃあ、ごめん小宮さん」
よっしゃー!サトルひとりじめ、大成功!
「あーあ・・・本当性格悪いな、あいつ」(byパグぞう)
★★以下、パグぞう視点★★
そうだった、詳子は昔からこんな子だったっけ。
昔、家族で遊びに出かける予定があって、でも行くその日になってお父さんが急に仕事に行かなきゃならなくなった。でも詳子は笑って言ったんだ。
「お父さん、お仕事大変だね。私のことはいいから、お仕事頑張ってね」
そしてその後オイラと二人っきりになった時、オイラを撫でながら詳子は黙って涙をぽろぽろこぼしてた。
自分のことより人のこと。そういう優しい所が全然変わってなくてよかった・・・って、今はよくないぞ!
リリィの奴、これじゃ二人の仲が全然進展しないじゃないか!サトルとあいつが遊んでて、詳子は一人ぼっちにされて寂しくサトルを見つめてる・・・って、微笑ましく笑ってるし!
詳子の人の良すぎる所も進展しない原因だな・・・
◇ ◇ ◇
「今日は本当にごめん。リリィと遊んでもらおうと思ってたのに」
「ううん、いいの。リリィちゃんカワイかったし、中野君があんなに楽しそうなの初めて見れたし」
「今度埋め合わせするから、絶対に」
「ホント?じゃあ、楽しみにしてる」
帰る道すがら、サトルと詳子はやっと落ち着いて話ができているみたいだ。というのも、邪魔者リリィは遊び疲れてキャリーバッグの中でグーグー寝ているからだ。
今、二人は次のデートの約束をしてるみたいだが、あいつには教えないようにしよう。また邪魔をされたらたまらないからな。
オイラはキャリーバッグの中を覗き込んだ。のんきなもんだな、いったいどんな夢見てんだか・・・
(↓その頃のリリィの夢)
サトルー!こっちこっち!ボール投げて!こっちだよー!
わーいわーい!サトル、だーい好き♡




