17.パグぞう、画策する
その日の夜はおだやかに過ぎていった。でも、あたしはさっき神様の言ったことが頭の中でぐるぐる回ってなかなか寝付けなかった。
サトルとショウコは両想い・・・前にパグぞうさんが同じことを言った時はウソだと思ったけど、神様が言うんなら本当だって認めなきゃならないじゃん。
もしも・・・もしもパグぞうさんがあの二人をくっつけちゃったら、あたしはどうなるんだろう?あたしだけ、のけ者にされちゃうのかな?だったらイヤだ。
サトルと一緒にいる生活を壊されたくない。でも、二人をくっつけられなかったらパグぞうさんはあのおそろしい地獄へ送り返されちゃう・・・。一体どうしたらいいんだろう?それに、そもそもなんであたしが協力しなきゃならないんだろう・・・?
考え事をしていたら、いつの間にか眠っていたらしい。気がつけば朝になっていた。サトルはいつものように会社へ出かけていった。あたしはソファーの裏をのぞきこんだけど、パグぞうさんはまたいなかった。今度はどこに行ったんだろう?
★★以下、パグぞう視点★★
しかし、参った・・・。
オイラは会社へ行くサトルの後をつけながら、考えを巡らせていた。
サトルと詳子をくっつけるなんてただでさえ策が思いつかないのに、さらにあのリリィを説得して一緒にやれだなんて無理難題すぎるだろ。
なんであいつを協力させなければならないのか・・・なんとなくわかる気もするが、何て言って説得すればいいんだ?
昨日の様子だと、今日も顔を合わせたらケンカになりそうだったからこっそり家を出たものの、説得する方法を思いつかないとなかなか帰れそうもないな。
・・・あいつに礼言うタイミングも逃しちまった。
考え事をしていたら、いつの間にかオイラはサトルの会社に着いていた。リリィのやつ、オイラがサトルの会社に来てると知ったら、怒るだろうな。働いてるサトルに会わせてやるっていう約束破ったもんな・・・。
しかし、サトルと詳子をくっつけるにしたって、同じ部署ならまだやりやすいと思うが別の部署だもんな。
前にオイラがこの会社に下見に通ってた時も、二人が会ってるのを見たのは自販機のある休憩所で一回だけだったし。でもまあ、オイラはカンが鋭いから、この二人が互いに好き合ってるっての、すぐにわかったぜ。
サトルの部署は受発注部、詳子の部署は営業部。フロアこそ同じ階だが、仕事での接点はあるのだろうか?
オイラは営業部へ向かった。ちょうど詳子が大勢の人達と一緒にこっちへ来るのが見えた。どうやらこれから会議があるらしい。
詳子も仕事がんばってるな。営業って仕事はストレスが溜まるだろうに・・・。小さい頃は泣き虫で人見知りだったとは思えないくらいバリバリ働いてる。
オイラはサトルの部署に戻った。サトルはパソコンでメールの返信をしている。メールといえば、この二人はプライベートで互いにメールや電話で連絡を取り合ってるんだろうか?ちょっとサトルのスマホを見させてもらおう。
オイラはイスにかけてある上着のポケットからスマホを取り出し、画面を見た。
・・・って、なんじゃこりゃ!?こいつのスマホの待ちうけ、リリィかよ!?写真フォルダの中身もリリィの写真だらけで、こいつやっぱり親バカだな。こんなの、詳子や他の女子が見たら引くぜ?
スマホの中をじっくり調べたが、詳子とのメールの記録も電話の履歴もないどころか連絡先すら登録されていない。
あいつ、詳子のこと好きなくせに連絡先すら知らないのかよ!待てよ、社内メールはどうだ?仕事関連で詳子からメールが来てるのでは?
オイラはサトルが席を外してる間にパソコンをこっそりチェックした。どうやらちょくちょくやり取りをしているようだ。ようし、サトルがいないうちに、この社内メールで詳子にデートの誘いを送ってみよう。・・・って、会社のメールを私用に使うのはやっぱりダメか?
だが、オイラはたまたまこんなメールを見つけてしまった。件名は『業務連絡』なのに、中を開くと・・・
『中野さん、営業部の女子達と合コンしません?』
―私用に使ってるじゃねーか!!
で?サトルの返信は?・・・ない。無視したのか?でも待てよ?営業部って詳子の部署じゃん!これはチャンスじゃねえか!
サトルの方を見やると、男の社員と何か話をしている。オイラはそっちの方へ飛んでいって会話を聞いた。
サトル:「・・・ってか、おまえなあ、社内メールを合コンの誘いに使うなよ。上にバレたらどうすんだ」
男の社員:「だって中野さん、スマホにメール送っても誘いに乗ってくれないんですもん」
サトル:「どっちにしたって、オレは行かないよ」
男の社員:「・・・もしかして中野さん、男が好きなんですか?」
サトル:「なんでそうなる!?」
男の社員:「そうじゃないなら行きましょうよー。営業部の女の子って結構カワイイ子多いじゃないですか!」
サトル:「第一、日曜日は予定があるんだよ」
男の社員:「え~」
サトルに予定なんかあったか?そういやその日、カレンダーに丸印がついてたな。たしか丸印の下に書いてあったのは・・・
『トリミング』
―予定って犬のかよ!それで合コン蹴るんかい!!ああ、もうダメだこいつ・・・よおし、こうなったら!
オイラはサトルがまた別の用件で席を外してるうちに、社内メールをこっそり開き、例のメールに返信した。
『さっきの合コンの話だけど、やっぱり参加する。よろしく』
これでよし、と。すると、すぐに返信が来た。
『ホントっすか!よかったー!じゃあ日曜日の夜六時、駅前のいつもの居酒屋に来てくださいね!』
よしよし、夜六時だな。さあ、確認したからこのメールは削除削除っと!あ、さっき送信したメールも履歴から消さないと。
そうこうしてるうちに昼休みのチャイムが鳴った。そういえば詳子は今頃どうしてるかな。
オイラは食堂に行った。詳子は他の女子社員達とお弁当を食べていた。女子が揃うと昼飯もにぎやかだな。
「あ、合コンの件でメール来てる」
女子のうちの一人が言った。
「え?また合コンするんですか?」
詳子が聞いた。
「またとは余計よ。それに今回は詳子も行くんだからね!あんたも何年も彼氏いないんでしょ?たまには出会いの場に出なさいな。今回はシステム部と受発注部の男子が来るってさ。・・・ん?受発注部の中野さんって誰だっけ?」
合コンに行く女子が言った。するとまた別の女子がその質問に答えた。
「中野さんって確か、メガネかけてて背の高い人でしょ。あれ?確か詳子の同期の人じゃなかった?」
「あ、はい、そうです」
詳子は少しうつむいて答えた。すると合コンに行く女子が言った。
「んーまあ、いまいち冴えないメンツだけど、こっから友達を紹介してもらうって感じで広げればいいし。で、どうするの詳子。行かないの?」
「・・・やっぱり、行きます」
「おー!そうこなくっちゃ!あんた仕事ばっかりしてるから、あたし達みたいに男日照りになったらどうしようって先輩として心配してるんだからね!」
・・・やった!合コンに詳子も来るってよ!やっぱりサトルが来るからだな。サトルの名前聞いた途端、顔つきが変わったもんな。
「でも、なんで急に乗り気になったの?あ、まさか中野さんのこと好きなんじゃ・・・」
「ち、違いますよ!最近同期の人と集まってないから、たまにはしゃべりたいなって」
詳子もウソが下手だな。そういう所は昔と変わってない。
とにかく!これで準備は整った。後は当日までサトルが合コンのことを知らないままでいてくれるか、だ。合コンのことを知ったら、また行かないって言い出しかねないし。
(詳子が行くって知ったら行く気になるかもだが)
オイラは当日までサトルの動きを監視することにした。




