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16.リリィ、キューピッドになる?

神様はまぶしい光と共に消えてしまった。


「消えちゃった・・・」


 そしてリビングには、あたしとパグぞうさんだけになった。パグぞうさんはまだ気絶している。家の中はいつもと変わらない。さっき神様と地獄に行ってきたのが夢のようだ。と、その時・・・


!!クンクン・・・!


サトルの匂いがする!もう帰ってくる時間になってたんだ!


 あたしは急いで玄関へ向かった。足音も聞こえてくる。


ガチャガチャ・・・カチッ。


 カギが開いた。そして・・・


「ただい・・・」


それっ!ジャーンプッ!!


「うわあっ!」


 あたしはドアが開くなりサトルに飛びついた。そしてサトルの顔をペロペロなめた。


「あーびっくりした。どうした?リリィ。今日はやけに熱烈な出迎えだな」


だってだって!地獄へ行ってきて、とっても怖かったんだもん!!あー、サトルに抱っこされてるととっても安心する・・・


「さあさあ、ごはんにしよう。今用意するから・・・」


ドカッ!


「うわあっ!何だ!?」


あっ!しまった!パグぞうさんが!


 あたしはパグぞうさんをリビングの真ん中に放置していたのを忘れていた。台所へ向かうサトルの足が、そのパグぞうさんに当たってパグぞうさんは宙を飛び、リビングの隅っこに落ちた。


「え?何が当たった?」


 サトルはキョロキョロあたりを見回している。


やばい!ごまかさなきゃ!


「クゥーン、クゥーン」


 あたしはサトルのほっぺをペロペロなめて気を引こうとした。


「あははっ、くすぐったいよ。早くごはんにしてほしいのか?ちょっと待ってな」


 サトルはあたしをリビングの床に降ろして台所へ行った。


よかった・・・なんとかごまかせたみたいだ。あたしはチラッとパグぞうさんが落ちたあたりを見たけど、パグぞうさんは見当たらなかった。後でサトルがお風呂に入っている時に無事か確かめよう。




◇ ◇ ◇




 ごはんの後、サトルがお風呂へ行ったのであたしはリビングの隅っこや、ソファーの裏側をのぞきこんだ。けどパグぞうさんはいなかった。


あれ?いない?・・・なんで?


「よーくーもーやってくれたな・・・」


ビクッ!


 あたしがおそるおそる振り返ると・・・後ろにパグぞうさんがいた。


「パグぞうさん!」


「よくもオイラを蹴ってくれたな!」


パグぞうさんはプンプン怒って言った。


「違う違うのー!あれはサトルの足が偶然当たったの!」


「そうだったとしても、オイラを床の上に放っておくなよ!こっちは気絶してたってのに!」


「ごめん!サトルが帰ってきたから、パグぞうさんのことすっかり忘れちゃってたの」


「何ぃー!?この薄情者!」


「これこれ、二人ともケンカはやめなさい」


ビクッ!この声って・・・!


「かっ・・・神様!?」


 パグぞうさんはびっくりしすぎて目が飛び出している。


 あたし達の前に、まぶしい光と共に、神様が再び現れた。


「か、神様・・・なぜここに!?」


「おやパグぞう。リリィから聞いておらぬか?おぬしが目覚めたらワシがまた会いに来ることを」


「あ、ごめんパグぞうさん。言うの忘れてた」


「おまえなあ・・・大事なことちゃんと言えよ」


「まあまあ、そう怒りなさんな。リリィはおぬしの命の恩犬じゃぞ」


「えっ?そうなんですか?」


「そうじゃ。ワシと共に地獄へ行き、おぬしを助けたのじゃ」


「あ、そうだったんですか・・・神様、ありがとうございます」


お、さすがにパグぞうさんも神様にはヘコヘコしてる。


「お礼を言うのはまだ早いぞ、パグぞうよ。おぬしを助けたのには理由がある。おぬしに課題を与える為じゃ」


「か、課題?」


「フム。その課題を達成できれば、おぬしをもう一度天使に任命しよう。しかし、もし達成できなければ、エンマ大王の所へ戻ってもらう」


「「ええっ!?」」


 あたしはびっくりしてパグぞうさんと同時に叫んでしまった。


「まあそんなに難しい課題ではあるまい。では発表するぞ。おぬしの課題は・・・サトルと詳子の縁を取り持つことじゃ」


「はい?」


パグぞうさんはポカーンとした顔で聞き返した。


「サトルと詳子が互いに想い合っておるのは、おぬしも知っておるじゃろう」


「は、はい」


「ただ二人とも奥手すぎて、恋人同士になれておらぬ」


「はい」


「それをなんとかして恋人同士にするのじゃ。恋のキューピッドとして。まさに天使にふさわしい課題じゃな」


「で、でもどうやって・・・」


「それを考えるのもおぬしの課題じゃよ。そうそう、大事なことを言ってなかったが、リリィと協力して取り組むのじゃぞ」


「「え・・・ええっ!?」」


あたし達はまた同時に叫んだ。


あ、あたしもキューピッドってのになるの!?


「イヤだ!あたし、やらない!サトルとショウコがくっつくなんて許せない!サトルはあたしのものだもん!」


「こう言っているリリィを説得するのも、おぬしの課題じゃぞ」


「そんな・・・絶対無理に決まってるじゃないですか!」


「やる前から諦めてはいかんぞ。おぬしにはワシから力を与えておるから、悪魔だった頃と同じように魔法を使える。時間制限もない。ただし、時々進行状況をチェックさせてもらうぞ。

ムムッ!ご主人が戻ってくるようじゃ。では、さらばじゃ。健闘を祈る」


 神様は言うだけ言って、またまぶしい光と共に消えてしまった。


「消えちゃった・・・」


あたしが言うと、パグぞうさんはへなへなと座り込んで言った。


「神様も無茶言うなよ・・・」


「さっきも言ったけど、あたしは協力しないからね!」


 あたしはパグぞうさんをにらみつけて言った。・・・って、あれ?


「パグぞうさん!ツ、ツノがなくなってるじゃん!」


「ああ?」


「パグぞうさんの見た目がところどころ変わってるんだよ!しっぽとか」


 先のとんがったツノも、コウモリみたいなとんがった羽も、細長いしっぽもない。その代わりに鳥のような羽が生えて、しっぽは普通のパグみたいにくるくると丸まっている。


 と、その時。


「あー、いいお湯だった」


「!サトルが帰って来た!」


 あたしは慌てて自分のクッションに戻り、パグぞうさんはソファーの裏に隠れた。



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