裁きの鉄槌 ~女公爵、鎮圧を始めさせる~
果香(10月)、18日午後7時23分
ペテログラード、ゲオルギ宮殿、第三執務室
あぁ...今日も夕食美味しかったわ...
え?夕食?ライ麦パンにボルシチよ。
...執務室で。
...うん、まぁ仕事も重要だからね、仕方無いわよね。
「お嬢様、精査が終わりました」
「ありがとう」
「ノスエウロパ同盟の戦力は10万人に到達すると情報部からの連絡です」
「...全戦力の二倍以上ね...足りないわね。やっぱり声明文を発表して、他国を味方、又は中立に持ち込まないと...」
「それしか無いようです」
「...多分ゲルマン帝国は味方になってくれるでしょ?...でも肝心の周辺国が怪しいわね...」
「ポルシュカ王国、ですか...」
「ええ。
...あの国、ゲルマン帝国とオーレリア帝国によって分割されたでしょ?
もしゲルマン帝国が味方に付くなら...」
「しかしゲルマン帝国が味方に付くのであるならばオーレリア帝国もこちらに付きそうですが」
「...ポルシュカ王国に対しては防衛戦を行って、主戦力はゲルマン帝国とオーレリア帝国に任せた方が良いかもしれないわね」
「そうですね...」
「...防衛には近場の第三、第四軍団を国境に張り付けておいて。
残りの第一、第二、第五軍団をノスエウロパ同盟の方に向かわせてちょうだい。
あ、焦土戦術は最後の手段にして頂戴。
...国土が荒廃するのは見てられないわ」
「分かりました」
「正直ポルシュカ側の守備範囲が大きいから怖いけど...
貴族鎮圧が終わったら首都に近衛軍団を戻らせて、防衛線を張ってもらうしか無いわね」
「はい...」
...というか軍人少なすぎなのよ...せめてもうちょっと居れば...
「...もうちょっと軍人欲しい!」
「幾つ、ですか?」
この領土の大きさだから...
「...最低全体で10万人は必要よ」
「6万人の増強、ですか...」
「...まぁ正直のところ3、40万人居たら嬉しいわよね...」
この大きさだし...
「...お金も有りませんね...それにそこまで軍人にしたら基礎が崩壊してしまいます」
「だから、最低10万人って言ったのよ。
...まぁ、でも。私が今から作るものがあったら100万人でこのエウロパを全て占領出来るわね」
「すべっ...?!」
「勿論時間掛かるけどね...
開発と長期的生産態勢を完成させるまで5年、ううん。10年は掛かるわね。
そして、その武器達の使い方を教えて使えるようになるまで、また5年、といったところかしら?」
「つまりお嬢様が30歳になるまで持てば...」
「まぁ...そうなるかしら?」
「...恐怖、ですね」
「まぁその恐怖を今頃感じているんじゃないかしら?貴族達は」
「え?...あっ...」
「...さ、始まりよ」
...私達の『裁きの鉄槌』を受けなさい。
・・・・・・
時間を遡り、上の話の一時間前
ヴィボルグ、ベラール城(アレクセイ侯爵)、執務室
静かなベラール城の執務室に二人の男が居た...
「...まだでしょうか」
「ああ。まだ反乱の連絡が来ていない」
「...まさか失敗したとか」
首を振った。
「いや、それはない。此方側は最高レベルの工作員を送り込んだんだ。平和ボケしている宮廷共に分かる筈がない」
「ああ...マーリン、でしたよね?」
「ああ。しかも一番緩そうなところに送り込んだからな。問題ない」
「あの公爵娘ですね。...本当に不思議ですよ。あんな小娘が公爵なんて...」
「ああ。まぁ、だから大丈夫さ」
「はい」
・・・・・・
一時間後...
「...何も連絡ないな」
「やはり気付かれたのでは...」
「...うーむ」
バタン!
「失礼します!陛下から勅使が来られました!」
「何...?!」
「今すぐ開城されたし、と...どうしましょう」
「...気付かれたか」
「はい、確実に...」
「...仕方無い。そのまま丁寧に返せ。何があっても不手際は起こさないように」
「...はっ。仰せの通りに」
パタン...
「...今すぐ要塞化を進めるように命令を出せ」
「分かりました」
パタン...
「...此れからが正念場だな。にしても何処から漏れたのだろうか」
マーリンか?
...いや、あちら側が最高のスパイだ、と言って送ってきたんだ。それはない筈だ。
...ではやはり公爵娘か?
最近要職に付いた、という情報が上がってたがそれを軽視し過ぎたか。
...まぁどちらにせよ他のやつらにも伝えねば。
「おい、誰かいr」
...ューン!
「?!」
いかん!!
私は落下音が聞こえた為頭を手で覆い、蹲った。
ズガァーン!
「っ...現状報告と損害報告!」
バタン!
「報告します!敵は不明。しかし今までの流れで言いますとやはり帝国軍かと...」
「帝国軍は魔法を使えない筈だぞ?!
それに敵が見当たらないってどんな場所から飛ばしてきてるんだ!」
「と、取り敢えず損害は城門で」
ヒューン...
「っ!退避!!」
ズガァーン!
「...今度は!今度は何処だ!」
「...城壁です!城壁が破られました!」
「何ぃ?!魔法弾をも弾く外壁をか?!
...いかん!城が丸裸になってしまう!」
バタン!
「報告します!帝国軍第一軍団を5000ミル前方に発見したとの事です!」
遂に終わったか...
「...我々はもう無理だ。他の侯爵と伯爵に伝えろ。『帝国軍強し。至急要塞化を進められたし、と』」
「...分かりました。では...」
...ヒューン
...今回は音が近いな。死ぬ、かな。
...次の瞬間、世界から音が消えた。
・・・・・・
同時刻
ヴィボルグ、ベラール城5000ミル前方、帝国軍第一軍団
「敵城中央命中!」
「よし...122mm砲終了!
近衛軍団先鋒で帝国軍城内へ侵入!
もし私兵が近衛軍団到着前に出て来たら76mm砲で砲撃!
...突撃せよ!」
「...フラー!!」
...さ、行きましょうか。




