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【完結】悪女と呼ばれた令嬢、望まぬ婚約寸前で剣聖皇子に奪い去られる【10月下旬に三章更新予定】  作者: しのギドラ
1章

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4話 婚約発表へのカウントダウン

 王宮の輝かしい大広間は、数千もの魔石の光に照らされ、まるで真昼のような明るさに満ちていた。

 豪華な刺繍が施された垂れ幕、黄金の燭台、そして最高級のワインの香りが漂う。


 しかし、その華やかさとは裏腹に、会場を支配しているのは重い緊張感だった。


(今までにないくらい、ピリピリとした空気ね……)


 この日の主賓は、隣接する強国「龍帝国ガイアリス」からの使節団。


 龍帝国ガイアリス――その名の通り、王家が代々強大な『龍』と契約し、その人知を超えた武力を行使する大陸最強の軍事国家である。


 友好国という名目ではあるものの、龍の一息で街が焼き払われるほどの圧倒的な戦力差を前に、貴族たちは、まるで小動物のように萎縮していた。


(あそこにいるのがきっと……主賓のオーウェン殿下ね)


 来賓席の中央に座るのは、端正な顔立ちをした龍帝国ガイアリスの第一皇子、オーウェン。

 彼は最強の一角とされる『青龍』と契約したと言われており、その髪は深海のように澄んだ青色をしている。


 彼がただそこに座っているだけで、周囲の空気が重く沈み、肌を刺すような圧が伝わってくるようだった。


「エルレイン、何をしている。挨拶に伺うぞ」


 王太子の冷ややかな声に促され、私は凍りついた心に無理やり笑顔の仮面を貼り付けた。

 あの日以来、私とセドリックは何も話していない。

 セドリックはというと、いつもの不遜な態度は崩さないようにしているが、「何か」を探すようにせわしなく辺りを見回している。


(ジークを警戒しているのかしら……でも、この晩餐会に彼は招待されていないはず……)


 今日の私は、ベルシュタイン公爵家が誇る至高のドレスを身にまとい、髪を美しく結い上げている。

 その姿は公爵令嬢に相応しい気高さに満ちていた。


(ジーク……。あなたはどうするつもりなの……)


 不安を押し殺し、私は国王と、オーウェン皇子の前で優雅に膝を折った。


「ベルシュタイン公爵家が長女、エルレインにございます。龍帝国の輝ける皇子殿下にお目通り叶い、身に余る光栄に存じます」


 オーウェン皇子が、ゆっくりと視線を上げた。

 その双眸は、すべてを見透かすような青。

 彼はふっと口元を緩め、驚くほど柔和な微笑みを浮かべた。


「お初にお目にかかる、ベルシュタイン公爵令嬢。君の噂は、我が国まで届いている。なるほど、その瞳の奥に宿る力の密度……実に素晴らしい」


「……身に余るお言葉です」


 皇子の声は穏やかだったが、その言葉に含まれる重みは尋常ではなかった。


「このあと、国王陛下より良き知らせがあると聞いています。隣国の輝かしい瞬間に立ち会わせて頂けること、光栄に思います」


 皇子の言葉に、隣に立つ我が国の国王が満足げに頷く。

 私の心臓が、嫌な音を立てて跳ねた。

 「良き知らせ」。

 それは、私が望まぬ男の所有物になるという宣告に他ならない。


「……第一皇子殿下より、そのような過分なお言葉を頂けて、私は……嬉しい限りです……」


 喉まで出かかった言葉を飲み込み、私は必死に笑い続けた。

 王太子は勝ち誇ったような笑みを浮かべ、私の腰に馴れ馴れしく手を回す。


(あと少し……あと少しで、私の人生は、終わってしまう。王命によって、自由も、心も、すべてを奪われる)


 国王が立ち上がり、黄金の杯を高く掲げた。

 音楽が止まり、会場に静寂が広がる。

 婚約発表のカウントダウンが始まった。


「列席の諸君。この良き日に、我が王家とベルシュタイン公爵家の永遠の絆を祝う、喜ばしい発表がある――」


 国王の厳かな声が響き渡る。

 私は絶望の淵で、目の前の現実から逃げるように強く瞳を閉じた。


(ジーク……!)


 来ないでほしい。

 でも、本当は何もかも捨てて、ジークと共にどこかに逃げてしまいたい。

 目をぎゅっと閉じながら、私はただ国王の言葉を待つしかなかった。


 その瞬間。

 ホールの扉の向こうから、空気ごと揺るがすような音が響き、会場の光が一斉に明滅した。

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※カクヨムにも掲載
【代表作】→「悪役令嬢は全員生存エンドを目指す」
◆累計ページビュー63,000pv超え感謝◆

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あらすじ→「全員生き残るか、一人残らず死ぬか」その二択しかない極限の乙女ゲーム。
前世の記憶を取り戻したルナリアは、自分が"全滅エンド"を招く悪役令嬢だと知る。
導き出した答えは、誰とも関わらず、孤独に生きること。
そう誓った矢先に出会ってしまったのは、攻略対象——公爵令息のグレン。
父の虐待を見抜き、どんなに突き放しても離れない彼に、距離を取ろうとするほど執着されていく。
やがて暴かれる、最初から大切な人を"殺す力"を宿していたという残酷な真実。
それでも彼は、皆の前で誓った。
「生涯をかけて君を幸せにする」と。
虐げられた令嬢×公爵令息。
作品ページはこちら→「悪役令嬢は全員生存エンドを目指す」
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