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【完結】悪女と呼ばれた令嬢、望まぬ婚約寸前で剣聖皇子に奪い去られる【10月下旬に三章更新予定】  作者: しのギドラ
2章

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28話 第二皇子への処分、父としての顔

「さて。次はジーク……いや、第二皇子ルーク」


 矛先が自分に向いたことを察し、ジークは露骨に嫌そうな顔をして、私の方に視線を向ける。


「……父上、怒ってるよな」


「それは分からないけれど……とにかく、ちゃんと聞きましょう」


 皇帝の眼光は、先ほどよりも厳しさを増している。


「十年の放浪の果て、勝手に帰還して、白龍を行使し、龍帝国の平穏をおびやかした罪は重い。……これほどの不祥事、タダで済むと思うな」


「わかってる。何でも言うこと聞くから、手短に頼むよ、父上」


「そなたには、今後正式に第二皇子として公務にあたることを命ずる。もはや剣聖だの、護衛騎士だのという雲隠れは一切許さん。皇族の一員として、オーウェンを支え、龍帝国に尽力せよ」


「…………はぁ、やっぱりそうなるよね。嫌だなぁ……。毎日机に座って書類仕事とか? 俺にできると思う?」


「ジーク……不謹慎よ」


 私が小声で宥めるが、ジークは考え込むように天井を仰いだ。

 だが、その瞳に宿る光は、単なる逃避ではなく、覚悟した人の輝きだった。


「まあ、いいさ。十年も勝手して、兄上にも父上にも、エルにも迷惑かけっぱなしだったしね。ここらで年貢の納め時ってやつかな。……ただ、条件がひとつだけある」


「ほう。この状況で皇帝に条件を出すか。申してみよ」


 ジークは私の隣まで歩み寄ると、私の手を誰にも恥じることなく、力強く握りしめた。


「エルとの結婚を許してほしい」


 私は、弾かれたようにジークの顔を見る。

 彼の顔に浮かんでいたのは、皇帝の威光にすら退く気のない、決意の込められた真剣な表情だ。


「彼女は、白龍の虚無に呑まれかけた俺を、ただ一人で引き戻してくれた女性だ。彼女がいないと、俺はまたどこかで壊れてしまうかもしれない。……エルと結婚させてくれるなら、公務も、皇子としての義務も、できる限り対応するよ」


 皇帝の視線が、見定めるように私に注がれる。

 私は顔を赤くしながらも、逃げることなくその威圧感を受け止めた。

 皇帝は僅かに口角を上げると、短く息を吐いた。


「……構わぬ。暴走する龍の主を御せる者がそばにいるのは、龍帝国にとっても好都合だ」


「交渉成立だね。……あ、あと、これだけは言っておくけど。王命でも……たとえ父上直々のお願いであっても、俺は白龍の力は使わないからな」


「問題ない。むしろその力を気軽に行使される方が、こちらとしては問題がある。……だが、持てる力とは、いずれ向き合う日が来るだろう。その時は、逃げずに白龍と対話するといい」


「まあな……。本当に必要だと思ったら、白龍に頼ることも考えとくよ」


 皇帝がゆっくりと立ち上がる。

 机の前に歩み出て、静かに言葉を発する。


「二人とも、近くに寄れ」


 うながされるまま、困惑気味に歩み寄る兄弟。

 すると、皇帝は大きく両腕を広げ、オーウェン殿下とジークの二人を力一杯抱きしめた。


「っ……!? ちょっと父上……! エルの前で、これは流石に恥ずかしすぎるんだけど!」


 ジークが顔を真っ赤にしてわめくが、皇帝は放さない。


「……よくぞ、無事に戻った。息子たちを失う悪夢を見ずに済んだ……。感謝する、神龍よ」


「……大変な、ご心配をおかけしました……父上」


 オーウェン殿下の震える声。

 ジークも文句を言いながら、最後には諦めたように父の背中に手を回した。


 その光景を、私は微笑みを浮かべて見つめていた。


 十年の家出、龍の呪縛、兄弟の確執。

 すべてがこの抱擁の中に溶けていく。


 龍帝国の夜明けは、まだ始まったばかりだ。

 けれど、この家族が再び手を取り合った今、どんな困難が訪れようとも、彼らはもう二度と虚無に呑まれることはないだろう。

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※カクヨムにも掲載
【代表作】→「悪役令嬢は全員生存エンドを目指す」
◆累計ページビュー63,000pv超え感謝◆

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あらすじ→「全員生き残るか、一人残らず死ぬか」その二択しかない極限の乙女ゲーム。
前世の記憶を取り戻したルナリアは、自分が"全滅エンド"を招く悪役令嬢だと知る。
導き出した答えは、誰とも関わらず、孤独に生きること。
そう誓った矢先に出会ってしまったのは、攻略対象——公爵令息のグレン。
父の虐待を見抜き、どんなに突き放しても離れない彼に、距離を取ろうとするほど執着されていく。
やがて暴かれる、最初から大切な人を"殺す力"を宿していたという残酷な真実。
それでも彼は、皆の前で誓った。
「生涯をかけて君を幸せにする」と。
虐げられた令嬢×公爵令息。
作品ページはこちら→「悪役令嬢は全員生存エンドを目指す」
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